カメラや写真に興味を持つ人の、一つの大きな到達点は「一眼レフ」です。
一眼レフは何気に全世界で毎年1000万台程度出荷されています。あなたの周りにも持っている人はたくさんいるでしょう。
さて今回は、「ちっちゃいデジカメやスマホには飽きた、これからは一眼レフの時代だ!」という一眼レフワールドに足を踏み入れようとしている皆さんに向けての、一眼レフ選びのアドバイスです。
一眼レフを買えばそれだけでいい写真が撮れるわけではありませんが、一眼レフじゃないと撮れない写真があるのも、また事実です。
参考:初心者に贈る「一眼レフ=いい写真が撮れる」わけではない話
一眼レフのカメラ選びは、最初に間違えると面白さがわからないままフェードアウトする可能性があります。
買ったはいいけど押入れでほこりをかぶったままという話も非常~によく聞く話です。
買う前にこのページを見つけたあなたはラッキーです。
この記事でぜひ、一眼レフ選びの最重要ポイントを押さえておいてください。
photo:gregt99
目次
一眼レフカメラにおける、最も重要な1点
さてイキナリですが、一眼レフカメラ選びにおける最重要ポイントをお伝えします。
それは「センサーサイズ」です。
一眼レフのセンサーサイズ
一眼レフカメラのセンサーサイズは、主に2つです。
フルサイズ
36mm×24mm。いわゆる「35mmフィルム」のサイズですね。
フィルムの時代の最も一般的なサイズです。
APS-Cサイズ
細かい違いはありますが、だいたい24mm×16mmくらいのサイズです。
フルサイズのだいたい半分くらいの大きさですね。
ちなみに「APS」とは、「アドバンスト・フォト・システム」の略で、もともとは35mmフィルムと同じく「フィルムの規格」だったものです。
そのAPSの中でも「Cサイズ」と呼ばれるものにサイズが近いので、デジタルの時代になっても、そのまんま「APS-Cサイズ」と呼ばれているのです。
要は全て、フィルム時代からの名称を引き継いでいるのですね。
センサーサイズの違いがもたらすもの
フィルムの「APS」は、1996年に販売が開始されました。
長い歴史のある35mmに比べると比較的新しい規格で、「富士フイルム」「コダック」「キヤノン」「ミノルタ」「ニコン」といった、そうそうたるメジャーメーカーがこぞって参加し、作り上げた規格です。
にも関わらず鳴かず飛ばずで、その後のデジカメの登場もあり、あれよという間に市場から消え去りました。
後発組の優位性として、数々の利便性を盛り込んだにも関わらず、あまり普及しなかった理由のひとつに、35mmに比べて画質が劣る、ということがあります。
とくに、「画質」が命の一眼レフにおいては、APS規格はあまり採用されませんでしたし、また、売れませんでした。
なぜならフィルムの面積が小さいということは、それだけ記録される情報量も少ないということを意味します。
一眼レフの醍醐味である、高画質な美味しいレンズを使う意味が、文字通り半減してしまうのです。(APS-Cの面積はフルサイズの約半分)
一眼レフを買う理由
一眼レフは、画質が良くてナンボです。皆さんも画質のために一眼レフを買おうとしているのではありませんか?
まさか「重たいカメラに変えてカラダを鍛えよう」というトレーニング目的ではないですよね?
もちろん「なんかカッコよさそうだから」とか「お金が有り余って仕方がないから」など、いろいろな理由があって然るべきですが、メインはやっぱり「画質」なハズです。
そうなると当然第一の、そして唯一の、つまりは最終的なアドバイスは、「デカいサイズを買え」です。
とにかく画質が理由で一眼レフを買おうとしているのに、小さいサイズを選ぼうとしているのは、叙々苑に行こうとして吉野家に入るのと同じことです。
あるいは、伊勢丹で一式揃えようとして、またしてもユニクロに入るの愚です。
要するに、「それじゃあ~今までとあんまり変わりませんよ?」ということです。
変化を求めて一眼レフワールドに足を踏み入れようとしているのに、小さいサイズでは大した変化が得られないですよ、ということです。
小さいことがオトクなのは「雀のお宿」のつづらくらいなもんです。
一眼レフの画質
じゃあいったい、デカいサイズの画質と小さいサイズの画質はどのくらい違うんだyoという話になりますが、ざっくり言うと約半分です。
なぜなら、センサーの面積が約半分だからです。記録される情報が約半分なわけです。
しかし、そんな理屈上の画質ではなく、見た目の画質というものがありますね。
パッと見て「おお~きれい!」とか「おお~リアル!」とか。何か見た目でちゃんとわかる違いがないと、買う意味がないってもんです。
具体的にはそれは「ボケ」です。
センサーサイズが大きいほうが画素ピッチが大きくて、一度に取り込める光の量が多いから云々…等、センサーサイズと画質に関するいろいろな理屈がありますが、それらはいったん忘れましょう。
画素ピッチの違いと実画面の因果関係を言い当てられる人なんてほとんどいませんし、もはや小さいサイズだから写りが悪いという時代でもありません。スマホですらあれだけ写るんですから。
画質の本質はそういうことじゃあ、ありません。
2種類の画質
え?画質がいいからセンサーの大きいカメラを買えといい、その一方で小さいサイズだからといって写りが悪いわけではないという。
いったいどういうこと!?
ここでは「画質」を2種類にわけて考えてみましょう。
「スペック的な画質」と、「感覚的な画質」です。
スペック的な画質
スペック的な画質とは、「何万画素」「歪みが少ない」「解像度が高い」「発色が鮮やか」など、「数値」に置き換えることができる画質です。
歪みも「何%」、発色も「彩度」という数値に置き換えることができます。
そしてこちらは、数字を操作して「作る」ことができる画質であるとも言えます。
小さいセンサー面から拾った少ない情報でも、後処理によってそれなりの画質に仕立て上げることが可能なのです。
だからこそ「小さいサイズだからといって写りが悪いわけではない」と言えるのです。
感覚的な画質
感覚的な画質は、文字通り感覚的なもの、数値に置き換えることができないものです。
「なんかイイ」とか、「雰囲気がある」とか。
それらは客観的な比較ができないために、あまり表舞台には登場しないけれども、実はそっちのほうが核心であったりします。
そして、そもそもの写真を撮る理由であったりします。
センサーサイズが大きいカメラで撮った写真は、「なんかイイ」んです。
これで納得いきましたか?もちろんいかないですよね。
だから、画素数がどうの解像度がこうのという、「わかりやすい」話にもっていかれるわけです。
しかしそれでは「わかった気にさせられている」だけです。
本当に見るべきは、目に見える数字ではなく、目に見えないフィーリングです。
どんなに初心者であろうとカメラに詳しくなかろうと、自分のフィーリングに正直になっていいんです。むしろなりましょう。それが写真を撮る理由でしょう?
数字の裏づけは、単なるフィーリングを正当化する手段にすぎません。
画質の作り込みも、作者が「イイ」と思う方向に合わせて数字を操作しているだけです。「フィーリングファースト」であります。
初心者は自らのフィーリングをうまく正当化できないがゆえに、他人の正当化に巻き込まれて自分自身を見失うことがよくありますので、まずは自分のフィーリングをよく思い出してください。
そしてそんな「フィーリングッド」な写真は、ビックカメラの店頭でちょろっと試し撮りした程度ではわからないものです。
実際にカメラを自分のものとし、自分の撮り方と被写体で撮ってみないとわからないところがあるのです。
そこが一眼レフのカメラ選びの難しいところであります。
センサーサイズの大小と「感覚的な画質」
ここでは、普段あまり話題にされることのない、センサーサイズの違いによる画質の「感覚的な」違いについて見てみましょう。
大判カメラでオリンピックを撮るカメラマンとして有名な、デイビット・ブルネット氏のギャラリーをのぞいてみましょう。
David Burnett | Photographer(外部サイト)
大判カメラ独特の「アオリ」と呼ばれるピント面操作によるジオラマ風な写真もありますが、「なにこの雰囲気?」「なんかイイ感じ?」感が伝わってくるのではないでしょうか。
(ジオラマ風については日本の本城直季氏が有名ですね)
これは極端な例として、かなり大きな4×5インチというフォーマットですが、基本的にフォーマット(センサーサイズ)が大きければ大きいほど、「イイ感じ」感は増すのです。
そしてそれは、解像度や高感度特性といった、数値上のスペックとしては表されませんが、本来の我々の感覚を最もくすぐる部分でもあります。
「感覚的な画質」とレンズの焦点距離の関係
さてここでようやく「ボケ」です。
「イイ感じ」感と「ボケ」には、密接な関係があります。
「ボケ」は2次元である写真を、3次元、つまり「立体的」に見せる効果があります。
つまり、「臨場感」や「存在感」が増すのです。
そして、フォーマット(センサーサイズ)が大きければ大きいほど、焦点距離の長いレンズが標準レンズになります。
- 35mm判=50mm
- 6×6cm判=80mm
- 4×5インチ判=180mm
参考:これでスッキリ!画角は「焦点距離」と「センサーサイズ」の二段階で理解する
35mm判に50mmを付けて撮る同じ画角が、4×5インチ判だと180mmになるのです。
ご存知のように、レンズの焦点距離は長いほど良くボケます。
参考:【一眼レフのレンズ選び】単焦点レンズのメリットと使い方
そんなわけで、センサーサイズが大きいほど焦点距離の長いレンズが使いやすくなり、その結果、ボケの大きい写真になりやすいのです。
昔の写真が、感材やレンズの稚拙な性能にも関わらず、やけに雰囲気があるのは、その焦点距離の長さが大きな役割を果たしています。
ものすごい立体感と存在感を感じますね。
これが「解像度」でも「発色」でもない、「感覚的」な画質です。
カメラ選びの実際
はい。ここまでお読みになられたあなたが何を言いたいかはわかりますよ。
「そりゃあフルサイズのほうが良いに決まってるけど…」
はい、予算という名の壁ですね。
当然です、無尽蔵にカメラにお金をかけて良いわけではありません。人にはそれぞれ事情があります。
いくら低価格のフルサイズが出てきたとはいえ、やはり高い買い物であるには変わりありません。
フルサイズ一眼レフの「奥の手」
しかしお待ちくださいませ。
フルサイズ一眼は、なにもデジタルに限ったことではありません。
そうです、「フィルム一眼レフ」という手があるではないですか!
「キヤノン」や「ニコン」のような、デジタル一眼も出しているメーカーなら、デジタルと同じレンズが使えますから、将来デジタルに移行する際でもレンズ資産を生かせます。
そして何より価格が安いです。
中古市場も豊富ですし、数千円からでも気楽に買えます。
参考:35mmフィルム一眼レフの最高峰、EOS-1vがお買い得すぎる話
また、フィルムという独特の味のある画質は、フルサイズのあの「なんかイイ感じ」感にもよくマッチします。
もちろんフィルム代、現像代などのコストはかかりますが、お試しであれば、非常に安い初期費用で試してみることができます。
「一眼レフのカメラ選び」のまとめ
長くなってしまったので、ここらで一発まとめておきましょう。
一眼レフのカメラ選びにおいて最も重要なこと
それは「センサーサイズ」です。
なぜなら、一眼レフを選ぶということはすなわち、「画質の良さ」を選ぶということなので。
そして一眼レフのセンサーサイズは、
- フルサイズ
- APS-Cサイズ
の2種類。
画質の良さならば、よりサイズの大きいフルサイズのほうが有利。
そんなわけで、一眼レフカメラを買うなら「フルサイズ」に決まり!
センサーサイズと画質の関係
ではなぜ、センサーサイズが大きいほうが画質がいいのか。
- 単純に面積が大きいほうが、記録される情報も多い。(フルサイズはAPS-Cの約2倍)
- 面積が大きいほうが、焦点距離の長いレンズが使いやすく、結果、ボケの効いた「感覚的に良好な」写真が撮れる。
特に2.の「感覚的な画質」は、数値で表されるような「頭で理解できる」ものではないので、スペック比較よりも実際にカメラを自分のものにして、自分の使い方で使ってみることが必要。
実際の購入
フルサイズのデジタル一眼もエントリーモデルが出てきて、より手を出しやすくなった。
しかしまだまだ高いという向きには、「フィルム一眼」という選択も有効。
フィルムのメリットとしては、
- 中古市場も豊富で価格も安いので、気楽に試してみることができる。
- 「キヤノン」や「ニコン」などの、フィルム、デジタル両方出しているメーカーならば、フィルムからデジタルに移行の際に、レンズ資産を生かすことが可能。
最後に
センサーサイズを大きくすることは、最も根本的な画質向上の手段です。
うっかり最初に小さいサイズを買ってしまうと、「なんかあんまり変わらないな」「一眼レフって別に大したこと無いな」となってしまって、2、3回使って押入れ行き、となってしまいかねません。
実際問題、価格との兼ね合いは難しいところですが、買ってみてやっぱり要らないなと思えば、売ってしまえばいいのです。
差額マイナスになったとしても、その間の経験は得がたいものになるはずです。
何事も自分のものにして使い込んでみないと見えてこない世界があります。
ちなみに個人的な感想を言わせてもらうと、一度フルサイズを使ったら二度とそれ以下に戻ろうという気は起きません。
一眼レフを買ったら次は「単焦点レンズ」
さて、めでたく一眼レフを購入したならば、次は「単焦点レンズ」を使ってみることをオススメします。
詳しくは下の記事にゆずりますが、「感覚的画質」に大事なボケや、ズームには無いクリアネスは単焦点レンズならではの醍醐味です。