プロカメラマンと、写真がうまいアマチュアの写真は一体どう違うのか?

プロカメラマンと、写真がうまいアマチュアの写真は一体どう違うのか?

記事をシェアする

プロカメラマン

プロカメラマンが撮った写真でも「大したことないな~」と思う写真はいっぱいあるし、アマチュアでも「スゲ~」って思う写真はいっぱいある。

そう思っている方も多いでしょう。

あるいは、「自分はこれだけうまいんだから、すぐにでもプロになれるだろう」

そう思っている方もいるかもしれません。

今回はそんな、よく質問される、

「プロとアマチュアの写真ってどうちがうの?見た目一緒じゃん。むしろプロよりうまいと思うアマチュアの写真はいっぱいあるし。」

という質問にお答えしたいと思います。

写真だけ見るとプロもアマも差は無いと思われるかもしれませんが、そこにはクッキリとした違いが存在します。

スポンサーリンク
写真に限らず自由に書いています。思ったこと、考えたこと、感じたこと。写真はほとんどフィルムとライカと50mmです。ブログのほうではもちょっと専門的なことを書いています。→

目次

そもそもプロカメラマンとは

そもそもプロカメラマンとはどんな存在であるかを、まずは確認しておきましょう。

言うまでもなくそれは、「撮った写真を売って生活している人」ですね。

サラリーマンが会社につとめてお給料をもらうように、パン屋さんがパンを売ってお金をもらうように、撮った写真を売ってお金をもらっているわけです。

要は、プロカメラマンにとって写真を撮ることは「仕事」です。

逆にアマチュアのカメラマンは、写真を撮ることは「遊びor娯楽」です。

まるっきり正反対の性格ですね。

まとめると

  • プロカメラマン=仕事
  • アマチュアカメラマン=趣味

「仕事で撮る写真」ってどんな写真?

さて、写真を売ってお金をもらうとはつまり、それを「買う」人がいる、ということです。

また、写真ではなく、「~さんに撮って欲しい」と、「人」で買われる(雇われる)場合もあります。

この、写真(またはカメラマンとしての人)をお金を出して買う(雇う)人がいるかいないかが、プロカメラマンとアマチュアの分かれ目です。

どんなに写真がうまくても、それをお金を出して買う人がいなければ、それは「アマチュア」です。

逆にどんなに下手な写真でも、それをお金を出して買う人がいて、それで生計を立てることができれば「プロ」です。

そこでは写真の上手い下手が問われているわけではないのです。売れるか売れないかです

某有名写真家のアシスタントをしていた、現在では有名な某カメラマンは、現場でクライアントのスタッフと付き合ううちに、その「キャラクター」を見込まれて仕事が回ってきた、という話があります。

写真じゃありません

その「キャラクター」で、「こいつと一緒に仕事がしたい」と思わせてしまったのです。

つまり、売れる売れないは写真の内容だけではないのです。

アマチュアより下手に見えるプロの写真が存在するのは、プロの写真は上手い下手で論じられる写真ではないからですね。

まとめると

プロが仕事で撮る写真=売れる写真≠上手い写真

プロカメラマンとアマチュアの「写真の違い」

さてそれでは、写真が売れるために必要な条件はなんでしょう?

言うまでもなくそれは、買い手が「欲しい」と思うか、「必要である」と感じるかのどちらかでしょう。

買い手であるクライアントの「欲しい」や「必要」にハマる写真です。

撮る側にしてみたら、クライアントの「欲しい」や「必要」に当てはめた写真です。

写真家の蜷川実花氏も

「周りにとって欲しいと思われる自分、必要と思われる自分でいることが重要」

という様なことを言っていますね。

そのためには自分の意思や好みよりも、クライアントの意思や好みを尊重しなくてはなりません。

アマチュアはこれとは反対に、自分の意思や好みで写真を撮ります。

「好きな事を仕事にしないように」とよく言われるのは、写真に当てはめて言うと、自分の好き勝手に写真が撮れなくなるからです。

自分の好みとクライアントの好みが常に一致すればいいですが、プロとなれば自分の好きじゃない写真でも撮らなければいけません。

「それでもプロになりたいですか?」と、こういうわけです。

そう考えるとプロカメラマンに向いているのは、自分の好きな写真を撮りたい人ではなく、写真が売れることに喜びを感じられる人、と言えますね。

言ってみればプロカメラマンとはアーティストというよりも、商売人です。

まとめると

  • プロカメラマン=クライアントの意思や好みを尊重した写真
  • アマチュアカメラマン=自分の意思や好みを尊重した写真

プロの写真の特徴

では、そんなプロカメラマンの写真には、どんな特徴があるのでしょうか。

クライアントのための写真

先ほども言いましたように、最も大きな特徴は、クライアントのための写真、ということです。

そこではカメラマンの好き嫌いは関係ありません。

クライアントの目的に合致しているかどうか、です。

クライアントは、いろんな理由で写真が欲しいわけです。

  • 商品カタログのために、全てのカットのアングルやサイズが揃った写真。
  • ファッション誌のために、読者層に訴えるオシャレな写真。
  • パック旅行の紹介のために、そのコースの魅力をあますところなく伝える写真。
  • スポーツ紙のために、ベストなシーンをベストなアングルから捉えた写真。

それはもう、いろいろな理由です。

そして、その目的にきっちりと応えた写真。

当然発注側も、その分野で実績のあるカメラマン、得意なカメラマンを指名してくるでしょうから、大きな齟齬は無いはずですが、カメラマン的には自分の好きではない写真を好きではない撮り方で撮る必要も当然出てきます。

しかし、お客さんが「ゴボウください」と言っているのに、ニンジンを渡す八百屋さんはいません。

ゴボウくださいと言われればゴボウを渡します。

相手の欲しいものを渡して対価をいただく。

これが商売です。

プロの写真は「商品」ですから。

なので、「写真の腕をみがく」といった場合、アマチュアの場合は文字通り「写真の腕をみがく」ですが、プロの場合は「商品価値を高める」となります。

情熱の対象としてみた場合、アマチュアの場合はそのまんま「写真に対する情熱」ですが、プロの場合はどちらかと言えば「仕事に対する情熱」と言ったほうが当たっているでしょう。

まとめると

プロの写真=「商品」

目的がハッキリしている

プロが撮る写真は、だいたいにおいて使用目的がハッキリしています。

なんという媒体の、どのページのどの位置かまで決まっていることも多いですし、そうなるとモデルの向きはどっち向きとか、ライトの方向はどっちから等まで決まってきます。

また、的確に写すのか、イメージで写すのかでも撮り方は全然違うし、同じイメージカットでも迫力を出すのか、静かに訴えかけるのかでも撮り方は違います。

そして、それを決めるのはカメラマンではなく、あくまでクライアントです。

意見を求められることがあっても、それは、自分の好みを聞かれているわけではなく、どうすれば目的に合致するのかを聞かれているのです。

あくまで目的ありきです。

ですから、その写真がいくらカッコよくても、目的を外していたら「アウト」なのです。

まとめると

プロの写真=クライアントの目的に合致した写真

「プロの写真」の見方

そんなわけで、プロの写真を見る場合は、あくまで「どれだけ目的に合致しているか」を見る必要があります。

誰の、どんな目的のために撮られた写真で、どれだけその目的を満たしているか、を見る必要があるのです。

この商品のココが魅力的だから、そこを生かすアングルで、なおかつ背景には補色を入れてよりその部分を強調し、ディテールが良く出るように、ライトは少し硬めに角度をつけて…

また、発注主がメーカーの直販サイトだから、画素数は最適なサイズに落として、なおかつ低解像度でも見やすいシャープネスの設定を…云々。

そう考えると、プロの写真とアマチュアの写真を同列に比較するのは無理があるのがご理解いただけるでしょう。

同列に比較するためには、同じ発注に対して各々が写真を撮り、どちらがより目的に合致しているのかを比較検討しなくてはいけません。

そしたらもうアマチュアの写真はアマチュアの写真では無くなります。

また逆にプロが発注元なく自由気ままにアマチュアのように撮れば、それはもう「いちアマチュア」の写真であって、プロの写真ではなくなります。

要は評価の基準が違うので、プロの写真とアマチュアの写真は、同じ土俵には上がれないのです。

プロの写真を見るには「目的」を知る必要がある

プロの写真は目的ありきで撮影しているわけですから、プロの写真に対して、ただ写真だけを見てその目的を見ないのは、料理を目で見るだけで、実際に食べてみないのと同じことです。

料理において「見た目」は重要ですが、その本質はやはり「味」です。

見た目マズそうでも、食べてみたらめちゃめちゃウマい、ということもあるでしょう。

プロの写真も「見た目」は重要ですが、その本質は写真の「使用目的」です。

見た目ヘタそうでも、目的にめちゃめちゃ合致している、ということもあるでしょう。

本質はその「目的」にあって、写真はその目的を伝えるための「手段」です。

服のブツ撮り写真なら、その作り・色・質感を伝えるのが目的です。

服のイメージ写真なら、そのライフスタイル、少し上の憧れ感、「欲しいッ」と思わせる印象を伝えることが本来の目的です。

同じ服を撮るにしても、目的が違えばアプローチも違うし、出来上がる写真も全然違います。

その「目的」のどの点が、どの程度達成されているのかを見るのが、「プロの写真」の見方です。

ブツならその特徴を伝えるベストなアングルか、色は正確か、質感は正確か。

イメージなら、モデルは正解か、ポージングは?シチュエーションは最適か、小道具の配置は?カメラアングルは、焦点距離は?等など。

それは、写真そのものを鑑賞する写真とはまた違う写真です

プロ基準による「下手」とは

ですから、プロの場合「下手」と言われるのは、クライアントの意図や目的に合致していない時です。

いくらアマチュア視点で「上手い!」「カッコイイ!」「超クール!」な写真であっても、クライアントの目的に合致していなければ、プロ視点では「下手クソ」です。

それは、「軽トラックください」と言ってるのに、ベンツを持ってくる車屋さんです。

いくらベンツのほうがカッコイイとしても、軽トラックが欲しいその意図と目的を理解しないならば、プロとしてはアウトです。

せめて持ってくるならば「カッコイイ軽トラック」か、「軽トラック以上に意図と目的を達成するもの」です。

目的を外されたほうのクライアントは「カッコつけやがってバカじゃねえのか?」と思っているかもしれませんし、二度と仕事は発注しないかもしれません。

プロの「下手」は死活問題です。こわいですねー。

逆にアマチュア視点で「下手だなー」と思われるような写真であっても、その写真がクライアントの目的に合致していれば、プロの写真としてはそれで成立するのです。

まとめると

プロの写真の評価=クライアントの目的の達成度

まとめ

以上のように、プロの写真は「上手い下手」で見るべき写真ではないのです。

ですから、「どうしてこんなに下手なのにプロなんだ!?」という質問はナンセンスです。

上手い下手ではなく、クライアントの目的に合致しているかどうかです。

そしてその結果、写真が売れて、それで生計が成り立っているかどうかです。

逆にプロは、いわゆる「アマチュア的視点」での上手い下手にはこだわっていませんし、そういう意味で自分が上手いか下手かにもあまり興味がありません。(たぶん)

もちろんスキルは磨きますし、機材も揃えますが、それもこれも写真の商品価値を高めてクライアントの満足度をより高めるためです。

クライアントの満足度を高めるためにがんばっていたら、結果的に上手い写真になるだけです。

別に上手さを目指してやっているわけではありません。

さて、最初の質問に戻りましょう。

「プロとアマチュアの写真ってどうちがうの?見た目一緒じゃん。むしろプロよりうまいと思うアマチュアの写真はいっぱいあるし。」

もうお分かりかと思いますが、その解答は「土俵が違うので比較はできない」ということですね。

アマチュアの写真については、写真そのものを云々すればいいですが、プロの写真はその「目的」を知らないと云々できません。

そしてそれは、アマチュア写真の上手い下手とは別次元の評価基準になります。

もちろん、プロの写真も、その「写真だけ」を見て云々することはできますが、それは料理を「食べることなく」見た目だけで云々しているようなものだと心得ておきましょう。

  • 写真だけ」で評価できるのがアマチュアの写真
  • 目的とその達成度」で評価するのがプロの写真

正直プロの側にも「こんな写真恥ずかしくて自分の写真だと言いたくない」という写真もあるかもしれません。

しかし、それがクライアントの目的を100%達成している写真なら、それは100点の写真であり、なんら恥ずべきものではありません。

ただ、写真の見た目だけではそれがわからないだけです。

プロの写真は「食べてみないとわからない」のです。

ですから皆さん、プロの写真でどんなに下手っぴに見えたとしても、それがクライアントがOKを出して世に出ている以上は、なんらかの深い意義があるのだと勘ぐってあげてください。(笑)

【追記】

続編を公開しました。(2016/8/27)

【プロカメラマンになりたい方へ】必ず成功する方法

フォローアップ編を公開しました。(2016/9/6)

プロカメラマンは個性を生かすべきか殺すべきか、という問題

こちらもオススメ。(2016/8/29)

センスも才能もないカメラマンに贈る祝福の言葉

スポンサーリンク

記事をシェアする

SNSでフォローする

この記事をお届けした
写真のネタ帳の最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!
写真に限らず自由に書いています。思ったこと、考えたこと、感じたこと。写真はほとんどフィルムとライカと50mmです。ブログのほうではもちょっと専門的なことを書いています。→
オススメ記事