ついにこの日が来ました。
キヤノンのHPでEOS-1vが在庫僅少となっています。すでにカウントダウンは始まりました。
もう間もなくキヤノンのラインナップから「新品フィルムカメラ」が姿を消すでしょう。
【2018.5.30追記】
販売終了になりました。
ついにこの日が来たかという感慨とともに、よくここまでがんばってくれたものだと、一銀塩ファンとして厚く御礼申し上げたい気分です。(単に在庫が余っていただけかもしれませんがw)
「フィルムで写真を撮る」ということは、どんどん過去の遺物となりつつありますが、写ルンですブームに代表されるように、フィルムが完全になくなるのはまだまだ先のようです。
さてこの2000年に発売されたEOS-1vは、文字通りキヤノンの銀塩最後のフラッグシップです。
発売当時の定価は27万円。かつてはプロカメラマン御用達として一時代を築いたそのカメラは、現在なんと、中古で3万円程度で手に入ります。
実に定価の約1/10!(1/9か。)
数年前になりますが、あまりのお買い得っぷりに私もうっかり2台手に入れてしまいました。
今回は、キヤノンのかつてのフラッグシップがお買い得すぎる話と、「フラッグシップ」の何たるかについてのお話です。
銀塩ユーザーに限らず、すでにレンズ資産(フルサイズ)をお持ちのキヤノン一眼レフユーザーも必見です。
目次
35mmフィルム一眼レフの最高峰「EOS-1v」とは
フィルムのころの写真って、まだ「プロ」と「アマチュア」が明確に線引きされていたと思います。
そもそも「ポジフィルム」を使うのは、プロを除けば一部ハイアマチュアだけでしたし、現像してみるまでどう撮れているかわからないフィルムで確実な結果を出すのは、まだまだプロの領域でした。
そんな、まだプロがプロとして健在だった最後の時代、プロ御用達として、圧倒的な信頼と羨望を集めたのが、キヤノン「EOS-1v」です。
- 視野率100%のファインダー
- 毎秒10コマの連射(パワードライブブースター
PB-E2装着時) - マグネシウム合金外装と防塵・防滴性能
- 45点を誇る測距点と高速かつ正確なAF
- 45点エリアAF対応の「21分割測光センサー」
- 最高シャッタースピード1/8000、最高ストロボ同調速度1/250
- 15万回以上の耐久性を誇るロータリーマグネット制御式電子シャッター
- きめ細かい設定が可能な20種63項目のカスタムファンクション
- PCと連携して撮影データ管理・パーソナルファンクション設定可能(要EOSリンクソフトウエアES-E1)
とまあ、数え上げればキリがないですが、今見ても相当なハイスペックです。
当時としてはまさに「最高級」です。
製品ピラミッドの頂点に君臨するカメラ、もうこれ以上はないカメラとして、メーカーが威信をかけて開発した最高のカメラです。
今「フラッグシップ」を使う意味
さてそんな輝ける時代の最後のフラッグシップ銀塩カメラが、現在中古で3万円程度で売られています。
まさに「過去の遺物」という扱いです。
過去の栄光今いずこ。これが盛者必衰の理ってやつでしょうか。
しかし、そのおかげで我々には、「フラッグシップの何たるか」に触れてみる機会が与えられました。
27万円の価値を3万円で触れてみることができるのです。
「モノ」としてのカメラ
さて「カメラ」という機械ですが、これは「写真を撮る」という機能とともに、「モノ」としての魅力が重視されるジャンルです。
腕時計では、たかだか時間を確認するためだけの機械に1000万円以上の値が付けられることもあります。
それはもちろん「機能」に付けられた値段ではなく、モノとしての「魅力」に付けられた値段です。
カメラもまた、「実用品」としてよりも、「嗜好品」としての側面が強いジャンルです。
カメラの「感触」
そんな嗜好品としてのカメラの大切な要素に、「感触」というものがあります。「使用感」とも言えますでしょうか。
「ライカ」というカメラは、嗜好品としてのカメラの代表格のようなカメラですが、そのカメラボディはほとんど感触だけで成り立っています。
参考:ライカM-Aによって、ついにレンジファインダーカメラはゴールに到達した
これはカタログ上の数値やスペックをいくら眺めてみてもわからない、実際に使ってみないとわからないものです。
この数値に表されない「感触」は、もちろん安いカメラにもあてはまり、数値上のスペックは良くても、感触が良くないカメラというものも、また存在します。
例えば同じくキヤノンの現行フルサイズ機である「EOS 5D」と「EOS 6D」。
現時点の価格は、
- 5D(Mark III)=23万円程度
- 6D=12万円程度
です。
スペック的にはそんなに変わらないにも関わらず(いや、変わるか)、値段は倍程度違います。
そしてその違いは「感触」となって表れます。
感触はやはり上位機種である5Dのほうが圧倒的にいいです。
実際に両方を使っているカメラマンに触らせてもらったこともありますが、それはもう「なるほど確かに」です。
本人も「ペラい感触が萎える」と言っていましたが、両方同時に使っていればなおさらでしょう。
もちろん高いほうが耐久性や各部の部材などにもコストをかけて作られているわけですから、当然と言えば当然です。
「EOS 6D」はオススメだよ!
ちなみに、フルサイズであの価格を実現した「EOS 6D」自体はすばらしいカメラです。
フルサイズ推進委員の私としては、(プロカメラマンではないなら)7Dよりも6Dを圧倒的にオススメします。
詳しくはこちら→:「一眼レフのカメラ選び」で大切なことはひとつだけです
カメラの「感触」が大事なワケ
さてそんな、カメラの「感触」という部分。
カタログスペック上には表れませんが、なにげに実際の使用上においてはかなり大きな部分を占めるのではないでしょうか?
特に「趣味のカメラ」の場合。
実際の使用において、カタログスペックは忘れてしまいますが、「感触」だけは常について回ります。
自分のカメラが何万画素か、何分割測光かという「情報」は忘れてしまっても、グリップの感触、重み、手触り、シャッターのフィーリングは、「物理的なもの」として、使用中にイヤでも伝わってきます。
ところで、職場でイヤな人と一緒に仕事をするより、好きな人と仕事をするほうがはかどるってことはありませんか?
たとえ能力が高くてもイヤな人と仕事をするより、多少デキが悪くても、気持ちよく仕事ができる相棒のほうが仕事がはかどるはずです。
カメラの場合も、同じことが言えます。
趣味でカメラを持ち出すとき、スペックよりも「感触」優先だったりしませんか?
さらに言えば「写真を撮りたい」というよりもむしろ、「そのカメラを使いたい」っていう理由だったりしませんか?
「感触」は、目に見えない部分ながら、嗜好品的な意味合いが強い「カメラ」においては、非常に重要な部分を占めているのです。
フラッグシップカメラの「感触」
というわけで、そんなカメラの「感触」。
カメラの場合はスペックと感触はほぼ比例します。(ライカは例外ね)
フラッグシップカメラ、最高級カメラの感触とは一体どんなものか、感じてみたいと思いませんか?
もちろん、店頭で軽くいじってみることはできますが、実際に自分のカメラとして使ってみる機会はめったにないはずです。
現在のキヤノンのフラッグシップ「EOS-1D X Mark II」は約60万円。
それと同等の感触が、約3万円から味わえるのです。
どうです、魅力的なオファーではありませんか?(笑)
改めてEOS-1vの魅力
それでは、実際に使ってみたEOS-1vの感想。
一言でいうと、、、「高級」です。
高級車、高級ホテル、高級ブランド…。
それらに通じる、高級だけが持つあの感覚。
「ああ、高級とはこういうことだったョなぁ。。」と、きっとなつかしい目になること請け合いです。
フィルムカメラの質感
デジタルになってからのカメラは、コストはデジタルデバイスのほうに差し向けられ、部材そのものの質感はむしろ下がっているように感じます。
しかし、フィルムの頃はそうではありませんでした。
ほぼ完全に「メカ」で構成されるカメラは、高級=高級部材でした。
価格の高さはすなわちそのまま、手に触れてわかる質感に変換されていました。
デジタルデバイスを積んでいない、ほぼ純粋な「メカ」であるにもかかわらず、今どきのほとんどのデジカメよりも高い27万円という価格が設定されていたEOS-1vは、そのコストのほとんどが、メカとしての質感に変換されています。
単なる古いカメラ、忘れ去られたカメラというだけではあまりにももったいないポテンシャルが、実際EOS-1vにはあるのです。
3万円。
カメラ好きならば、高級ホテルで週末をエンジョイするのを一回我慢して、ひとつ試してみるのもいいでしょう。
補足
ひとつ言い忘れましたが、EOS-1vはシャッター音がばかデカいです。
シャッター音というか、ほとんど「キャイ~ン!」っていうフィルムの巻き上げ音です。
このシャッター音、モデル撮影の時にはモデルの気分が「アガる」らしいので、そっち方面の方にもオススメです。
とりあえずこのカメラ、注目を集めることだけは間違いないです。