カメラの世界では、写真に写る範囲のことを「画角」と言ったりします。
画角については、デジカメのレンズの説明で「35mm換算」などとよく言いますね。
全く同じレンズでもカメラによって写る範囲が変わるので、イマイチ理解しにくい部分があります。
そんな画角は、
- 焦点距離との関係
- センサーサイズとの関係
の二段構えで捉えると理解しやすくなります。
イマイチわかりにくくてモヤモヤとする画角について、今回はスッキリ説明してみたいと思います。
目次
レンズの焦点距離と画角の関係
まずは、レンズの「焦点距離」と画角の関係をみていきましょう。
焦点距離とは
レンズと言うものはそもそも、光を通過させて、像を結ぶためのものです。
そして、像を結ぶ位置にセンサーなりフィルムなりを配置し、その像を記録します。それがカメラです。
そして、レンズを通過した光が像を結ぶまでの距離、これを焦点距離と呼んでいます。
焦点距離は、「無限遠に」ピントを合わせたときの長さを言います。
ピントが手前に来るほど像を結ぶ位置は後ろにズレます。
レンズから5cmの位置で像を結べば、それは焦点距離50mmのレンズ、20cmのところで像を結べば、それは焦点距離200mmのレンズとなるわけです。
ちなみに昔は焦点距離の単位に「cm」も使いましたが、これは「cmまでしか保証しませんよ」という意味が含まれていました。
「5cm」なら「5.2cm」でも「4.8cm」でもOKなのです。
いまはより精度の高い「mm」で統一されていますね。
さてそれでは、なぜそのようにいろいろな焦点距離のレンズが存在するのか?別に一個あれば十分じゃないかという疑問も湧くことでしょう。
それは、焦点距離を変えることによって、写真に写る範囲(画角)を変えることができるからです。
焦点距離を変えることによって画角が変わる
焦点というのは、レンズを通過した光線が交わる一点です。
虫めがねで太陽の光を集めると、初めはボンヤリしていた点が徐々に鋭さを増し、ある時点で一点に集中します。そしてまた徐々にボンヤリしていきます。
その最も鋭い一点が、その虫めがねの焦点距離です。
そして、焦点距離が長くなればなるほど、光線の交わる角度は小さく(急角度に)なります。
また逆に、焦点距離が短くなればなるほど、光線の交わる角度は大きく(緩い角度に)なります。
その角度の違いは、そのまま画角(レンズが光を取り込む範囲)の違いになります。
だいたい画角50°近辺の、人間が肉眼で普通に見る視野に近いレンズを「標準レンズ」と呼び、それより焦点距離が長いものを「望遠レンズ」、短いものを「広角レンズ」と呼んでいます。
そして、遠くのものを大きく写したければ望遠レンズ、目の前の景色を広~く写したければ広角レンズというように、用途に応じて使い分けることができます。
photo:halfrain
photo:perrita laika
レンズにバリエーションがあることによって、いろいろな撮影に対応できるようになるわけですね。
センサーサイズと画角の関係
それでは次に、画角を決定するもうひとつの要素である「センサーサイズ」(フィルムサイズ)についてみていきましょう。
センサーサイズ(フィルムサイズ)のいろいろ
写真を撮るカメラは、画像を記録する部分(センサーまたはフィルム)の大きさが、いろいろあります。
フィルム時代に最もメジャーだったサイズは35mmカメラの「36mm×24mm」というフォーマットです。
画像を記録する部分がフィルムからデジタルに変わった現在でも、「フルサイズ」と言えばこの「36mm×24mm」を指しますね。
そのほかにデジカメでは「APS-C」や、「マイクロフォーサーズ」などといったサイズがありますし、フィルムでは「中判カメラ」や「大判カメラ」があります。
なぜこのようにいろいろなサイズがあるのかと言いますと、画質、扱いやすさ、製造コストなどのメリット・デメリットがそれぞれ違うので、用途によって使い分けができるようにしているのです。
レンズが広角から望遠まで、さまざまなバリエーションを持たせているのと同じことですね。
たとえばデジカメであれば、センサーサイズは大きいほうが画質も良いですが、製造コストがかかります。
なので、センサーサイズを小さくして、画質を抑える代わりにコストも抑えたモデルも用意して、選択肢を増やしているのです。
また、フィルムカメラであれば、フォーマットの違いはコストよりも「扱いやすさ」という点が大きいでしょう。
35mmカメラであれば、街中でスナップも簡単です。
しかし大判カメラだと、装置も大きくなりますし、ルーペでピントを見たりもするので、スナップはかなりきびしいです。
そのかわり画質は最高にいいので、じっくりと撮影する風景写真などに向いています。
そして、中判カメラは画質と扱いやすさがその中間、という感じです。
このように、大小さまざまなフォーマットを用意することによって、いろんな撮影のニーズに対応しているというわけです。
センサーサイズと画角
さて、そんなわけでいろいろなサイズがあるカメラのフォーマットですが、次にカメラのフォーマットと画角の関係をみてみましょう。
たとえば、焦点距離50mmのレンズは、35mm判カメラでは画角47°の、いわゆる「標準レンズ」です。
しかし同じ50mmが、大判カメラ(4×5インチ判)であれば、画角は114°の「超広角レンズ」です。
そしてまた同じ50mmが、APS-Cなら、32°の「中望遠レンズ」となります。
同じ焦点距離のレンズが、カメラのフォーマット(センサーのサイズまたはフィルムのサイズ)によって画角が変わる、ということです。
これは一体どういうことでしょうか。
イメージサークルとセンサーサイズ
レンズは基本円形ですね。その円形のレンズが映し出す像も、これまた本来は円形です。
その、円形のレンズが映し出す円形の像の全体を「イメージサークル」と言います。
しかし、実際に写真となって我々が見る画像は四角いですよね。
長方形や正方形、比率はいろいろあるにしても、基本「四角」です。
そうです、「カメラで写真を撮る」とは、本来円形である映像の中から、一部分を「四角く切り取る」ということなのです。
その四角のサイズが、35mmカメラなら「36mm×24mm」、4×5インチ判なら、「4インチ×5インチ」、APS-Cなら「23.4mm×16.7mm」ということなのです。
たとえば、あるレンズが、上のような像を映じたとしましょう。
その同じ像を、4×5インチで切り取れば
35mmで切り取れば
APS-Cで切り取れば
となるわけです。
同じ焦点距離であるにも関わらず、4×5は切り取る範囲が広いので広角っぽく写ります。
そして、APS-Cは切り取る範囲が狭いので望遠っぽく写ります。
これは厳密には「画角」と呼ぶものではなく、「クロップ」または「トリミング」と呼ばれる、画像の一部分を切り取る行為、とも言えます。
しかし、現実に得られる画像が、4×5は広角っぽく、APS-Cは望遠っぽく見えることには間違いありません。
なので、センサーサイズの違いは、結果的に画角の違いに繋がるわけです。
焦点距離とセンサーサイズと画角の関係
さて、以上をまとめてみましょう。
このように、画角とは、二段階の仕組み によって成り立っているのです。
この二つの要素を個別に理解すれば、画角についてはスッキリと整理できるのではないでしょうか。
今までモヤモヤと分かりにくかった「画角」ですが、こういうカラクリになっていたのですね~。