【1ランク上のポートレートの撮り方】ポートレート撮影でまず押さえるべき「3大要素」とは

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女性ポートレート

ポートレート撮影は、スナップ撮影とは違います。

ポートレートにはポートレートなりの撮り方があります。

そのツボを押さえることによって、初めてポートレートはポートレートらしくなります。

例えば「自然に見えるように」撮る場合でも、ポートレートのツボを外して、ありのままをそのまま撮っていたら、それは「スナップ撮影」と一緒です。

今回はポートレートがポートレートとなるために必要な、押さえておくべき基本的要素について解説しました。

普段ポートレートを撮っていて、

  • なんか撮っている実感が薄い
  • スナップとの違いがよくわからない

という方は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

そもそもポートレートとは

そもそもポートレートとは、「人物」を「イイ感じ」に撮る、というのが、その目的です。

その撮り方は本来、ブツ撮りに近いものです。

「ブツ撮り」とは、時計や壷などの、「」を「イイ感じ」に撮る撮影です。

壷

Photo:Xuan Che

ポートレートは、「人という物(人物)」を「イイ感じ」に撮る撮影、と言っていいでしょう。

ポートレートと言えば、「生き生きとした表情」や「雰囲気のいいシチュエーション」といった「情緒的」な事ばかりに目が行きがちですが、本来ポートレートとはもっと「合理的」なものです。

「表情やシチュエーションをメインに、なんとなく雰囲気良く撮る」

そんな雲をつかむような話ではなく、もっと論理や計算によって成り立つ、合理的な結論です。

それは、音楽がどんなに「ノリだ」「情緒だ」といっても、ブルースも演歌も全ては調性音楽という合理的なシステムの上に乗っかっているのと同じです。

どんなにフェイクやコブシがうまくても、音程が取れていなかったら、そもそも音楽になりませんね。

ポートレートが捉えられないとしたらそれは、「情緒」や「雰囲気」といった捉えどころのないもので捉えようとしているから捉えられないのではないでしょうか。

「情緒」や「雰囲気」だけではポートレートの骨格は捉えられないのです。

「理解する」とはつまり、「説明できる」ということです。

説明のできない雰囲気やニュアンスももちろん大事ですが、それらは説明のできる論理の裏付けがあって初めて効力を発揮するものです。

コブシを回すだけでは曲として成立しません。それはただの「うなり声」です。

まずは「うなり声」を音階に当てはめましょう。「味」云々はそれからです。

ポートレート撮影においてはまず、論理で把握し切れるところまでは把握し切りましょう。

雰囲気やニュアンスを云々するのはそれからです

ポートレートの3大要素

というわけで、そういう発想でポートレート撮影を考えると、考慮すべきポイントとして、次の3つが浮かび上がってきます。

  • ポーズ
  • ライティング
  • カメラポジション

これらは「合理的な」ポートレート撮影において構成要素となるものです。

まずは各々について説明します。

ポートレートをポートレートたらしめる要素1:ポーズ

まず第1の要素。

それはモデルの「ポーズ」です。

ポートレートとスナップ撮影の大きな違いは、モデルが、撮られていることを「知っている」かどうかです。

モデルが知らない間に撮られた、というのは、「隠し撮り」とか「スナップ撮影」であって、「ポートレート」ではありません。

ポートレートでは必ず、モデルは自分が撮られていることを知っています。

のみならず、ポートレートにおいてモデルは、その作品の 共同制作者 のひとりです。

ポートレート撮影は基本的に、モデルとカメラマンの共同作業によって、作り上げられます。

モデルだけでもポートレート撮影は成り立たず、カメラマンだけでも成り立ちません。

ポートレート撮影において、モデルとカメラマンの立場は、完全にフィフティーフィフティーです。

ですから、そこで大事になってくるのは、カメラマン側の表現なりテクニックだけでなくモデル側の 表現なりテクニックです。

モデルの「表現」が、作品の大きな部分を占めます。

表情、ポージング、持っている雰囲気…等々。

その、「モデル側の表現」をひっくるめて、ここでは「ポーズ」としています。

ポートレートをポートレートたらしめる要素2:ライティング

次に「ライティング」です。

ライティングとは、被写体にどのように光を当てるか、ということです。

ブツ撮りにおいてライティングは、「」と言っていいくらい重要なものです。

小さな口紅一つ撮るのにも、櫓みたいなセットを組むのは、それだけライティングが重要であるからです。

スタジオライティング

もちろんライティングは、スタジオでライトをどう当てるか、ということだけでなく、屋外において、どっちからどんな光質の光が来ているかを考慮することも、ライティングです。

屋外の場合は、太陽は動かせないので、モデルが動くかカメラマンが動く必要があります。

そうです、自分やモデルが動く、ということも、ライティングの一種です。

そして、ライティングについて考慮する、ということは、ポートレートをポートレートたらしめる大きな要素です。

なぜなら、人物を「物」として見るからこそ、ブツ撮りにおける最重要項目である「ライティング」という項目が出てくるからです。

人物撮影において、「表情」や「フィーリング」だけが大事ならライティングという項目は出てきません。

「人物という立体」を「いかに描出するか」という「ブツ撮り的」発想があるからこそ、ライティングという項目が浮かび上がってくるのです。

そういう意味でライティングは、ポートレートにおける重要な要素のひとつです。

ポートレートをポートレートたらしめる要素3:カメラポジション

次に、「カメラポジション」です。

被写体は、それを「どこから見るか」によって、見え方が全然違ってきます。

そして2次元の写真においては、この「どこから見るか」が、決定的な要因です。

なぜなら、2次元の写真においては、見た場所から見えたものが全てだからです。

裏側がどうなっているかは、もはや関係ありません。

見えたもの」だけが全てです。

3次元の作品ならば、裏や表や右や左、全てを考慮する必要がありますが、2次元であれば必要なのは「その位置から見えたもの」だけです。

カメラポジションはそういう意味で、決定的な役割を果たします。

ポートレートの3大要素を撮影に生かす撮り方

ポートレート撮影は、これらの要素にまず考慮を払うということがスタートです。

今まで、ライティングのことなんて考えたこともなかった、あるいは、どの位置から撮るかなんて考えたこともなかった、というならば、まずはそれらに考慮を払いましょう。

まずは、考えたこともなかったことを考えるだけで、大きな前進です。

その際、どのような点に着目するかについて見ていきましょう。

ポーズ

ポートレート撮影では、どんなときでもカメラマンは、モデルの表現を撮るしかないので、いつでもモデルファーストで考える必要があります。

つまりポートレート撮影は、モデルが最大限のパフォーマンスを発揮できる場を作る、ということと、ほとんど同義です。

カメラマンは、自分の考えを押し付けるのではなく、やりたい事があるなら、そっちの方向に物事が流れていくように「流れを作る」という発想が大切です。

2通りのポージングの考え方

さて、ポージングの考え方としては、2通りの考え方があります。

  • カッチリ形を作りこむ
  • 形よりもノリや雰囲気を重視
「カッチリ形を作りこむ」

これは、腕の位置や顔の向きなどを、ベストポジションに固定して撮る方法です。

動きが制限されるので、モデルによっては表現に精彩を欠く場合があるかもしれませんが、形はキレイです。

「形よりもノリや雰囲気を重視」

これは、作りこむのとは逆に、多少形が崩れても、ノリや雰囲気を重視する撮り方です。

モデルは自由に動けるので、表現としては、より豊かに発揮される場合が多いでしょう。

また、思いがけない表現が飛び出すこともあるでしょう。

ポートレートにおけるポージングの基本的な方向性

一般的な傾向としては、形よりも雰囲気重視という方が多いと思いますが、雰囲気だけならスナップ写真になってしまいます。

ポートレートであるならば、やはり雰囲気だけでなく、形に対する美的考慮が必要です。

つまり、

  • 形重視でいくなら、モデルの表現がピッとひらめいた瞬間に撮る
  • ノリ重視でいくなら、形がキレイに整った瞬間にシャッターを切る

つまり、どっちの場合で行くにしても、結局目指すべきは全てを満たした瞬間ということですね。

カメラマンがモデルに指示を出す場合の注意点

カメラマンがモデルに指示を出すことは多々あるかと思いますが、その場合の注意点です。

形重視の場合

「形」に対してカメラマンが指示を出す場合は、ハッキリとした、間違えようのない指示を出すことが大事です。

なぜなら、ポートレート作品においては、モデルとカメラマンの意思の疎通が非常に大事だからです。

意思の疎通がちぐはぐだと、そのちぐはぐっぷりが如実に写真に写ってしまいます

あいまいな指示はあいまいな表現を生み、あいまいな写真を作り上げます。

ですから指示の際は、「右足を10cm後ろに」とか、「顔を3cmカメラのほうに回して」とか、具体的な数字を入れると効果的です。

それはリアルに何cmということではなく、動かす「程度」を想像してもらう、という意味で効果的です。

そして、「右・左」は、言うまでもなく「モデルにとっての」です。

「右手」と言う場合はそれは、モデルの右手であり、「左方向」という場合はそれは、モデルにとっての左方向です。

間違ってもカメラマンのそれではありません。

カメラマンとモデルは向かい合っているので、左右が逆になりますから、注意が必要です。

そういう配慮がつまり、モデルファーストということです。

彼ら彼女らがスムーズに動作できるように指示を出してあげましょう。

ノリ重視の場合

ノリ重視の場合は、カメラマン自身がそのノリであることが大切です。

「指示」というよりも「伝える」という気持ちです。

沈痛な面持ちで「笑って…」と言われても、なかなか笑えるものではありません。

沈痛なカメラマン

カメラマン自身がそのノリと一体化し、そのノリをモデルに伝播させるくらいの気構えが必要です。

ノリの良いカメラマン

「ノリ」や「雰囲気」は、その性質からいって、言葉で説明して「理解する」ものではなく、五感を通して「伝わる」ものです。

モデル撮影の現場で、ノリのいい音楽をガンガンにならして、おいしいお菓子をたんまり用意するのは、そういう「場」を提供するためです。

カメラマンなら自らのファッションや言葉遣いにも気を使うはずです。

これは、モデルが最大限のパフォーマンスを発揮できる場を作る、ということにもつながります。

あるいはプロのモデルであれば、場がどんな雰囲気であっても、要求された表現をうまく表現する技量を持っているかもしれません。

しかしそんな場合でもやはり、場がその表現にマッチしていればやり易いことは言うまでもありません。

我々がやるべきことは、何をすれば目指す目標に到達できるかを考え、それをやることです。

たとえその目標が、偶発的な要素を期待するようなものであっても、その偶発的な要素を誘発しなければ、何も起きません。

「どうすればそうなるか」を考えれば、答えは自ずと出るはずです。答えは出なくても、その方向で動くことが大切です。

それから、「ノリ」や「雰囲気」については、そのモデルに表現可能かどうかを考慮する必要があります。

モデルの雰囲気とは全く合わない要求をしても、その作品は失敗に終わるでしょう。

もちろん、モデル自身さえも知らなかった新境地の表現を引き出す、というスタンスも大いに結構ですが、そのことと無理強いはまた別です。

その違いはよく見極めましょう。

求める「絵」が先にあるなら、それに合ったモデルを選ぶことは重要ですし、モデル優先でいくなら、そのモデルに合った表現をすることも重要です。

ポートレートにおいてはカメラマンは、写真の技術以前に「人間観察」そして「その人を生かす」という、写真とは全く別の技術が必要になります。

ライティング

次にライティングです。

ライティングについては、こちらにほぼ書き尽くしていますので、こちらをご参照ください。

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細かいことについては上記を参照していただくとして、ここでは最も大きなことだけを気にしましょう。

つまり、メインライトがどこにあるか、です。

どっちから最も大きい光が来ているか、ということです。

それともう一つは、光の質です。

「硬い」とか「柔らかい」とかいうアレです。

直射光

硬い光

柔らかい光

柔らかい光

その光が、今やろうとしている表現に適しているかどうかに考慮を払いましょう。

硬い表現なのか、柔らかい表現なのか。

光が回った表現なのか、陰のある表現なのか。

「光がどうなっているか」について考慮を払うだけで、「ああ、あの木陰のほうが良さそうだな」とか「自分が動いて光の向きを逆にしよう」とか、思いつくキッカケになります。

まずはその場の光がどうなっているかに考慮を払うことから始めてみましょう。

カメラポジション

次にカメラポジションです。

カメラポジションについてはまず、「自分が動く」という発想を知っている必要があります

そうです。

写真撮影は自分が動いていろんなカメラポジションを試してみていいのです。

何もその場にじっとしている必要はありません。

今いるその場からひとまず動いて、もっと良く見える位置がないかを「とりあえず」探してみることは、ひとつ推奨です。

さてカメラポジションとはつまり、「カメラ」の「位置」のことですね。

ここでは、カメラポジションの最も大きな要素となる、

  • カメラアングル
  • 撮影距離(被写体とカメラの距離)

の2点について説明します。

カメラアングル

カメラアングルは「ハイアングル」「ローアングル」と言うように、主にカメラの高さのことです。

ハイアングルから被写体を見下ろすように撮ると、大人が子どもを見下ろす目線になるので、可愛らしく「小さく」写ります。

逆にローアングルから被写体を見上げるように撮ると、子どもが大人を見上げる目線になるので、被写体に迫力や「大きさ」が加わります。

ハイアングル

特に女性モデルの宣材写真などで顔のアップを撮る場合、ハイアングルから撮ることが多いですね。

ポートレート ハイアングル

photo:amareta kelly

それは、目を大きく見せる、アゴのラインをシャープに見せるといった効果とともに、「偉そうに見えないように」という配慮もそこにはあります。

クライアントの目線の方を上に置いて、自らはへりくだるのです。

ローアングル

そしてアップの場合とは逆に、モデルの「全身写真」の場合はローアングルからが基本です。

それはアングルが高いと胴長短足に見えてしまうからです。

全身の場合はローアングルからのほうが脚が長く、小顔に見えます。

ポートレート 全身

photo:Wikimedia Commons

アングルによる物理的な効果

このアングルによる効果の理由は、レンズは近い物のほうが大きく遠い物のほうが小さく写る、という特性によるものです。

アップの場合、カメラ位置が高いと(ハイアングル)目の位置がレンズに近く、アゴの位置はレンズから遠くなります。

結果的に目は大きく、アゴは小ぶりに写ります。

そして全身の場合、カメラ位置が低いと(ローアングル)身体の下の方が大きく、上に行くほど小さく見えます。

結果的に胴は短く、顔は小顔になります。

また、子どもが大人を見上げる目線なので、「背が高い」という印象も受けます。

「何」を「どう」見せるかを、アングルによってコントロールできる、というわけですね。

アングルによる心理的な効果

さて、アップの写真で、クライアントの目線に対する配慮の話をしましたが、カメラアングルには、そういった「心理的」な効果もあります。

例えばファッション写真のジャンルでは、ハイファッションなど「高そうな」ブランドのビジュアルはローアングルが基本です。

それによって自らを高い位置に置き、文字通りその「ハイっぷり」(高さ・あこがれ)を印象付けているわけです。

逆にカジュアル衣料は基本的にアイレベル(目線と同じ高さ)です。

それは「あなたと同じ目線ですよ」ということをアピールしているわけです。

それによって「カジュアル感」(親しみ・同レベル)を演出し、その親しみやすさが「買いやすさ」につながるという仕組みです。

撮影距離

さて次に「撮影距離」について。

撮影距離とはすなわち、モデルを近くから見るのか遠くから見るのかという、その「距離」のことですね。

被写体はその見る位置の「遠近」によって見え方が違います

(その仕組みはこちらに詳しく書かれています↓)

広角レンズ、望遠レンズ。よく言われるその特徴に「パース」「圧縮効果」というものがあります。しかし実際は、「パース」「圧縮効果」といったものは、レンズの焦点距離とは無関係です。今回はそのあたりのカラクリを明らかにします。

そして、近い位置からだとモデルは大きく見えるし、遠くからだと小さく見えるので、カメラのフレーム内でモデルの寸法を適度に収めるためには、

  • 近くから撮る場合には、画角の広い広角レンズ
  • 遠くから撮る場合には、画角の狭い望遠レンズ

と、撮影距離によって画角を調整する必要があります。

ですから、広角レンズ、望遠レンズの、それぞれの写りの特徴を知っている必要もあります。

レンズはその特徴を理解することによって、それを生かした写真が撮れます。今回は広角レンズについて解説します。普段スマホで写真を撮っている方にはなじみ深いレンズですね。
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ここでは、カメラアングルの場合と同様に、「撮影距離」の違いによる物理的な効果と、心理的な効果について説明します。

撮影距離による物理的な効果

まずは、撮影距離が「短い場合」と「長い場合」では、物理的に写りがどう違うのかを見てみましょう。

撮影距離が短い場合

レンズは近い物のほうが大きく遠い物のほうが小さく写る、という特性がありましたね。

カメラがモデルに近づくということは、カメラから近い部分はより大きく、カメラから遠い部分はより小さく写る、ということです。

下の写真は、モデルのかなり下からかなり寄って撮っていますが、結果的にカメラに近い足が大きく、頭が小さく写ってます。

ポートレート 広角

photo:amareta kelly

モデルとの撮影距離を縮めるということは、カメラから近い部分と遠い部分の差が大きくなる、ということです。

それはつまり、プロポーションに歪みが生じる、ということです。

撮影距離が長い場合

そして、モデルから離れる場合は、「カメラ」と「モデルの各パーツ」との距離差がなくなってくる、ということです。

離れれば離れるほど、「カメラと足の距離」と「カメラと頭の距離」の差は無くなってきます。

例えば上の写真みたいに寄ったときに、カメラと足の距離は50cm、カメラと頭の距離は150cmとすると、その距離差は3倍です。

しかし、モデルから10mくらい離れると、カメラと足の距離は10m何cm、カメラと頭の距離も10m何cmとなって、ほとんど差は無くなります

これによって、歪みがなくなり、プロポーションに均整が保たれるのです。

ポートレート 望遠

photo:amareta kelly

つまり、ポートレートにおける撮影距離の選択(レンズの焦点距離の選択)は、ほとんどプロポーションの調整と言っていいでしょう。

これはどの距離が良い悪いではなく、この効果を表現にどう生かすのかという話です。

撮影距離とモデルとのコミュニケーションの関係

そして、撮影距離についてもうひとつ言っておかなければならないのは、モデルとのコミュニケーションの関係です。

撮影距離が長いと、当然ながら、モデルとのコミュニケーションは取りづらくなります。

表現意図からモデルにはささやき声で話しかけたい場合でも、距離が10mくらい離れていたらそれは不可能です。

モデルとのコミュニケーションは、作品作りの上で大きな影響がありますので、そういう意味も含めて、撮影距離を選択する必要があります。

写りの「ストック」を持っておくと便利

さて、「アングル」や「撮影距離」によって、物理的に写りがいろいろと変わるわけですが、どう変わるかについては、いろいろ試して、頭の中にストックを持っておくと良いでしょう。

そして、撮りたいと思った絵が、どの位置から何mmのレンズで撮ればいいかが、ある程度わかるようになっておくと便利でしょう。

撮影距離による心理的な効果

さて、被写体とカメラの距離にはもう1つ、「パーソナルスペース」という側面があります。

パーソナルスペースとは、対人関係において、相手がどこまで自分に近づくことを許すかと言うアレです。

モデルとカメラ(カメラマン)の関係も、言ってみればひとつの「対人関係」です。

モデルとカメラの距離が近いほど、写真は親密さを表現し、遠いほど疎遠であることを表します。

要するに、物理的な距離がそのまま心理的な距離を表している、ということです。

カメラアングルの高低がそのまま心理的な高低を表していたのと同じです。

パーソナルスペース

パーソナルスペース(wikipediaより)

写真の例で見てみましょう。

被写体との距離が遠いということは、「他人」という感じが強まり、客観性、分離感が強まるということです。↓

ポートレート 撮影距離遠い

photo:amareta kelly

被写体との距離が近いということは、「親密さ」が強まり、主観性、一体感が強まるということです。↓

ポートレート 撮影距離近い

photo:amareta kelly

上記2点は、同じようなアップのポートレートではありますが、「距離感」が違います。

上の写真は、遠くから望遠で撮ったような写真で、文字通り「遠くから見つめる」ような視点です。

それは「おーい!」と声をかけたくなるような距離感です。

あるいは、静かにまなざしを送る、というような見方です。

この距離感は「観察」という見方に近いでしょう。

そして下の写真は、比較的寄って撮った写真で、文字通りそばにいるかのような近さを感じます。

「ねえねえ」と気軽に声を掛けられそうな距離感です。

その感触はほとんど「見る」というよりも「触れる」に近いものがあります。

モデルとの「一体感」がより強いですね。

もちろんこれもどっちが良い悪いの話ではなく、この効果を表現にどう利用するのかしないのかという話です。

モデルとの撮影距離によって、文字通りモデルとの「距離感」をコントロールするというわけです。

まとめ

さて、それでは今回のまとめに入りましょう。

今回は、ポートレートの合理的な面に的を絞って、ポートレート撮影なるものを「把握する」ということを主眼に解説してきました。

あやふやで捉えどころのなかった「ポートレート」なるものを、捉えどころのあるものに変更しよう、というわけです。

実にポートレート撮影が、説明可能な客観的かつ分析的な要素によって成り立っていることがご理解いただけたかと思います。

ポートレート撮影は、そういったブツ撮りのような合理性がベースにあり、雰囲気やニュアンスを含めたあらゆる表現は、その上に成り立つものです。

そして今回はこの「合理性」という観点から、ポートレート撮影における要素を3つに絞って解説しました。

  • ポーズ
  • ライティング
  • カメラポジション

個別の要素について要点をまとめておきましょう。

ポーズについて

モデルはポートレートにおける、共同制作者のひとり。

ポートレート作品は、モデルの表現とカメラマンの表現を足したもの(あるいは掛け合わせたもの)であり、片方だけでは成り立たない。

カメラマンはカメラのテクニックだけでなく、モデルが最大限のパフォーマンスを発揮できるように場を作ることが重要。

ポージングについては、カッチリ形を作りこむのか、ノリ重視でいくのか等、しっかり方向性を共有することが重要。

どのような方向性でいくにしても、モデルの表現の波を見極めて、そのピークでシャッターを切るという集中力が必要。

形の指示は具体的に。(数字などを入れるのもグッド)

ノリや雰囲気は「指示」ではなく「伝える」。

その作品はそのモデルに表現可能かどうかをよく見極める。

ライティングについて

光の方向に注意を払いましょう。

光のに注意を払いましょう。

光がモデルを「どう見せるか」について、注意を払いましょう。

光と表現がマッチしているかどうかを判断しましょう。

光のために、自分が動いてもいいですし、撮る場所を変えてもOK。

カメラポジションについて

2次元の写真は、そこから見えたものが全て。

どこから見るのがベストかを、自分が動いて探ってみよう。

カメラアングル」の「物理的な効果」と「心理的な効果」を理解しておこう。

撮影距離」の「物理的な効果」と「心理的な効果」を理解しておこう。

最終的にポートレート撮影とは

さて、今回の記事では、「どう撮れ」とは特に言っていません。

ポートレートを構成する要素について解説しただけです。

ハウツーものではよく「ポートレートはこう撮れ」とか、「こう撮るのがベスト」と、決めてかかるものが多いですが、それはつまり、読者の「どう撮るか決めて欲しい」という需要の裏返しです。

どう撮るのか事細かに決めてもらいたい、自分は何も考えなくていいのが楽チンでいいという、読者の潜在的な需要を汲み取っているわけです。

しかしやっぱり、どう撮るかを決めるのはあなたです

なぜなら、どう撮るかまでを決められてしまったら、あなたが撮る意味がないからです。

ポートレートの「キモ」は、言うまでもなく「どう撮るか」というビジョンです。

上手い下手というよりも、個人に固有のビジョンこそが、その写真の真価です。

今回の記事は、そのビジョンを体現するために利用できる「ツール」を提供したわけです。

あなたらしいビジョンのために、ぜひ活用してください。

ポートレート撮影の基本的心構え

ポートレート撮影は、「なんとなく撮る」のではなく、自分が今何をやっているのかを理解しながら進めていくのが基本です。

ハッキリと理解できる小さな部分を一つひとつ意識しながら撮ってみましょう。

そして、撮ったら忘れずにその効果を確認してみましょう。

自分がコントロールした要素が、実際はどう写ったか、どう見えたか。

それを繰り返すことによって、ポートレートは上手くなっていきます。

ポートレート撮影の最終的目標

そして最終的には、考えるまでもなく反応できるようになるといいですね。

実際、相手がいるポートレート撮影において、いちいち考え込んでいるヒマはありません。

反応できるようになってからが、初めて本当のポートレート撮影の始まりです。

長い道のりかもしれませんが、日本語を使いこなせて初めて他人とコミュニケーションできるのと同じことです。

日本語の用法についていちいち考え込んでいたら、会話が成り立ちません。

そうです、「対人撮影」であるポートレートは、一種のコミュニケーションです。

「飲み会で思いがけず盛り上がった」

みたいなセレンディピティが起こり得るのも、ポートレートならではの醍醐味です。

「人対人」ならではの難しさと面白さ。

ポートレートに首を突っ込むということは、撮影の最も奥深いジャンルに首を突っ込む、ということです。

私にとって最も難しいのはポートレートを撮影することだ。被写体のシャツと皮膚の間にカメラをおかなければいけない…。

アンリ・カルティエ=ブレッソン

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記事を書いている人

上原京平

職業カメラマン兼写真ライター。

「わからない写真」を「わかる写真」にするための記事を執筆中。
月間17万PVの写真ブログを運営しながら、noteにて写真講座も開始。

「わかる」からはじまる写真のおもしろさを、みなさんにお伝えしています。

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