以前、「写真写りが悪い?本当の理由はコレ」という記事で、写真写りの仕組みについて解明しましたが、今回は写真写りを良くするための具体的な方法を探ってみたいと思います。
写真写りには、実際のキレイさやカッコよさはあんまり関係ないところがあり、実に不思議ですが、「写真写り」を商売にしているモデル達は、どのように写真に撮られているのでしょうか。
例えば八百屋さんが、売り物である野菜に関して無知ではありえないように、モデルも自らの写真写りについて無知であるはずがありません。日々、写真写りに関する研究を重ねているはずです。
そして、うまいモデルたちに共通しているのは、写真写りが抜群に良い、ということです。
それはもう、写真と実物のキャップに軽いショックを覚えるほど、です。
もちろんヘアメイクやスタイリング、写真のうまさなどの要素もあるでしょうが、「実物」はわりと普通な場合も多い彼ら彼女らが、カメラの前で豹変するのにはワケがあるはず。
そのあたりをヒントに、写真写り改善の方法を探ってみましょう。
目次
写真写りは「テクニック」である
まずはじめに、モデルから見ると、写真写りは「テクニック」です。
あらゆる職業は何らかのテクニックによって成り立っています。
営業職なら買ってもらうための話術のテクニック、カメラマンならライティングや構図のテクニック、八百屋や魚屋さんなら、新鮮な食材を見分けるテクニックなど。
一般的な事務職でも、効率の良いエクセルの入力方法や、書類整理のちょっとしたコツなど、細かいテクニックを駆使しながら、日々業務に励んでいるはずです。
同じようにモデルは、どのように写真に撮られるかのテクニックを駆使しながら、日々の業務に励んでいるわけです。
それはつまり、その会社に就職したならばその会社のやり方を学ぶように、写真の撮られ方も習得することが可能ということです。
もちろん、職業に向き不向きがあるように、誰でもモデルに向いているわけではありませんが、一つのテクニックとして、「写真写り」を身につけることは可能です。
写真写りを良くするための前提
写真写りを良くしていくための前提として、まずは、自分を客観的に見ることができなくてはいけません。
モデルは自分自身が商品です。
八百屋さんが野菜を品定めするように、どこが良くてどこが良くないか、自分自身を客観的に品定めする目線が必要です。
ここがまず第一のハードルになります。
なぜなら、プライベートでも常に一緒の自分の身体を、切り離して考えることが非常に困難だからです。
自分の身体を他人のように見ることが困難なのです。
たとえば、容姿に自信の無い人が、鏡を見てため息をついていたとします。
そんな人が、自分と同じような容姿の他人を見てため息をつきますか?
自分であるからため息をつき、他人であるからため息をつかない。
これはすなわち、自分を客観視できていない証拠です。
自分の容姿に関する感想はとりあえず脇へ置いといて、今ある素材で何ができるかを考えるのがプロフェッショナルとしての視点です。
写真写りの「核」となるものは何か
ものごとは、「核」となるものを、まず最初に把握してしまうことが、習得のための早道です。
写真写りにおいて、「あごを引く」とか「身体を斜めに」とか「楽しいことを思い浮かべる」といったことは、「核」ではなく「周辺」です。小ネタであって本質ではありません。
では、写真写りの「核」は何か。
それは「プレゼンス」です。身につけるべき力という意味では「プレゼンス力」です。
一流の役者が、圧倒的な表現力で観る人を引き込むアレです。
アレをスチールカメラの前で発揮することです。
良い写真写りに必要なコト
そんなプレゼンス力はどうやって身につければいいのか。
まずは、発揮すべき表現、つまり、最終的なゴールを明確に知っていなくてはいけません。
たとえば役者なら、その役になりきることがゴールです。
スチールカメラのモデルの場合も、ただ服を着て突っ立っていればいいわけではなく、何かしらの表現を求められます。
それはいちいち指示されない場合も多いですが、雑誌であればその傾向に沿った表現、何かポートレートであれば、その場のシチュエーションにふさわしい表現など、何かしらの「ゴール」があるわけです。
「どうしたらいいかわからない」状態で撮られても、良い写真にはなりません。
だいたい写真写りの悪い人って「変に写ったらどうしよう」とか「なんか緊張する」といった、目指すべきゴールとは全然関係の無いことに心を占められています。
人間は二つのことを同時に考えることはできません。
目指すべきゴールだけに完全に心を奪われることによって、良い写真写りは完成するのです。
ゴールの設定
さてそれでは、どのようにしてゴールを設定すればよいか。
役者であれば「君は豊臣秀吉、あなたはお市の方」と決められてしまうので簡単ですが、写真の場合はそんなに具体的には決まりません。
どちらかといえば「ムード」や「雰囲気」のような捕らえがたいものの場合が多いでしょう。
しかし、具体的に設定してしまうことも分かりやすくて有効です。
マリリン・モンローでもマイケル・ジャクソンでもいいですが、なりきることができれば、それはそれでひとつのパワーを持つでしょう。
なにかこうなりたい、あの人みたいになりたいという具体的な目標があれば、なりきってみるのもひとつの手です。
何はともあれ、「こういう感じ」という最終的な完成形を明確に意識し、それに対して身も心も捧げ尽くしてください。余計な考えが頭に浮かぶスキも無いくらいに。
「恥ずかしい」などと思っていては、きっちり「恥ずかしい」が写ります。
そして「恥ずかしい」と思いながら「恥ずかしくない」と思うことは不可能です。
「恥ずかしい」と思うのはつまり、「自分の思い」と「自分の身体」がくっつきすぎているからです。
「他人の身体」であれば、恥ずかしいと思うこともありません。
あなたの身体は他人の身体と何ら変わるところはありません。あなたの身体は他人の身体です。
他人の身体を扱うように自分の身体を扱うこと、くっつきすぎている「自分の思い」と「自分の身体」をまず切り離すことが、うまくやるためのコツです。
フィードバックを得ること
そして、完成した写真をもとに、至らない点を改善することもまた、大切なステップです。
ビジネスでは「PDCAサイクル」というものがあります。
- Plan:計画を立てる
- Do:実行する
- Check:評価する
- Action:改善する
この4つのサイクルをくるくると回しながら、日々業務を前進させていくわけですが、同じことが写真写りにも言えます。
そうです、写真写りを「業務」と考えてしまいましょう。
写真写りは超個人的な、超感情的な話だと思われがちですが、写真写りの改善を一種の「業務上のプロジェクト」にしてしまうのです。
個人的・感情的なままでは、物事は前に進みにくいからです。
普段の仕事でエクセルの一マスごとにニックネームをつけてかわいがっていたりすると、仕事はちっとも進みません。
好き嫌いやカワイイ・ブサイクではなく、客観的かつ理性的に行うほうが、物事はより前に進みます。
逆に言うと、それくらいの心構えでやらないと、本当の改善は難しいかもしれません。
写真写りは小手先のテクニックどうこうでは無いことは、以前書いた通りです。
大事なポイントとまとめ
さて、写真写りについていろいろと見ましたが、一番大事なことはなんでしょうか。
それは、自分の写真写りに客観的になることです。
ヘンに写った自分をみて、「うわ~イヤだ~」で終わってしまっては、何の進歩もありません。
何がイヤなのか、どこが変なのか、客観的に分析し、どうすれば改善できるのかを具体的に計画し、実際の写真撮影で実行し、またその写りをチェックする。
当たり前すぎるけど、言われてみたらそれしかありませんし、それだけが確実な方法です。
なにか魔法の呪文があって、それを唱えたら嘘みたいにキレイに写るといった、夢みたいな話はありません。
白馬に乗った王子様はのこのことやって来ないのです。こっちからつかまえに行かなくてはいけません。
そして具体的な行動を起こす際に重要なのは、自分の写真写りを他人視できる客観性です。
ここが写真写りを改善できるかどうかの分かれ目と言っていいでしょう。
写真写りは業務だ!
写真写りはテクニックであり習得可能です。
その際は、写真写りを業務としてこなすとスムーズでしょう。感情は脇へ置いておくのです。
業務と考えて、普段やっている仕事のようなノリでPDCAサイクルを回すことが、一つのコツです。
もちろん、マズい写りを見て、「ぜひとも改善したい!」と奮発する材料にするのは大いに結構ですし、良くなった写真をみて「ヤッター!」と喜ぶのも忘れてはいけません。
究極の方法
何はともあれ、写真写りを改善できない人は、「写真写り」と「自分の感情」があまりにもくっつきすぎているのです。
写真写りが良い人の中には、意外と自分の写真写りなんてどうでもいいと思っている人も少なくないはずです。
逆説的ですが、だからこそ写真写りが良いということもあります。
写真写りに対する余裕が、写真写りを良くしているのです。
写真写りのことなんてきれいサッパリ忘れてしまうことができれば、それがもっとも根本的な写真写りの改善方法かもしれません。