「広角レンズ」は、基本的にスマホやコンパクトデジカメで使われているレンズなので、みなさんも無意識に使っていることでしょう。
そうです、極端な広角ではなく普通の広角であれば、ほとんど「無意識」に写真は撮れるのです。
しかしそれでは、「ただ撮った」に終わってしまうことも事実。
レンズにはそれぞれ特徴があり、それに見合った使い方をすることによって、より魅力的な写真を撮ることができます。
今回は広角レンズについてです。
広角ならではの特徴を理解し、それをどのように写真に生かしていくのかを見ていきましょう。
ちなみに望遠レンズの使い方についてはこちらをご参照ください。
目次
広角レンズの特徴
広角レンズとは、35mm(フルサイズ)換算でだいたい焦点距離35mm以下のレンズです。
さらに24mm以下を超広角レンズと言ったりします。
それではまず、広角レンズの特徴を挙げてみましょう。
- 写る範囲が広い(画角が広い)
- 手前ものはより大きく、遠くのものはより小さく写る(遠近感が強調される)
- ピントの合う範囲が広い(被写界深度が深い)
写る範囲が広い(画角が広い)
写る範囲が広い。これは分かりやすい特徴ですね。
広角レンズが難しいと言われる理由に、「写る範囲が広くて余計なものが写り込んでしまう」ということが言われます。
「広い画角」をどのように捉えるかが、広角レンズ使いこなしのひとつのポイントと言えるでしょう。
手前ものはより大きく、遠くのものはより小さく写る(遠近感が強調される)
広角レンズで撮った場所の写真を見た後に、実際に現地におもむいてみると意外と狭い…という経験はありませんか?
これは、広角レンズの、手前ものはより大きく、遠くのものはより小さく写るという特徴によるマジックです。
手前と奥のギャップが強調されるということは、手前のものが実際より近くに感じられ、遠くのものが実際より遠くに感じられること。
つまり、奥行きがすご~くあるように見えてしまうのです。
例を見ましょう。
こちらは焦点距離85mmの写真です。中望遠ですね。
そして同じ場所の28mmの写真です。一気にスペースが広がりました。
そして、手前の木と奥の木の大きさの差がずいぶん大きく感じられます。
また、85mmと比べると、奥の木や石灯籠がずいぶん遠く、小さくなりました。
これが広角レンズの、手前のものがより大きく写り、遠くのものほどより小さく写るという特徴です。
ピントの合う範囲が広い(被写界深度が深い)
ピントの合う範囲のことを「被写界深度」とも言います。
そして、ピントの合う範囲が「広い」ことを、被写界深度が「深い」とも言います。
広角レンズの特徴として、この被写界深度が「深い」ことも挙げられます。
要は「ボケにくい」ということですね。
これはもうレンズの特徴なので、この特徴を積極的に利用した絵作りを考慮する必要があります。
逆にボカしたい場合は望遠レンズのほうが便利です。
望遠レンズとの比較
さてみなさん、お気づきかもしれませんが、広角レンズと望遠レンズは、その特徴が正反対です。
広角レンズ | 望遠レンズ | |
画角 | 広い | 狭い |
遠近感 | 強調される | 希薄になる |
被写界深度 | 深い | 浅い |
こうしてみると非常にわかりやすいですね。
それぞれのレンズに合った使い方をしていきましょう。
広角レンズの使い方
それでは、広角レンズの特徴をうまく絵作りに反映させるコツを見ていきましょう。
道具というものは「特徴を生かす」ということが大事です。
画面の広さを生かす
まず、写る範囲が広いわけですから、その広さをそのまま利用し、「広がりのある」写真を撮ることが素直な使い方です。
下がれる範囲に限界がある室内でも、広角レンズであれば、より広い範囲を写すことができます。
標準や望遠では、物理的に撮れない写真が、広角なら撮れる。
これだけでも大きなアドバンテージですね。
広角レンズは「広い角度を写すレンズ」ですから、まずシンプルに「広く写す」のが特徴に沿った使い方です。
遠近感を強調する
そして、「手前と奥のギャップが強調される」という特徴を生かすならば、奥行きがある場面で、手前のモノをより近くに配置してみましょう。
要素の大小の差を、デザイン用語で「ジャンプ率」と言ったりしますが、この差が大きくなるほど「躍動感」や「快活さ」を表現できます。
上の写真ですと、遠景の木や山にくらべて、馬がギョッとするほど大きいので、馬の躍動感がさらに強調されています。
このように広角レンズは、手前と奥のジャンプ率を高める効果があるので、「ダイナミックな写真」「躍動感のある写真」「快活さの表現」に活用できます。
パースをつけてみる
パースとは「パースペクティブ」の略で、「遠近法」などと訳されますが、広角レンズ=パース、と言われるくらい、広角レンズとは切っても切れない縁があります。
これも、広角レンズの「遠近感が強調される」という特徴を利用したものですが、「パースをつける」という場合は特に、手前から奥まで連続した線を画面内に入れる、という意味で使われることが多いです。
シューーーっと収束していく感じが、より強調されます。
街並みや通路などの「長さ」がより強調されます。
パンフォーカスで撮る
「パンフォーカス」とは、画面の手前から奥まで、全面にピントが合っている状態です。
全面にピントを合わせることによって、クッキリとした、詳細なディテールの写真が得られます。
photo:skitter photo
広角はレンズの特徴として、そもそもピントの合う範囲が広いので、自然とパンフォーカスになりやすいのです。
ちなみに、ピントの合う範囲(被写界深度)を決定する要素は、次の3つです。
- レンズの焦点距離
- 絞り値
- 撮影距離(ピントを合わせる位置)
その関係は以下の通りです。
ピントの合う範囲広い | ピントの合う範囲狭い | |
レンズの焦点距離 | 広角(24mmとか) | 望遠(100mmとか) |
絞り値 | 大きい(F16とか) | 小さい(F1.4とか) |
撮影距離 | 遠い | 近い |
こうしてみると、パンフォーカスを得るための要素は、
- 広角レンズで
- 絞りを絞って
- ピント位置を遠くに置く
ということが理解できますね。
しかしここで注意が必要です。
撮影距離については、ピント位置は遠いほうがいいということでしたが、遠すぎる位置に合わせると、今度は手前にピントが合わなくなってしまいます。
ピントというものは、合わせた位置だけでなく、その前後にもピントが「合って見える」範囲があります。
最初にも出てきた「被写界深度」とは、つまりソレのことです。
そして、パンフォーカスとは、この被写界深度を、なるべく手前から無限遠に敷く、ということです。
その被写界深度は、ピントを合わせた位置を起点にすると、手前よりも奥の方が深い、という特徴があります。
たとえば、28mmのレンズで、絞りがF8だとすると、だいたいカメラから3mの位置にピントを合わせておけば、ピントが「合って見える範囲」は手前1.5mから奥は無限遠になります。
ピントを合わせた3mを起点にすると、被写界深度は、手前が「1.5m~3m」。奥が「3m~∞」。
奥の方が断然深いですね。
ですから、ピント位置は、むやみやたらに遠くに置くのではなく、むしろ数メートルと近めに置くのがコツです。
というわけでざっくりまとめると、28mm以下でF8以上に絞って、ピントを3メートルくらいに合わせると、だいたいパンフォーカスが得られるでしょう。
まとめ
さて広角レンズの使い方、いかがでしたでしょうか。
レンズの特徴を理解して、それを生かすのが写真撮影上達の秘訣です。
それではもう一度、広角レンズの特徴をまとめておきましょう。
- 写る範囲が広い(画角が広い)
- 手前ものはより大きく、遠くのものはより小さく写る(遠近感が強調される)
- ピントの合う範囲が広い
そして、それを生かした絵作りとして、以下をご紹介しました。
- 広がりのある写真(写る範囲の広さをそのまま生かす)
- 遠近感を強調したダイナミックな写真(手前と奥のギャップを利用する)
- パースをつけてみる(手前から奥までの連続した線を入れてみる)
- パンフォーカスで撮る(画面全面にピントを合わせ、詳細なディテールを得る)
これらの、「広角らしい」特徴をふまえると、今度はF値の小さい大口径広角レンズで、「広角でありながらボケのある写真」などの変化球も楽しめます。
まず今回の記事で基本を押さえて、自分らしい広角レンズの撮り方にもぜひチャレンジしてみてください!