今回は、ライカM4購入に学ぶ、クラシックカメラの賢い買い方です。
ライカM4というカメラを買ってみて、気付いた点や学んだ点を共有したいと思います。
ライカM4は、今から50年以上前に発売された、まあクラシックカメラの範疇に入るようなカメラです。
今のカメラのように、機能重視で買うわけではありません。
そこで気にするべきことは何なのか、といったことをお話します。
やはり、経験から得るものは大きいです。
ネットや他人の情報と、実際に経験してみることは、雲泥の差です。
今回はM4という機種が気になっている方の参考になると思いますし、クラシックカメラ全般に興味を持たれた方の参考にもなると思います。
目次
ライカM4、購入のいきさつ
筆者はそもそも、ライカはM6を気に入って使っていたのですが、ふと、電池を使わない完全メカニカルなライカに興味をもちました。(M6には電気を使う露出計が入っています)
電子基板のない、完全に「機械」だけのカメラって、なんか良くないですか?
この先、孫の代まで伝えていけるカメラ、「代々ウチの写真を撮ってきたんだよ」っていうカメラ、おじいちゃんから譲り受けたカメラ。
そんなふうに「ずっと家に伝わっていくカメラ」というものを考えたとき、完全機械式のライカこそがそれにふさわしいんじゃないかと妄想したわけです。(相変わらずの妄想癖!笑)
機械式なら適切にメンテナンスをすれば、かなりの長期間使えると言いますし。
完全機械式ライカの選択肢
で、完全機械式ライカの選択肢としては、
- M3(M2)
- M4
- M-A
になります。
(各機種の詳細は以下↓)
M3
まずM3は、35mm以下のファインダーフレームが無いので、ちと使いづらいだろうと。
フィルムの装填も大変そうだし。
M3は実際の使用には少し古過ぎる「骨董品」というイメージです。
M-A
最新型のM-Aは、逆に新しすぎるイメージです。
フォントも近未来的だし。
何より60万はちょっと高すぎる(笑)
M4
というわけでM4です。
完全機械式であり、なおかつ使いやすそうなカメラ。
50年前の発売というクラシカルな雰囲気を漂わせつつ、タイムレスなデザインという、まあほぼこれしかないよねという選択肢です。
というか消去法からいっても、これしかありませんでしたが。(笑)
ライカM4の特徴
ライカM4は、M型ライカの最初の機種であるM3(とそのバリエーションであるM2やM1)の次に出た機種です。
発売されたのは1967年(昭和42年)。
今から50年以上前です。
M4は、最初の機種であるM3から改良点を取り入れ、使いやすさが向上し、またモダンなデザインにリニューアルされ、その後に続くM型ライカのデザインの原型にもなっています。
ライカM4は、古き良きライカらしさと実用性がうまくバランスした機種であり、そういう意味で、M4をライカの頂点とする向きも少なくありません。
前回の各機種の特徴でも書きましたが、改めてライカM4の特徴を見てみましょう。
ファインダー
まず、ファインダーに表示されるブライトフレームは、
- 35mm
- 50mm
- 90mm
- 135mm
の4種類を備えています。
ライカのようなレンジファインダーカメラでは広角のほうを使いたいので、35mmがあるのはありがたいです。
それに、使用頻度の高い50mmで余計なフレームが出ないのもいいですね。(M6だと50mmと一緒に75mmの枠も出る)
巻き戻し方式
フィルムの巻き戻しは、M3などの「ノブ式」ではなく、素早く巻き戻すことができる「クランク式」です。
実用的にはこちらのほうがありがたいですね。
フィルム装填方式
フィルムの装填は、M3までのスプールに巻きつける方式ではなく、「ラピッドローディングシステム」という、素早く装填できる方式です。
M3からM4への移行には、おそらく実際の使用から導き出されたであろう改良点が盛り込まれています。
フィルム装填方式しかり、巻き戻し方式しかり、35mmフレームしかりです。
M3を使って感じた、欲しいと思う改良点を加え、なおかつデザインをモダンにリニューアルしたカメラが、ライカM4という印象です。
実際、M4以降の機種は、M4のバリエーションというふうにも見て取れます。(M5は例外ですが)
形もほとんど一緒です。
M4に露出計を足したのがM6、AEを足したのがM7。
大雑把に言えばそんな印象です。
やはりM4は、ライカの一つの「完成形」と言えるでしょう。
セルフタイマー
何気に便利なのが、このセルフタイマーです。
特に家で使うカメラ、家族写真を撮るようなカメラですと、やはり全員が入りたい場面もあるものです。
そんなときにこのセルフタイマーがあると、重宝します。
まあ、無きゃ無いでいいですけど、あると意外と便利なのが、セルフタイマーです。
ライカM4、実際の使用感
さてそれでは、そんなライカM4を実際に使ってみた使用感などをお伝えしていきたいと思います。
今回の記事で最も言いたいのはココです。
ライカM4、いろいろな妄想なども入り混じり購入に至ったわけですが、果たして実際に使用してみてどうだったのでしょうか。
まず感じたのは「古い」という印象です。
「50年前のカメラなんだから当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、画像やスペックだけで知るカメラと、実際に使ってみるカメラでは、その印象は全然異なります。
M4は見た目M6に近く、スペック上も大して変わらない印象を受けます。
しかし、実際に使ってみると、全然違うのです。
何が?
それはフィーリングです。
カメラにおける目に見えないスペック。
それはすなわちフィーリングです。
ウマが合うとか合わないとかも言いますね。
M4を使ってみて感じたこと。
それは「古い」という一言に尽きます。
なにしろ昭和42年産。
筆者が生まれる前のカメラですから。
オールドレンズとの比較
その感じは、いわゆる「オールドレンズ」に近いものがあります。
オールドレンズは、レンズの設計や素材の吟味が、今と比べて未成熟だった頃の製品で、今の目からすると性能的に劣る製品群です。
しかし、その性能的に劣る部分に対して「味」という解釈がなされ、積極的にその劣る性能を楽しむ楽しみ方もあるのです。
クラシックカメラの楽しみも、その楽しみ方に近いものがあるでしょう。
積極的にその「古さ」を楽しむのです。
ライカM4も、範疇で言えば最後のクラシックカメラです。
露出計が組み込まれる前の、最後のフルメカニカルの機種です。
その感触は、いわゆるオールドレンズに近いものがあります。
そして巷の評判では、M4までがライカが順調だった頃の感触のいいライカで、それ以降経営が傾いてからはコストダウンの影響等で質が悪くなった、などと言われています。
「そぉかぁ?!?!」
というのが、筆者の偽らざる感想です。
M4とM6の比較
ここからは今まで使用していたM6との比較で見ていきます。
まず、ボディに貼ってある革の質感ですが、これは明らかにM6のほうがいいです。
M6は「リアルに革」という感じですが、M4は「型押ししたプラスチック」という印象です。
そして、巻き上げのなめらかさも、M6のほうが軽く、スムーズです。
シャッターの挙動や音は、M6のほうがタイトな印象です。
しっかりとコントロールされ、ピタッと治まっている印象です。
それに対してM4は、ややルーズな印象です。
ショックや残響が大きく、治まりきれていない印象です。金属的な残響も耳につきます。
ちょっと極端にいうと、シャッター音は、
- M6は「コトッ」
- M4は「シャキーン」
という感じです。まあちょっと大げさですが。(笑)
あと細かい話ですが、ファインダーのガラスの質感も、M4は「ただのガラス」という感じですが、M6のほうは何か質の高さを感じます。(コーティングの違い?)
トータルの印象として、
- M6=行き届いている、コントロールされてる、タイトにまとまっている
- M4=やや雑、まとまり切っていない、大雑把
という印象です。
つまり、
- M6=現代的
- M4=昔風
です。
まさしく1984年(昭和59年)発売のM6と、1967年(昭和42年)発売のM4の年代の差が、如実に表れています。
M4の時代
M4の頃の「昔」って、結構いろんなことが大雑把だったじゃないですか?テレビ番組とか商店街の売り方とか。
あるいは大阪万博とか田中角栄みたいな感じ?(わかりますかね?)
M4を使ってると、「ああ、わかるわかる。昔ってこうだったよね」という感慨が湧いてくるのです。
M4の「4」は、昭和40年代の「4」だと、その時理解しました。
(そしてM6の「6」は昭和60年代ね)
発売年度とカメラの感触の相関関係
一般的に、ネットなど巷の情報では、M6よりもM4のほうが感触がいいとされています。
でも、何をもって「感触がいい」とするかは、人それぞれです。
ハッキリ言って筆者の場合は、M6のほうが使っていて心地いいし、感触もいいと感じました。
つまり、「製造年代」と「感触の良し悪し」は全然一致しない、ということです。
総じて、M4のテイストはオールドレンズのそれに近く、M6は現代的なレンズのそれです。
かつて筆者はオールドレンズの写りを「ただのプアな写り」と一刀両断にしていますが、その筆者がテイストを同じくするM4に対していだく感想は推して知るべしです。
もちろんオールドレンズ愛好家も大勢いるわけですから、何をもって「よし」とするかは、全く人それぞれです。
つまり言いたいのは、
「カメラは使ってみないとわからない」
ということです。
かつてオールドレンズの記事を書いたのも、オールドレンズよさげと思って買ってみたら、自分には全然合わなかったという経験が元になっています。
今回は、完全機械式よさげと思って実際に使ってみたら、思わぬところで意外な発見をしたというわけです。
まあ今回は、感触を求めて買ったわけではないので、そこはいいのですが、巷で言われていることと実際の経験は全然違うということを、またしても知った次第です。
クラシックカメラにおける「製造年代」と「使用者の年齢」の相関関係
さて、そこで思ったのです。
ここからが今回の記事の重要な結論です。
クラシックカメラを買うとき、「自分が子どもの頃に出た機種」というのが、一つの選択の基準として成り立つのではないでしょうか。
自分が子どもの頃に生きた空気感、その同じ空気感の中で発売された機種。
それこそが、その人にとって、何かホッとするような馴染みのある機種になるのではないでしょうか。
クラシックカメラは懐古趣味とも言われますが、「懐古」つまり「古きを懐かしむ」とは、人の場合、子ども時代を懐かしむものです。
それより昔は知らない時代なので、懐かしみようがありません。
今回ライカM4を使ってみて「古っ!」って感じたのは、自分が生まれるより前に発売された機種だったからでしょう。
馴染みが無いのです。
波長が違うのです。
そして、ライカM6がウマが合うのは、自分が子どもの頃に発売された機種だからでしょう。
空気感が似通っているのです。
なんかホッとするというか。
で、思ったわけです。
M4について感触がいいと思うのは、その年代に子ども時代を過ごした人ではないでしょうか。
M4も、発売された昭和42年頃に子ども時代を過ごした人なら、ウマが合うのかもしれません。
そんなふうに、クラシックカメラを買うときは、「自分が子どもの頃の機種」をチョイスするというのが、一つの視点です。
「三つ子の魂百まで」とは言いますが、子どもの頃に馴染んだ空気感は、大人になっても根幹として生きているものです。
その頃の空気感を湛えたカメラなら、きっとあなたもハッピーになれることでしょう。
まとめ
ライカM4の購入顛末から、クラシックカメラ全般に至る壮大な妄想、お付き合いいただきありがとうございました。
「あーそいういうことかー、なるほどー」と個人的には非常に合点がいってしまったのですが、いかがでしたでしょうか。(笑)
ワインなんかでは、自分が生まれた年のワインを求める向きもありますが、カメラにおいても自分が育ったころのカメラを使ってみるのは一興かもしれません。
機能性とは全く無関係の部分で、何か相通じるものがあるかもしれません。
基本カメラは「機能」が命であり、機能を売りにして商売をしていますが、そういった一般的な視点とはまた違った視点で、「カメラそのもの」を楽しむのが、クラシックカメラの愉しみです。
何だかんだ言いましたが、ライカM4の「完全機械式」は、ただそれだけで何か気分が変わります。
感触云々とはまた別次元で、「メカだけ」のカメラを使う気分ってのは、それはそれで独特の味があります。
かようにカメラの楽しみってのは無限大ですね。
「写真を撮るための手段」ではなく、「カメラそれ自体が目的」という愉しみ方も、幅広い写真趣味の一翼であることは間違いありません。