ポートレートとは、「人」を「キレイに」撮る写真ですね。
しかし、「キレイに撮る」とはどういうことでしょうか?
結構漠然としていませんか?
写真を見て、「ああキレイだな」とか「なんかイマイチだな」とか感じることはできても、なぜそうなのかを具体的に指摘することは、なかなか難しかったりします。
しかし逆に、そこをきちんと指摘できれば、撮る時にもキチンと撮ることができます。
ポートレートの撮り方は、個人の好みという部分も確かにありますが、好みに左右されない原理原則も確かにあります。
そこを利用することによって、誰にでもキレイなポートレートは撮影可能です。
毎回なんとなく撮っていて、良いんだか悪いんだかよくわからない、という人は、今回の記事をぜひ参考にしてみてください。
目次
人の顔の美しさとは
美人、不細工、男前。
人の顔にはいろいろな形容詞がつきますね。
しかし好みは別として、、美人・イケメンに関して、大体みんなの意見が一致するのって不思議じゃありませんか?
「ねぇねぇ、隣のクラスの~君ってイケメンじゃない?」
「まあ好みじゃないけど確かにそうね」
そんな会話はそこかしこで聞かれますね。
そして、真田広之は誰が見ても男前でありますし、松嶋菜々子は誰が見ても美人であります。(たぶん)
そんな好みを超えた美醜はどこからやってくるのか。
メイクから探る美人の基準
メイクって何のためにするのかというと、キレイになるためですよね。
そしてそのメイクアップの基本は、バランスをとることです。
短いほうの眉を書き足したり、ほおが膨らみすぎているならシェードを足したり。
出すぎているところを引っ込め、足りないところを補う、それが基本です。
そう考えると、美しさとはバランスのよさ、と言い換えることもできます。
確かに美人やイケメンには、バランスのよさがあります。
各パーツの収まりのよさ、見て気持ちのいい馴染みのよさがあり、変に引っかかるところがないという点で共通しています。
それは個人の好き嫌いというよりも、むしろ 生理的なものです。
人間という生き物のスペック上、誰が見てもそう感じるという、基本的な特徴のひとつ、と言えます。
そこをポートレート撮影にも応用してみましょう。
写真上に再現する顔のバランス
そんなわけで、ポートレートを撮る際に気をつけること。
それは、写真上で顔のバランスを取ること、と言えます。
では、写真で人の顔のバランスを取るとは、いったいどういう可能性が考えられるでしょうか。
アングルによるバランス
まず考えられるのは、その顔をみる「角度」です。
写真は一個のレンズを通して撮るものですから、写真に撮る場合、顔を見る角度はひとつです。
右から見るのか、左から見るのか、はたまた正面から見るのか。
角度よって人の顔の印象は結構変わります。
メイクアップした顔を専門に撮る、ビューティー写真の大御所の先生は、右なら右、左なら左と決めたら、その角度に対してセットを組み、その逆は決して撮らない とおっしゃっていました。
それくらい顔のアングルは重要なポイントで、ベストな写真を撮ろうとしているのに、マズいほうの角度から撮ってもしょうがないじゃん、というわけです。
では、どの点に着目してアングルを決めればよいのか。
今回の話で言えば、それはもちろん バランスです。
人間の顔は、左右対称なようでいて、意外と不均等なのは、ご存知の通りです。
目の大きさ、眉の位置、鼻の向き、口角の角度など、意外と左右で不揃いです。
そんなわけで正面から見ると、その不均等さが目立ちます。
左右どちらかに角度をつけたほうが、バランスが取りやすいでしょう。
その際、手前が大きく、奥が小さく見えるという「遠近感」の特徴を利用します。
例えば、目の大きさが違う場合は、手前に小さいほうの目を、奥に大きいほうの目を配置すると、大きさが揃ってバランスが取れます。
同じ原理で、顔のパーツが密集しているほうを手前、散開しているほうを奥にするとバランスが取れます。
遠近感は、奥にいくほど小さく収束し、手前のほうが大きく散開して見えるからです。
口角なら上がっているほうを手前にし、眉なら下がっているほうを手前にするといった具合です。
また、髪の分け目を手前にするのか奥にするのかによっても、顔の見え方もずいぶん変わります。
顔のフォルム自体も違って見えますし、顔にかかる髪の分量によって顔の面積の見え方をコントロールすることもできます。
といったように、アングルの決定にはいろいろな要素が関係し、全てを完璧に満たすアングルはないかもしれません。
そこがポートレート撮影の面白さでもあり、難しさでもあります。
最終的に、アングルの決定の際に重要なのは、やはりバランスです。
何か一か所の見え方にこだわりすぎて、全体のバランスを崩すことがないように注意する必要があります。
レンズの選択によるバランス
ポートレートに最適なレンズは、85mm近辺の中望遠レンズと言われています。
それは、主に以下の3点から説明されます。
- 顔に変なパースがつかないため、顔がゆがまない。
- 撮影者と被写体の距離が最適。
- 背景が適度にボケるので、被写体を背景から浮かび上がらせることができる。
被写体の顔のバランスを取るという意味では、やはり ゆがまないということが大事です。
ボックス型の証明写真機で撮ると、自分の顔とは思えないようなヘンな写りをすることがありますが、それは被写体とレンズが近いため、必然的に広角になり、顔がゆがむためですね。
では、望遠であればあるほどいいのかというと、望遠すぎると今度は「圧縮効果」という別なゆがみが発生します。
「遠近感がつきすぎる」のが広角方面のゆがみですが、「遠近感が希薄になる」のが、望遠方面のゆがみ、すなわち「圧縮効果」です。
また、望遠すぎると被写体との間の距離が長くなりすぎますし、レンズ自体も大きく重くなってくるので、取り回ししづらくなります。
昔は水着グラビアの撮影はサンニッパといって300mmF2.8のレンズがよく使われていましたが、あれは広~い南の島でのロケだから可能なことです。
そんなわけで一般に言われている85mm近辺の中望遠レンズは、やっぱりポートレートには最適なレンズ、と言えますね。
ライティングによるバランス
さて次に、光の当て方(ライティング)についてみていきましょう。
光の質や、当てる方向によっても、バランスを取ることができます。
光の質について
光の質とは、例えば直射日光はその名の通り、「光源からの直の光」です。
その性質は、影がくっきりとでて、光の当たっている部分と当たっていない部分の輝度差が激しい、というものです。
形容すると「硬い」と言えます。
逆に柔らかい光とは、日陰や曇りの日の光です。
直射日光のような「直の」光ではなく、反射光であったり、雲でデフューズ(拡散)された光です。
その特徴は、影がくっきりとせず、全体に光が回った感じです。
まず、直射光のような硬い光は、お肌のデコボコを強調してしまうのと、当たっている所と当たっていない所の差が激しいので、ポートレートではあまり使われません。
ポートレートでは、柔らかい光をコントロールして使うのが基本になります。
しかし、直射光は発色が良いという特徴がありますので、モデルの顔色が悪い場合には有効だったりします。
また、柔らかすぎる光も顔がのっぺりとして立体感がつきにくくなりますので、結局そこはやはりバランスという話になります。
適度に立体感もつき、適度に発色も良くなるように光質をコントロールする必要があります。
また、お肌の質感がマットなら多少硬めの光、反射率の高いテカテカのお肌なら柔らかい光というように、肌質に対して光質でバランスを取ることもできます。
ちなみに光のコントロールとは、スタジオなら問題ないでしょうが、ロケーションならむしろ、「シチュエーションを選ぶ」という発想になります。
そういう光の場所にこっちから移動して撮る、ということです。
そこにレフ板やストロボなどを追加したり、白い壁があれば近づいたり離れたりして、自分たちが動く、ということがすなわち「ライティング」になります。
光の方向について
次に、光の方向について。
まず、光が当たっている面積によって、顔の幅の見え方をコントロールすることができます。
顔の幅の細い人に対しては当てる面積を広く、顔の幅の広い人に対しては当てる面積を狭くして、バランスを取ることができます。
もちろん、光を動かすことができない屋外等の場合は、モデルの立ち位置や顔の向きで光の当たり方を調整します。
そして、光は当たっている部分は目立ち、陰になっている部分は目立たないという特徴があります。当たり前ですが。
ですから、光の方向をつける場合は、目立たせたい方向から当て、目立たせたくない方向を陰にするのが基本です。
例えば、目の大きさのバランスを取るために、大きいほうを奥に小さいほうを手前にしたとしましょう。
しかし、魅力的なのが大きいほうの目であれば、そちらの方向から光を当てる、といった具合です。
そして、顔のアングルと同じく、光の方向についてもやはり、トータルのバランスです。
目を魅力的に見せることができても、全体の印象が暗くなってしまう等、全てがうまくいくライティングというのも、なかなか難しいものです。
ここもやはり、一か所にこだわるのではなく、全体のバランスをみて決めるのがうまくいくコツです。
ポートレートにおけるバランスとは
さて今回は、「バランス」という面からみたポートレート撮影のお話ですが、バランスとは文字どおり バランスです。
顔のアングルの決定や、ライティングについて、かなり個別の話もしましたが、バランスとは、何か一か所にこだわることではありません。
各個別の事情のバランスをとりつつ、最終的には全体的にバランスを取ることが大事です。
まるで経営者や船長のような全体を見渡す視点が大事、ということですね。
顔のパーツのひとつだけの見え方や、光の具合だけにこだわって、全体のバランスを崩すことがないように注意が必要です。
写真はやはり、パッと見の 全体の印象で決まるものです。
個別の対応がうまくいっても、全体の印象がイマイチであれば、やはり最終的にいい写真にはなりにくいでしょう。
まとめ
さて今回は、ポートレートにも具体的かつ合理的な撮り方があるということをご紹介しました。
ポートレートってなんとなくセンスや雰囲気といった「フィーリング」的な部分が大事なのかな~って思われていたかもしれませんが、「バランスを取る」という発想によって、意外と「合理的」にも撮ることができます。
美しい写真には、それを成り立たせている「根拠」があるわけです。
その根拠に目を向けることによって、ポートレート撮影は一つひとつ組み上げてゆくことができます。
なんだかよく分からないものを、よく分かる一つひとつに分解して、その一つひとつをさらに組み上げてゆく、というイメージですね。
また、バランス感覚を身につけることによって、逆にあえてバランスを崩すという撮り方もできるようになるでしょう。
そうなったらかなりの上級者ですね。
まずは全ての基本となる「バランスを取る」ことから始めてみましょう。
ポートレート撮影に、何かとっかかりを求めている人は、ここから始めるのがオススメです。
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