レンズのスペックに「焦点距離」というものがありますね。
50mmとか、35mmとか、135mmとか。
写真用のレンズには必ず「焦点距離」という数字がついています。
これは早い話が「写真に写る範囲」を表しているわけですが、この焦点距離、
「僕は50mmが好き」とか、
「私は85mmが好き」という話をよく聞きます。
「何mmが好き」という感覚がまだない初心者の方にとって、この発言はピンと来ないものでしょう。
そこで今回は、レンズの焦点距離と「好み」の関係について解説します。
なぜ写真に写る「範囲」に好みが生じるのか、そのことと自分が撮る写真にはどういう関係があるのか。
焦点距離と自分の好みの関係がわかれば、ますます写真が楽しくなりますよ♪
目次
焦点距離とは
焦点距離とはその名の通り、「レンズ」とそこを通過した光の「ピント面(焦点)」の距離のことです。
虫めがねで太陽の光を集めて新聞紙を焦がす実験はみなさんしたことがあると思いますが、その焦がす点がすなわち焦点であり、「レンズ」とその「焦点」の距離が「焦点距離」です。
そのまんまですね。(笑)
そのレンズを通過した光が、どの位置でピントが合うか(像を結ぶか)ということです。
50mmの位置でピントが合えば、そのレンズの焦点距離は「50mm」だし、200mmの位置でピントが合えば「200mm」です。
そしてその焦点距離が長ければ長いほど、画角(写真に写る範囲)は狭くなり、短ければ短いほど、画角は広くなる、という相関関係があります。(下図↓)
- 焦点距離が長い=画角が小さい=写真に写る範囲が狭い
- 焦点距離が短い=画角が大きい=写真に写る範囲が広い
ということですね。
焦点距離に好みが生じる仕組み
では、レンズの焦点距離が違いは、実際の撮影においては「何の違い」となるのでしょうか。
ここでは以下の3点を挙げましょう。
- 撮れる絵の違い
- 撮影位置の違い
- 切り取る範囲の違い
つまり「焦点距離の好み」とは、言い換えると、
- 撮れる絵の好み
- 撮影位置の好み
- 切り取る範囲の好み
ということです。
もちろん焦点距離の好みは他にも、
- レンズ自体の「作り」「サイズ感」「操作性」といった物理的な要素
- 他人の評価や好きなカメラマンが使っているといった心理的な要素
も作用しますが、ここではより原理的な最初の3点に絞って解説していきます。
焦点距離の違いと「撮れる絵」の違い
レンズの焦点距離が変わると、撮れる絵の内容が変わってきます。
だからこそこんなに豊富な焦点距離がラインナップされているわけですね。
豊かな焦点距離のバリエーションが、豊かな写真の楽しみを提供しているわけです。
決してメーカーの商魂だけの理由ではありません。(笑)
広角レンズの絵の特徴
まず、焦点距離の短いレンズ(広角レンズ)の特徴を挙げてみましょう。
- 写る範囲が広い(沢山のものが1枚の画面の中に入る)
- 手前ものはより大きく、遠くのものはより小さく写る(遠近感が強調される)
- ピントの合う範囲が広い(ボケにくい)
望遠レンズの絵の特徴
望遠レンズの場合は、広角レンズのまるっきり逆ですね。
- 写る範囲が狭い(1枚の画面の中に入る要素が少ない)
- 手前ものと遠くのものの大きさの差が小さい(遠近感が希薄になる)
- ピントの合う範囲が狭い(ボケやすい)
撮れる絵の違いと好みの関係
焦点距離の違いが生む「撮れる絵の違い」には、上記のような違いがあります。
端的にまとめると、
広角レンズ | 望遠レンズ |
---|---|
ダイナミック | スタティック |
広がり | まとまり |
シャープ | ボケ |
といったところでしょうか。
この違いから、好みの違いが生まれます。
ダイナミックな絵が好きな人もいれば、スタティックな絵が好きな人もいます。
隅々までシャープな絵を愛する人もいれば、とろけるようなボケを愛する人もいます。
この「絵の好み」によって、広角側が好きになったり、望遠側が好きになったりするわけです。
焦点距離の違いと「撮影位置」の違い
次に焦点距離の違いと、カメラマンが撮影するポジション(撮影位置)の関係を見ていきましょう。
例えばある被写体をカメラの画面内で一定の大きさに写す場合、広角だと近寄らなくてはいけませんし、望遠だと離れなくてはいけません。
つまり、同じ絵を撮る場合、広角と望遠では「撮影位置」が違うのです。
被写体に対してどのくらいの位置を取りたいのか、あるいは取ってしまうのかによって、レンズの焦点距離の選択も変わってくる、ということです。
例えばモデル撮影の場合、どうにもモデルに近寄ってしまう人もいれば、どうにも近寄れない人もいます。
その人にとっての「心地いい距離感」が違うのです。
また、ある状況を撮るとき、ぐっと踏み込んでリアルに撮りたいのか、遠くから客観的に撮りたいのかによっても、カメラマンの取る位置は変わってきます。
撮影位置は、撮りたい絵の内容にも関わってくるのです。
このように、被写体との距離の取り方は、カメラマンの性格や撮影意図によってさまざまです。
そんな撮影位置にその人固有のひとつの傾向があるとしたら、その位置から撮るのに適した焦点距離が選ばれやすくなる、ということです。
このような仕組みで「撮影位置」もまた、焦点距離の好みを生むひとつの要素となります。
焦点距離の違いと「切り取る範囲」の違い
最後に、焦点距離の違いと「切り取る範囲」の関係。
そもそもこれは、「焦点距離=写真に写る範囲の違い」でしたね。
この「範囲」に好みが生じるとは、どういうことでしょうか。
「どれくらいの範囲を切り取りたいか」ということは、
- 画面内にたくさんの要素を入れたいならば、必然的に広角
- 画面内から余分な要素を排除したいならば、必然的に望遠
ということです。
つまりこれは、撮り手の「視野」とも言えるでしょう。
その人が「見わたす」タイプの人だと、必然的に広角っぽい視野になり、「見つめる」タイプの人だと、必然的に望遠っぽい視野になります。
撮り手の「視野」は、個性のひとつであり、これもまた焦点距離の選択に傾向が生じるひとつの要素です。
「焦点距離の好み」と「写真」の関係
以上のような要素によって、人によって思わず使ってしまう焦点距離の傾向、つまり「好きな焦点距離」というものがあぶりだされてきます。
人に「個性」があるように、焦点距離の好みにも個性があります。
広角が好きな人、標準が好きな人、望遠が好きな人。
また、広角の中でも24mmが好きな人、35mmが好きな人。
望遠の中でも85mmが好きな人、135mmが好きな人。
さまざまです。
その人の個性が焦点距離の好みに反映し、焦点距離の好みがまた、撮る写真の個性に反映するわけです。
また、同じ人でも、気分やタイミングによって、好みがコロコロ変わったりします。
「昔は望遠が好きだったけど今は広角が好き」とか「今日は50mmの気分」とか。
写真は好きなカメラで好きなように撮ろう、という記事を、この間アップしたばかりですが、好きな焦点距離を見つけてみる、というのも、写真を楽しむための良い視点です。
自分って何mmが好きなんだろう?
あまり気にしたことがないという方は、写真に「好きな焦点距離」という視点を持ち込んでみるのも、また一興です。
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