写真の縦横比(アスペクト比)の違いは、写真の内容にどう関係するのか?

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アスペクト比

写真にはいろいろな縦横比が存在しますね。

35mmの「3:2」や、コンパクトデジカメの「4:3」など。

縦横比を自由に選択できるカメラもあります。

しかし、どういう根拠でその縦横比を選んでいますか?

意外と「なんとなく」ということが多いのではないでしょうか?

でも、写真は縦横の比率(アスペクト比)の違いによって、同じものを撮ったとしても見え方が違ってきます。

その縦横比には、やっぱりちゃんと意味があるわけです。

今回は写真における縦横比(アスペクト比・フォーマット)について解説します。

全く何の気なしに選んでいた、そもそも縦横比なんて気にもしていなかったという方は、その裏に潜む重大な意味にきっと目からウロコ!でしょう。

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なぜ写真は「四角」なのか?

縦横比の前に、そもそもなぜ写真は「四角」なのでしょうか。

「写真を撮る」ということは、「目の前の場面を四角く切り取る行為」とも言い換えられます。

「丸」でもなく「三角」でもなく「四角」です。

そして「四角形」の中でも台形やひし形などではなく、写真の場合はいわゆる「矩形」です。

つまり長方形か正方形です。

もちろん「長細」かったり「ましかく」だったり、縦横の比率はいろいろありますが、どんなカメラであれ必ず切り取る形は「四角」(=長方形or正方形)であることは間違いないです。

しかしレンズは「丸」なわけだし、それが描くイメージサークルも丸なわけだから、本来それを最大限生かす切り取り方は「丸」、とも言えるはずです。

これでスッキリ!画角は「焦点距離」と「センサーサイズ」の二段階で理解する
よく、デジカメのレンズの説明で「35mm換算」といったり、同じレンズでもカメラによって画角が違ったり、レンズとデジカメと画角には妙に理解しにくい部分があります。そんな画角は、「焦点距離との関係」、そして「センサーサイズとの関係」の二段構えで捉えると理解しやすくなります。

でも私たちは普段、写真が「四角」であることに、ほとんど疑問を持ちません。

それはつまり、なんの疑問も起こさせないほど、その形が「妥当である」ということの証拠です。

そこに疑問があれば、当然今までに「なぜだ!?」という議論が巻き起こっていたはずですし、使いにくければ別な選択肢が選ばれていたはずです。

しかし、なんの疑問も差し挟まれることなく当然のようにここまでやってきたのは、それだけその形が妥当であることの、ひとつの証拠です。

ではなぜ、四角がそれだけ妥当なのか?

写真に最もふさわしい枠とは

さて、よく見渡してみると、ほかにも「四角」で区切られているものはたくさんありますね。

本・雑誌、テレビ・パソコンやスマホのモニター、窓、テーブル、部屋の形、…等々。

これについてまず言えるのは、四角は「製造コストが安い」ということです。

辺が「まっすぐ」であること。

そして角度が「直角」であること。

それはやっぱり、ほかの複雑な形状よりは圧倒的に「作りやすい」わけです。

この「作りやすさ」は、四角が選ばれる大きな理由のひとつでしょう。

そして四角のこの「簡単さ」「シンプルさ」が同時に、もっと大きな理由にもつながります。

すなわち、最もシンプルな形状にすることによって、最も枠自体の「主張」を消すことができるのです。

写真や本やモニターの画面は、その「枠」自体が表現をするのではなく、その「」で展開されるものが表現の主体です。

「枠」自体が目立っては困るのです。

「枠」は最もその存在感を消さなくてはいけません。

そもそも「枠がある」という意識すら持たせないくらいにその存在感を消すことが、「枠」にとっては「成功」なのです。

そういう点で写真の四角を見てみますと、「縦横比だアスペクト比だ、長方形だ正方形だ」とは言われますが、「四角だ、丸だ、いや三角だ」とは言われません。

つまり、写真の枠において「四角」という前提は全く疑われていません

そういう意味で、まず「四角」は成功です。

ではなぜ「四角」がここまで成功するのでしょうか?

写真が「四角」である理由

写真が四角に至る道を、順を追って見てみましょう。

まず、最もシンプルなライン、それは直線です。

枠における「線」とは、始点と終点を結ぶその「結び方」です。

ある点とある点を線で結ぶ場合、最短かつ最もシンプルなのはそれを結ぶ直線です。

直線であれば、それを指定するのに始点と終点の2個のパラメーターがあれば事足ります。

曲線やその他のラインなら、曲率やら第3の点やら、余計なパラメーターが必要になってきます。

なんの寄り道も道草もない、文字通り最も「ストレート」なラインが「直線」です。

そして最も表情のない角度、それは水平垂直です。

「斜め」というのはいろいろな度合いがあり、それが表情を生みますが、水平と垂直には度合いがありません。

斜めは「偏り」とも言えますが、水平と垂直はその偏りの測るための「基準点」です。

表情のゼロポイント、つまり「無表情」です。

この点は以前の記事でも、ニュアンスを消すライティングとして紹介した通りですね。

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そして、写真において画面を区切るのに最もふさわしい枠。

最もその存在感を消す枠。

それは、最もシンプルなラインと最も表情の無い角度の組み合わせです。

すなわち、「直線」と「水平・垂直」を組み合わせた「四角」(矩形)です。

縦横比(アスペクト比)と写真の関係

さて、写真が四角いのはよくわかりました。

では次に、四角の「種類」です。

カメラとそのフォーマット

写真において四角の種類は、「フォーマット」という形でいろいろと存在します。

  • 35mm判=「24×36mm
  • 中判カメラ=「6×6cm」(ロクロク)や「6×9cm」(ロクキュー)
  • 大判カメラ=「4×5inch」(シノゴ)や「8×10inch」(エイトバイテンまたはバイテン)

よく見ると、35mmはフォーマットの単位に「ミリ」を用い、中判カメラは「センチ」、大判カメラは「インチ」です。

なぜかバラバラです。

しかしこの点は、フォーマットの大小関係が感覚的に把握できるという点で役に立っています。

すなわち、フォーマットの大きさは、

35mm<中判<大判」であり、各単位の大きさは、

1ミリ<1センチ<1インチ」です。

たまたまなのか意図的なのかはわかりませんが、よく出来ています。

写真は「長方形」か「正方形」かの2種類

さてカメラのフォーマットにはいろいろな縦横比(アスペクト比)が存在しますが、最終的には次の2つに分類されます。

  • 長方形
  • 正方形

「3:2」「4:3」「16:9」、いろいろな比率がありますが、それらはひっくるめると、最終的に「長方形」です。

これらは「長辺」「短辺」と辺に2種類の長さが生じるという点で共通します。

そして、唯一それに共通しない四角が、全ての辺が同じ長さとなる「正方形」です。

すなわち、この世の中に存在するカメラはほぼ全て、画面を長方形で区切るか正方形で区切るかのどちらかになります。

長方形と正方形の違い

長方形と正方形の違い。

それは、辺が均等か不均等かです。

正方形はどの辺も均等です。

そして、長方形は不均等です。

この違いが意味するもの。

それは「不均等はニュアンスを発生する」ということです。

血も涙も無いくらいに最も無表情な枠が「四角」でしたが、そんな四角に残された最後の「表情」の砦。

それが、長方形における、「縦横の比率」です。

ここだけが「枠」においてニュアンスを発生させることができる最後の砦です。

つまり、まとめるとこういうことです。

  • ドラマが発生する四角=長方形
  • ドラマが発生しない四角=正方形

ドラマチックな画面は長方形で、スタティックな画面は正方形です。

長方形の写真

長方形の場合、まず「縦位置」にするのか「横位置」にするのかという選択が生じます。

その時点でまずドラマ性を帯びます。

ドラマとは「変化」であり、縦位置・横位置の選択からすでに変化の要素が始まっています。

正方形ならば縦横の選択はありません。

また、写真を並べて見る場合、縦位置・横位置の並びの変化は、ドラマを形作るひとつの要素となります。

そして、縦位置ならばその画面の中に「上と下」、横位置ならは「右と左」という「差異」が発生します。

全て「ドラマ」というものは、この「差異」から生まれます。

「男女」「遠近」「寒暖」「強弱」

世の中のあらゆるドラマは「差異」から発生します。

そういう意味で長方形は「ドラマチック」な画面です。

横位置写真の例

スナップ写真

たとえばこちらの写真は、完全に長方形の横位置を利用した写真です。

左右に横長く要素を配置し、さらにそれぞれが外に出るような動きを見せることによって、横に引っ張られるような力学が生じていますが、それは横位置の画面であるからこそうまく収まっています。

試しにこの写真を正方形に加工してみると…

正方形フォーマット

要素がまとまりすぎて、力学が消えてしまいました。

3つの要素が「ポツ」「ポツ」「ポツ」とそこにあるだけ、という感じです。

ドラマというよりも単なる「場面」です。

縦位置写真の例

縦位置でも見てみましょう。

スナップ写真

上からの伸びやかなゾウの鼻の流れは、「上下」という落差が生じる縦位置だからこそ生きてきます。

これも試しに正方形にトリミングしてみると…

正方形フォーマット

完全に「流れ」はなくなりました。

ゾウの鼻と子どもがやはり「ポツリ」「ポツリ」という感じです。

このように、長方形の画面を生かしやすいのは、「ドラマ」のある画面です。

ドラマを生かす場合に、長方形の画面は積極的に利用できます。

そしてもちろん、この比率が極端になるほど、ドラマも極端になります。

すなわち、横に長く、あるいは縦に長くなるほどドラマ性は増し、正方形に近くなるほど、ドラマ性は薄れていきます。

少し前に紹介したピーター・リク氏の写真は、ほとんど「パノラマ」と言っていいくらい極端な縦横比率が特徴的でしたが、その極端さが極端なドラマ性を生んでいます。

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正方形の写真

各辺が均等である正方形の写真は、長方形とは真反対で、「ドラマを生まない写真」です。

均等であるがゆえにドラマのもととなる「差異」を生まないからです。

言ってみれば「それそのもの」を「そのまま」見せる写真です。

長方形が「Do」的写真であるならば、正方形は「Be」的写真です。

長方形が画面構成を「する」写真ならば、正方形はそのままで「ある」写真です。

正方形の写真は特に女性に受けがいいと言われるのは、一種女性原理に通じるような特徴を備えているからでしょう。

つまり「あるがまま」です。

そして男性のほうが長方形を好むのも、また男性原理に通じるからでしょう。

つまり「手を下して作り込む」です。

HIROMIXの記事で、「撮るのが好き」なのは男子で、「見るのが好き」なのが女子という話をしましたが、そこにも通じます。

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撮るのが好きな男子には、あれこれいじり甲斐のある長方形がふさわしく、見るのが好きな女子には、あれこれ調整の必要なく、そのままストレートに撮れる正方形が合っている、というわけです。

逆の言い方をすれば、男性にとって正方形は「ものたりない」で、女性にとって長方形は「おちつかない」です。

まあもちろんザックリとした話ですが。

そんな女性にとってなじみの深いスクエアフォーマットは、女性カメラマンにもよく愛用されています。

スクエアフォーマットを駆使した女性写真家には、このブログでも紹介したヴィヴィアン・マイヤーや、ダイアン・アーバスなどがいます。

日本では川内倫子さんなどが有名ですが、共通して言える彼女たちの撮り方は「ストレート」ということです。

「それそのもの」を撮る、という撮り方です。

ヴィヴィアン・マイヤー

©Vivian Maier

ダイアン・アーバス

©Diane Arbus

川内倫子

©Rinko Kawauchi

「それ」が「そこ」に「ある」という写真です。

正方形は、ありのままをあるがままに撮るのが、最もしっくりくる撮り方です。

ちなみにスクエアフォーマットのカメラはハッセルブラッドとローライフレックスが有名ですが、上記の女性写真家たちは皆ローライフレックスです。たまたまかもしれませんが。

語感からいっても、ハッセルは男性っぽい感じがして、ローライは女性っぽい感じがするから不思議です。

そして、女子カメラの象徴とも言われる「ゆるふわ」な写真も、やはりスクエアで撮られることが多いですね。

また、近年大ブレイクした「インスタグラム」という写真SNSが、アップする写真に「正方形」を採用したのも、記憶に新しいところです。

しかし、ブレイクしたインスタグラムがたまたま正方形を採用していたのではなく、正方形を採用したがゆえにブレイクしたという「原因のひとつ」と見るのが、本来の順序ではないでしょうか。

そのあたりを次に見ていきましょう。

「写真のフォーマット」と「世界」の関係

さて、ここ最近の「正方形写真」の浸透ぶりは目覚ましいものがあります。

この流れに乗っかって、富士フイルムもスクエアフォーマットのインスタントカメラを開発中だったりします。

instax SQUAREスペシャルサイト。FUJIFILMが本気で挑む新しいinstaxの形。縦横のない正方形が織りなす世界はあなただけのもの。

これまで見てきたように、長方形は「ドラマチック」な写真で、正方形は「スタティック」な写真でした。

また、長方形は男性的であり、正方形は女性的でもありました。

そして、ここ最近、かつてないレベルで正方形フォーマットが浸透しているという現状があります。

これはすなわち、人々の「ものの見方」が変わってきている、すなわち、世の中が変わってきている、ということです。

「正方形的特長」の浸透

長方形から正方形へのシフトは、「ドラマ」から「そのもの」への転換。

ドラマの基本は「差異」でしたが、長方形から正方形への転換は、差異の時代から「融和」の時代ということです。

そして「演出」の時代から、「本質」の時代への転換。

広告や宣伝にしても、本質とは関係ないハデな演出で、とにかく目を引き付ければいいという発想から、本質そのものを突くという発想に転換しつつあります。

また、「男性原理」から「女性原理」への転換。

マーケティング界隈でも、「女性受け」ということがキーワードになっていて、女性目線での商品開発も多くなってきました。

それはすなわち正方形的な「和」(融和)であり「和み」です。

長方形的な「ドラマ」や「葛藤」ではありません。

インスタグラムのブレイクは、そんな世の中の流れと同調したわけです。

正方形の採用は、その象徴のひとつです。

なにしろ写真のアップロードサービスはインスタグラムに始まったわけではありません。

しかし「ブレイクした」と言えるのはインスタだけです。

そして、正方形を採用したのもインスタだけです。

この因果関係は、世の中の流れとの同調を意味します。

つまり「融合」の時代です。

縦・横を融合したものが正方形です。

正方形なら、写真を並べた時にも統一感がでます。縦・横混在だとバラバラです。

シンプル化、そして統一化。

ひとつのビジョンに対して強烈にまとまり、極限までシンプル化するというのは、人類の普遍的感性に一致するものであり、ヒット作の基本的前提というのは、以前お話しした通りです。

作品の良し悪しは本当に「感性の問題」か?
作品の良し悪しは「感性」。つまり「だから議論してもしょうがない」とはよく言われます。今回はあえてそこにツッコミを入れます。わからないことにぶちあたってみることによって、物事は前に進みます。

「写真のフォーマット」というような局所的な流れも、やはり世界全体の流れと軌を一にしているわけです。

「写真のフォーマット」と歴史

かつてエルヴィス・プレスリーやバディ・ホリーがいみじくも歌っていました。

I don’t know why my heart flips.
I only know it does.
I wonder why I love you, baby.
I guess it’s just because
You’re so square.
Baby, I don’t care.

「スクエア」はなぜだかわからないけど魅力的なのです。

それはもう50年以上前からそうなのです

ここへきてスクエアが世の中への浸透を見せていますが、それはもう必然的な流れなのです。

実になんとなく選択していたかもしれない写真のフォーマットは、その裏には広く世界全体の流れ、そして歴史という時間軸とも密接な関わりがあったのです。

写真は写真だけで完結するものではなく、やはり世界と深くつながっているのです。

「写真」と「世界」のつながり

そもそも写真とは、そこから世界をのぞいた「ちいさな四角」です。

あなたが見た世界、あなたが切り取った世界です。

世界そのものの断片です。

毎日大量に流通する写真は、人々が見た世界そのものです。

人々の「見方」によって切り取られた世界の断片は、それによってまた世界を形成する要素となります。

その大きなうねりの中に、私たちもいます。

私たちが日々何気なく撮る、あるいは一生懸命撮るそれらの写真は、ただあなただけのものではなく、世界の一部です。

あなたの撮る1枚の写真は、世界を決める貴重な1票です。

まとめ

さて今回は写真の縦横比からずいぶん話が飛躍しましたが、まとめておきましょう。

そもそもの写真の枠は「四角」です。

それは、四角が最もその存在感を消す枠であり、その中で展開される表現を最も生かす枠だからです。

そして、四角は2種類に分けることができます。

  • 長方形
  • 正方形

それぞれの特徴は、

  • ドラマが発生する四角=長方形
  • ドラマが発生しない四角=正方形

です。

長方形はその構成される辺の長さが2種類あり、その差異がドラマを生むもととなります。

正方形はその構成される辺の長さが1種類なので、差異が生まれず、結果的にドラマも生まれにくい画面となります。

そして現在、世の中に「正方形」フォーマットが浸透しつつあります。

それはすなわち、世の中への「正方形的な特徴」の浸透ということです。

そのキーワードは、

  • 融合
  • 本質
  • 女性的

です。

そのような世の中の流れにうまく同調したインスタグラムは、世界的なヒットを記録しました。

このように、「写真」というものは、世の中の流れと無縁なわけではなく、深く結びついています。

つまり私たちの撮る写真も、世界の一部です。

という流れが今回の記事でした。

私たち撮り手は、写真を撮ることによって、世界に参加していきましょう。