すでにミラーレスをお持ちの方に、「いいカメラ持ってますね」なんて言うと、「いや~、安物ですよ、こんど一眼レフ買おうと思ってます」なんて返事が返ってきました。
いいカメラって、「ミラーレス < 一眼レフ」という図式が一般的なのでしょうか?
と思い、あらためて一眼レフとミラーレスの違いについて考察してみた次第です。
これからカメラを買おうと思っている方の中にも、一眼レフとミラーレスどっちがいいんだろうとお悩みの方も多いでしょう。
もちろん、違いについては誰でも簡単に理解できます。
ファインダー形式の違いですね、それは。
「違うのはわかるよ、確かに。でも自分にとってどっちがいいの?」
みなさんが最終的に知りたいのはそこでしょう。
つまり本当に知りたいのは「違い」そのものではなく、それがもたらす「意味」ですね。
「違い」については他にも情報がたくさんありますので、今回は「意味」のほうをメインに解説したいと思います。
意味を知れば、自分にとってのベストもスッキリと判断できることでしょう♪
目次
一眼レフとミラーレスの違い
まずはじめに「一眼レフ」と「ミラーレス一眼」がどんなカメラかをザッとおさらいしておきましょう。
前回はフィルムカメラでお話しましたが、デジカメにおいて「画質」に実質的に影響をおよぼすのは、
- レンズ
- センサー
- 画像処理エンジン
です。
センサーと画像処理エンジンはカメラに固定なので、画質にこだわる場合は、レンズ交換ができるカメラが望ましいですね。
そして、デジカメにおけるレンズ交換可能なカメラの選択肢は一般的に、
- 一眼レフ
- ミラーレス一眼
です。
もちろん、これらのレンズ交換ができるカメラは、それにふさわしいセンサーや画像処理エンジンも備えています。
そういうわけで、ステップアップするカメラとして、一眼レフやミラーレスが選ばれるわけですね。
一眼レフとミラーレスの違い
そして、一眼レフとミラーレスの違いは何かと言うと、それは「ファインダー形式」です。
それだけです。
携行性とか操作性とかの話もありますが、それらはファインダー形式という唯一の違いから「派生してくる事柄」であって、そこが違いの本質ではありません。
また、画質についてもどっちがどうだと言われますが、「一眼レフ」と「ミラーレス」の間で画質を比較すること自体、そもそもナンセンスです。
今どき両者は、同等のセンサーや画像処理エンジンを積んでいるわけですから、画質はセンサーや画像処理エンジン自体で比較すべきで話であって、「一眼レフ」と「ミラーレス」の間で比較する話ではありません。
一眼レフとミラーレスの違いは、まずは本質を1点、把握しましょう。
「ファインダー形式が違う」
それだけです。
その他の細かい違いは、この本質を消化したうえでのハナシになります。
一眼レフとミラーレスのファインダーの違い
では、そんな唯一の違いであるファインダー形式の違いとは、どんなものでしょうか。
一眼レフのファインダー(光学ファインダー)
一眼レフのファインダーは、レンズを通ってきた光を、ミラーとプリズムに反射させてそのまま見ています。
つまり見ているのは、「生の光景」です。
ミラーレスのファインダー(電子ファインダー)
ミラーレスのファインダーは、レンズを通ってきた光を一度センサーに取り込み、それを画像に変換して見ています。
つまり見ているのは、「液晶画面」です。
ファインダーの違いをまとめると
その違いをわかりやすく言うと、
- 光学ファインダー:オペラグラスでオペラを鑑賞
- 電子ファインダー:テレビ画面でオペラを鑑賞
といったところです。
カメラにおけるファインダーの役割
そもそもカメラにおけるファインダーの役割とはどんなものでしょうか。
ここではひとまず、カメラの「ファインダー」について考察してみましょう。
カメラにおけるファインダーの「一般的な」役割
前回もお話しましたが、カメラは元をたどれば、ただの「暗箱」です。
そこにシャッターやらファインダーやらをくっつけたものが、すなわち現在市場に出回っている「カメラ」というものです。
そして、カメラにファインダーをくっつけている理由は、写る範囲を確認するためです。
つまり、それによって写る範囲を「選択」するためですね。
この、写る範囲を選択する、という作業は、写真撮影においては、なかなか重要な作業であります。
なぜなら、写ってない範囲を後から足すことはできないからです。
無い袖は振れないのと一緒で、写真はそもそも写っていなければどうしようもありません。
かといって、広い範囲に何でもかんでも写し込んでおけばいいかというと、そうでもありません。
写っている範囲が広ければ広いほど、そこから切り取るべき「必要な範囲」は必然的に小さくなります。
そして、切り取る範囲が小さくなればなるほど、画質が低下します。
どーんと広い範囲を写しておいて、そこからちょこっとだけ切り取るなら、画質はかなり低下します。
そもそも、たっかいお金を出してフルサイズを買っていながら、小さく「切り取って」使うなら、そのアドバンテージを全然生かせてないということです。
そんな小さく使うならAPS-Cでいいじゃないか、という話になってしまいます。
ですから、撮る時点でちゃんと最適な「写る範囲を決める」ということは、とても大切な作業なのです。
そう考えるとファインダーという装置は、カメラの中でもかなり重要なパーツと言えます。
「趣味のカメラ」におけるファインダーの役割
そんな、ファインダーで「切り取る」作業。
趣味の写真撮影の場合、それはほとんど「目的」と言っていいものです。
現実の空間を自らの視点で面白く、素敵に、カッコよく切り取ること。
それ自体が面白い のです。
そのために写真をやっている、と言ってもいいくらいです。
そんな場合のファインダーは、写真の面白さそのものに直結する要素となります。
一眼レフとミラーレスのファインダーの違いの意味
さて、一眼レフとミラーレスの違いは「ファインダーの違い」でした。
- 一眼レフ:生で見る「光学ファインダー」
- ミラーレス:液晶画面で見る「電子ファインダー」
趣味の写真撮影で、この2者を選択する場合、何を基準にしたらいいでしょうか。
それは、どっちが面白いか?です。
両ファインダーに実利上の差はない
ちなみに現在、2つのファインダーの間に「実利上の差」は、もはやないと言っていいでしょう。
どっちのファインダーがよりいい写真が撮れるとか、どっちがより撮影上有利とか、そういうことはもはやありません。
昔の液晶ファインダーは表示にタイムラグがあり、動体撮影は一眼レフに分がありましたけど、今は十分改善されています。
シャッターのタイムラグを含めた「全体のタイムラグ」においては、むしろミラーレスのほうが早い場合すらあります。
そんな両者に残された唯一の違いは、もはや「撮影感覚」や「フィーリング」といった部分だけです、ほとんど。
要は「どっちが好みですか」という話です。
特に趣味の撮影の場合は、「切り取ること」そのものが面白いわけなので、「どちらのファインダーがより面白く撮れるか」で選ぶのが理にかなっています。
というか、両者に実利上の差がないなら、もはやそれで選ぶしかありませんね。
ファインダーは「理性」よりも「感覚」
言ってみればファインダーは、目の前の場面と自分を結ぶインターフェースです。
パソコンソフトでは、インターフェースによって使い心地が左右されますが、カメラにおいても同様です。
そしてインターフェースは、ソフトの内容自体に影響を及ぼすものではありません。
インターフェースが左右するのは「使い心地」の部分です。
ファインダーも、それによって画質や写真の良し悪しが変わるわけではありません。
ファインダーが左右するのは「使い心地」です。
ですから、そこは数値やスペックなどの「理性」で判断する部分ではなく、実際に使ってみた「感覚」で判断する部分です。
ネットやカタログの情報だけに頼っていると、感覚が忘れ去られがちですが、「カメラを操作する」という行為は、実にどうしようもなくフィジカルな出来事です。
そこおいて結局モノを言うのは「感覚」です。
感覚から見た一眼レフとミラーレスのファインダーの違い
では、感覚の面から両ファインダーを比較してみましょう。
- 一眼レフ:生で見る「光学ファインダー」
- ミラーレス:液晶画面で見る「電子ファインダー」
端的に言うと被写体を「直接見る」のと「間接的に見る」の違いですね。
そのことがもたらす感覚の違いとは、一体どんなものでしょうか。
一眼レフのファインダー(光学ファインダー)
「生」は、(レンズを通してはいますが)肉眼で見るということです。
見えているものは、液晶画面のような変換されたものではなく、そのままです。
「直接見る」ということは、「その場にいる」ということです。
つまり、自分の肉体と共にその場に参加している、という感覚です。
土俵で実際に相撲を取っているわけですね。
主観的な視点です。
そのファインダーで見えているものに意見を持つということは、「現実」に対して意見を持つ、ということです。
つまり、
「現実」に取り組むのが、一眼レフでの撮影です。
ミラーレスのファインダー(電子ファインダー)
「液晶画面」は中継画像です。
まあ本人は現場に居るわけですが、現場に居ながらその現場の中継画像を見ているわけです。
そしてその画像は、画像処理エンジンを通した「現実とは異なる画像」です。
その印象も、もちろん現実とは異なります。
ちゃんと色補正なり露出補正なりが効いた、「実際の写真になる画像」です。
「間接的に見る」とは、「その場にいない」ということです。
つまり、現場には居るわけですが、現場とは別な場所で絵について検討しているような感覚です。
実際に土俵で相撲を取るのではなく、放送席で相撲について分析しているわけですね。
客観的な視点です。
そして、液晶画面に対して意見を持つということは、画像処理エンジンが作り出した「絵」に対して意見を持つ、ということです。
つまり、
「絵」に取り組むのが、ミラーレスでの撮影です。
感覚から見たファインダーの違いをまとめると
以上の印象をまとめてみると、
- 一眼レフ=主観的な「参加型撮影」
- ミラーレス=客観的な「分析型撮影」
といった感じになるのではないでしょうか。
まとめ
さて今回は、「一眼レフ」と「ミラーレス」の違いを、わかりやすくその「ファインダーの違い」に絞って解説しました。
「一眼レフ」と「ミラーレス」の最も本質的な違いは、そのファインダーです。
ですから、比較するならファインダーで比較するのが、最も的を得た比較です。
そしてそのファインダーには、「性能の優劣」はありません。
あるのは、「フィーリングの優劣」です。
「どっちがしっくりくるか」「どっちが面白いか」です。
そして結局自分にはどっちがマッチしているのか。
そこの部分も含めて、以下にまとめてみます。
一眼レフとミラーレスの違い
一眼レフとミラーレスの違いについてはいろいろ言えますが、究極的かつ本質的な違いは1点、「ファインダー形式の違い」です。
- 一眼レフ:生で見る「光学ファインダー」
- ミラーレス:液晶画面で見る「電子ファインダー」
「一眼レフ」「ミラーレス」、どちらを選ぶかの選択はつまり、「光学ファインダー」と「電子ファインダー」のどちらを選ぶのかの選択と置き換えられます。
一眼レフとミラーレスの違いの意味
そして、
- 一眼レフの「光学ファインダー」→「直接見る」=主観的であり「参加型撮影」
- ミラーレスの「電子ファインダー」→「間接的に見る」=客観的であり「分析型撮影」
です。
それはすなわち、
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」
という人には一眼レフ。
「事件は現場で起きてるんじゃない、会議室で起きているのよ」
という人にはミラーレス。
そういうことですね。(笑)
自分に合っているのはどっち?
芝居で言うと、
- 役者タイプ=一眼レフ
- 演出家タイプ=ミラーレス
と言えるでしょう。
スポーツで言うなら、
- 選手タイプ=一眼レフ
- 監督タイプ=ミレーレス
です。
自分は「プレーヤー」なのか、それとも「ディレクター」なのか。
そこが判断の分かれ目、と言えるでしょう。
一眼レフとミラーレスのもうひとつの視点
そもそもミラーレスができたのは、デジタルならセンサーの絵を直接見れるわけだから、ミラーだのプリズムだの余計なパーツは必要ないじゃん、あるいは、コンパクトカメラをレンズ交換式にしちゃえばいいじゃん、という、ごく当たり前の発想からきています。
つまり、ミラーレスは歴史の流れから言うと、必然的なカメラです。
そして、カメラの進化は撮り方の進化でもあります。
背面液晶をバリアングルにして、頭上にかざして、あるいは地面すれすれで撮影なんていう「ファインダーをのぞかない撮影」も、テクノロジーの進化がもたらした新しい撮影方法ですね。
そして、一眼レフからミラーレスへの進化も、やはり撮り方の進化を促します。
それは「肉体→頭脳」への進化です。
- 一眼レフ=参加型=フィジカル(肉体的)
- ミラーレス=分析型=ロジカル(頭脳的)
です。
「肉体→頭脳」への進化は、狩猟生活からホワイトカラーへの進化のように人間生活の進化の方向とまるっきり一致しています。
そして、フルサイズのミラーレスの登場、タイムラグ、AFの改善などで、時代は完全にミラーレスへと傾いています。
冒頭の、いいカメラに対する「ミラーレス < 一眼レフ」という一般的な図式がひっくり返るのも時間の問題でしょう。
昔はそもそもカメラのセットを組むことからして肉体労働であり、現像液の調合から紙に焼くというその手段まで、写真はとてもフィジカルな行為でした。
そして写真はデジタル化し、どんどん手仕事は減り、どんどん頭脳化していきました。
写真はデータ化され、「写真をやる」とはつまり「データをどうこうすること」という、頭脳的な仕事になっていきました。
それは、歴史の必然的な流れです。
そんな歴史の流れの上にある現在進行形のカメラが、ミラーレス一眼です。
一眼レフとミラーレスは実は、同列に比較するカメラではなく、「歴史の流れ」からいうと、一眼レフのその先にあるカメラがミラーレスです。
そういう意味で、自分を時代の流れのどこに位置づけるのか、という視点での選択もアリでしょう。
自分は最先端の人間なのか、それともまだ古き良き時代の名残を残しているのか…なんて。
高度に頭脳化した写真における、現在もっとも「頭脳的」なカメラが、ミラーレスです。
ここにおいてカメラにおける最後のフィジカルの砦であったファインダー画像さえも、デジタルに置き換わってしまいました。
これでもうスッカリ、入力から出力までフルデジタルの完成です。
これはもう良い悪い、好き嫌いの話ではなく、歴史の流れの話です。
ただ、どんなカメラを選ぼうとも、写真の本質は変わりませんけどね。
写真はその誕生以来、技術面を除いてはなにも変わっていない。そして私には技術的なことは重要ではない。