さて、【ボケの大きい写真が撮りたい!】シリーズ。
第2回目は、「ボケを実際の作画にどう生かすか」のお話です。
(第1回は↓)
ボケじゃボケじゃとおっしゃいますが、、、
ボケはただ単にボケていれば良いというものではありませんね。
ボケを生かすにはやっぱりコツがあります。
やはりボケは生かされてこそ、ボケ冥利に尽きるというものです。
前回見たとおり、写真のボケには3種類ありました。
- bokeh=ボケ味。鑑賞すべき「ボケ」。
- blur=ただ単に写真上のハッキリ写っていない部分。ブレも一緒くた。
- out of focus=本来合うべきピントが合っていない。いわゆるピンボケ。
おなじ「ボケ」でも少しずつ意味が違いましたね。
今回は文字通り「bokeh」の意味の「ボケ」を扱います。
「ボケ」は漫才用語でもありますが、「ツッコミ」は写真用語でもあります。(笑)
え、どういうことでしょう?
本文をどうぞ。↓↓↓
目次
ボケの量とカメラの関係
さてボケ写真の撮り方ですが、まずやることは、どれだけボカすかの「ボケ量の調整」ですね。
ご存知のように写真の「ボケ」は、主に3つのパラメーターをコントロールすることによって調整できます。
- レンズの絞り(F値)
- レンズの焦点距離
- 撮影距離(被写体とカメラの距離)
です。
すなわち、
- レンズの絞りは「開ける(小さいF値)」ほどよくボケる
- レンズの焦点距離は広角より望遠のほうがよくボケる
- 撮影距離は被写体とカメラの距離が近いほど、背景がよくボケる
です。
そして「ボケのためには一眼レフが必須」と言われる理由は、上記の1.と2.によるものですね。
ボケのために一眼レフが選ばれる理由
すなわち「一眼レフ」は、ボケのために必要な以下の要素を満たしているのです。
- F値の小さい、いわゆる「明るいレンズ」がラインナップされている。
- 焦点距離の長いレンズがラインナップされている。
- センサーサイズが大きいので、焦点距離の長いレンズを使いやすい。
上の2つについてはわかりますが、最後の「センサーサイズが大きいので…」とはどういうことでしょうか?
これはセンサーサイズごとの「標準レンズ」に着目してみるとわかりやすいでしょう。
- 35mmフルサイズのカメラの標準レンズ=50mm
- APS-Cサイズのカメラの標準レンズ=35mm
同じ標準レンズでありながら、フルサイズとAPS-Cではそれぞれ「50mm」「35mm」と焦点距離が違います。
つまり、同じ画角(標準レンズ)なら、センサーサイズが大きいほうが、焦点距離が長くなるのです。
結果的にセンサーサイズが大きいほうがよくボケる、というわけです。
ちなみに中判カメラの標準レンズは80mmとか90mm、大判カメラ(4×5インチ)だと200mmくらいになります。
200mmなんて35mm判にしたら結構な望遠ですよね!
でも大判カメラ(4×5インチ)だとそれで標準レンズの画角なのです。
もちろんボケは200mmのボケです。
もちろん、APS-Cでも、それよりも小さいサイズのコンデジやスマホに比べるとセンサーサイズは大きいので、それらよりはボケやすくなります。
ボケ量をコントロール
ボケの量、ボケ具合については、まずは「よりボケやすい」カメラやレンズを使うことが前提ですね。
ですから、より明るいレンズ、より長めのレンズとなり、さらにはコンデジよりはAPS-C、APS-Cよりはフルサイズ、となるわけです。
ボケについてはそれらを整えた上で、最初の3つのパラメータをいろいろいじってボケ具合を調整する、という順序になるでしょう。
すなわち、
- 絞り
- 焦点距離
- 撮影距離
ですね。
そしてデジカメなら、撮った画像をプレビューしながらパラメーターの調整もできます。
そんなふうに、ボケのためのカメラのセッティングが整ったなら、次です。
「ボケ」を生かすための最重要ポイント
さて、「ボケ」を作画に生かすための最重要ポイント。
それはズバリ「ピント」です。
え?ボケなのにピント?
そうです。
ボケがボケとして、その妙味を存分に発揮するためには、ハッキリとしたバッチリとしたフォーカスポイントが必要です。
作画上の意図として取り扱う「ボケ」は、必ず見せたい部分1点にピントが合っていて、その他がボケているという構造をしています。
「ボケ」と「ピント」の対比がしっかりしているから、お互いが引き立つのです。
「ボケ」のために大事なのは、「ボケ」そのものよりも、実は「シャープなピント」でした。
ボケに対するツッコミ
この構造はどこかで見たことがありますね。
そうです。漫才です。
あれと一緒です。
「ボケ」だけの漫才が面白いですか?
「ボケ」は「ツッコミ」があってこそ、はじめてその魅力を発揮するのです。
写真も同様です。
ボケは「シャープなピント」という「するどいツッコミ」があってこそ、はじめてその魅力を発揮します。
ただ「ボケ」ているだけの漫才がちっとも面白くないのと同様に、ただボケているだけの写真もあんまり面白くありません。
ボケに対してシャープなピントというツッコミが入るからこそ写真は面白くなるのです。
ボケとツッコミのバランスを取る
そういうわけで、ボケ写真はただボケだけに着目するのではなく、ツッコミ役の「ピント」に対しても、同じくらいの配慮が必要です。
そのために、レンズの絞りを少し絞るというのが、実は有効です。
「え?ボケといったら絞り開放じゃないの!?」
そういうふうに鵜呑みにしている方も多いでしょう。
しかし、焦点距離や撮影距離によって必要十分なボケを得られるなら、絞りはむしろ絞るべきなのです。
とにかく「開放」というのは描写があまいです。ご存知のように。
大口径レンズならなおさらです。
レンズの「収差」という写りに対する悪影響は、言うまでもなく開放でもっとも大きく、絞るほど画質は改善されていき、シャープネスも増します。
絞りはボケを司る重要な要素でありますが、必要十分なボケを得られているなら、むしろそのリソースを「ピント面」のほうに振り向けるべきです。
物事は全て「バランス」です。
「ボケ」だけが上手くても、M-1でグランプリを取ることはむずかしいでしょう。
同じく背景はボケボケ、ピント面もシャッキリしないだと、コンテスト上位はむずかしいでしょう。
ボケを生かす最大の要素。
それはクッキリとしたピント面というシャープなツッコミ役 だったのです。
まとめ
ボケのためにはとにかく絞りを開けろ、長めのレンズだ、大きいセンサーサイズだと、「ボカすこと」ばかりに目が行きがちです。
しかし、本当に大事なのは、そのボケを生かすことです。
そのために必要なのが「ツッコミ役」です。
ダウンタウンは浜ちゃんがいるからこそダウンタウンなのです。
ボケだけに偏らない「バランス感覚」こそが成功の秘訣です。
一眼レフを手に入れて、とにかくボカす!何が何でもボカす!という「ボケうっとり期間」を過ぎたら、次は少し絞ってみるといいでしょう。
ボケじゃボケじゃとおっしゃいますが、、、
ボケはいかに「ボカすか」ではなく、いかに「生かすか」を考えるのが、オトナのボケ写真なのです。
【「ボケ」シリーズ】
第1回
第3回