「芸術は爆発だ!」ではないですが「写真は逆光だ!」です。
写真はとりあえず逆光で撮るだけでイイ感じに写ります。
photo:David Urbanke
逆光は七難隠すと言いますが(言いませんが)、とりあえず逆光で撮っておけば、それだけでもう「イイ感じ」の写真は完成です。
それはカメラマンが立ち位置を調整するだけの、実にカンタンなテクニックです。
しかしながら同時に「逆光は失敗写真なので避けるべき」とも言われます。
いったいどっちだ?!
というわけで、今回は、逆光撮影について解説します。
逆光を制するものは写真を制す!
逆光は失敗するとイタイですが、うまく撮ると写真が2~3段レベルアップしたように感じます。
いくつかのポイントとコツを押さえて、ぜひ逆光撮影をマスターしましょう。
目次
逆光って何?
「逆光」というのは、被写体の奥から光が当たっている状態です。↓
そして「順光」は、被写体の正面から光が当たっている状態です。↓
この図を見ると、順光は確かに「被写体に光が当たっている」と言えますね。
正面(カメラ側)から被写体に対して光が照らされているわけですから、カメラから見て光が当たっていることが十分に確認できます。
しかし、逆光は言ってみれば 当たっていません。
光が被写体の「裏側に当たっている」ということは、正面から見たら当たっていないのと同じです。
写真は光を取り込んで画像にするわけですから、光が当たっていない、あるいはあんまり当たっていないということは、そこが暗く写るということです。
逆光が失敗と言われるのは、ココの部分です。
「暗いじゃん」→「ちゃんと写ってないじゃん」→「失敗じゃん」
という流れです。
これを失敗としないためには、どうすればいいのでしょうか?
それは、正面の暗い部分の明るさをコントロールすればいいのです。
逆光写真の撮り方
逆光の撮り方のコツは、要はこの1点です。
正面の暗い部分の明るさをコントロールする。
これだけです。
まずはこの1点を、しっかりと頭に入れておきましょう。
逆光における適正露出とは?
なんでわざわざ撮りにくい逆光で撮るのかいうと、やっぱり写真表現として素敵だからです。
そして、逆光で撮る際の被写体の明るさの選択肢は2つです。
- 真っ暗にツブしてしまう(シルエット)
- ちょうどいい明るさにする
表現意図によって、このどちらかを選択します。
逆光で失敗と言われてしまうのは、この表現意図と明るさがマッチしていない時です。
とてもはしゃいだ明るい写真なのに顔が真っ暗とか、誰が写っているのかキチンと判別しなきゃいけない写真なのに、暗くて誰だかわからないとか。
ですから「逆光で撮る」とはすなわち、被写体をキチンと意図した明るさに撮る、ということと同じ意味です。
…でもそれって、普通に写真を撮るときに気にすることと一緒ですよね?(笑)
ですから、逆光写真だからといって、なにも特別なことはありません。
逆光だろうと何だろうと、「普通に写真」であることには変わりないのです。
逆光を撮る手順
では具体的な手順を見ていきましょう。
逆光写真を撮る手順は、
- 被写体の正面(カメラから見た面)がどの程度の明るさかを判断する
- その明るさを望む明るさに変更する
これだけです。
そして、被写体を望む明るさに変更する手段として、
- 露出補正
- 補助光を当てる
という2つがあります。
露出補正で明るさを調整する
ちょっといいカメラには、「露出補正」という機能がついています。
スマホのカメラにもついていますね。
これは、カメラが自動で判断した写真の明るさを、手動で変更する機能です。
カメラは、画面全体の明るさから判断して、写真が最適な明るさになるように自動で調整します。
「画面全体」から判断するわけですから、「画面全体の明るさはちょうどいいんだけど、『画面の一部』である主要被写体は暗いんだよなー」ということが起こり得ます。
特に、背景は明るく被写体は暗い「逆光」というシチュエーションだと、背景と被写体の輝度差が大きいので、背景が白飛びしないように露出を抑えると、必然的に被写体は暗く写ります。
ですから、暗い主要被写体を「適」の明るさにもっていくために、露出補正という操作が必要なのです。
もちろんその場合には、背景の明るさも連動して明るくなるわけですから、背景の階調は犠牲になります。
被写体は「暗」→「適」になるかもしれませんが、背景も連動して「適」→「明」、あるいは「明」→「さらに明」になりますので。
これは露出補正という方法で調整するなら仕方の無いことです。
プラス補正とマイナス補正
補正は、明るくする場合には「プラス補正」です。
暗く写る被写体を明るくする場合は、光を足す方向、つまり「プラス」の方向に補正します。
画面を見ながら最適な明るさになるまで、プラスしましょう。
逆に、被写体をシルエットにして真っ黒にツブしてしまう時は、「マイナス補正」です。
画面を見ながら最適な黒さになるまで、マイナスしましょう。
photo:Ryan Polei
露出補正時の注意点
逆光撮影で一番マズいのは、中途ハンパな明るさです。
見せるにしては暗い、シルエットにしては明るいという、どっちつかずが一番良くありません。
見せるならキチンと見せる、ツブすならキチンとツブす。
明確な意図を持って、明確な露出補正を心がけましょう。
補助光で明るさを調整する
そして、明るさの調整にはもうひとつ、補助光を当てるという手段があります。
これは、ストロボの光を当てたり、レフ板を当てたりということです。
ストロボであれば発光量で、レフ板であれば位置や角度で光の量を調整します。
このときの注意点としては「当てすぎない」ということです。
この光は、あくまで「補助」光なので、あんまりバチっと当てすぎると、不自然な写真になります。(まあその不自然さが面白い表現になったりもしますが 笑)
そして、この補助光のメリットは、露出補正の場合と違って、背景を白飛びさせることなく被写体を明るくすることができるという点です。
露出補正の場合は、画面全体が同時に明るくなりました。
被写体だけを明るくするということはできませんでした。
露出補正で明るさを調整する場合は、画面全体の明るさがいっぺんに上下するので、暗かった被写体が明るくはなりますが、明るかった背景はさらに明るくなります。
結果的に背景のディテールが飛んだり、階調が損なわれたりします。
しかし、補助光の場合は、光を当てるのは被写体に対してだけなので、背景と被写体の明るさを別々にコントロールすることができます。
カメラの露出設定で写真全体の明るさを調整し、当てる補助光の量で、被写体だけの明るさを調整するのです。
これによって、背景の階調を損なうことなく、被写体の明るさも明るくすることができます。
逆光の撮り方まとめ
それでは逆光写真の撮り方をまとめましょう。
逆光の表現を選択
まず、逆光の表現として2種類ありました。
- シルエット
- ほどよい明るさ
まずは、被写体の明るさをどうするのかを決めます。
黒くツブしてシルエットにするのか、それともほどよい明るさにしてちゃんと見せるのか。
明るさをコントロール
そして、明るさをコントロールする手段は、2種類ありました。
- 露出補正
- 補助光
露出補正は、カメラの設定をいじるだけなので簡単です。
- 被写体をキチンと見せる=明るくする=プラス補正
- 被写体をツブしてシルエットにする=暗くする=マイナス補正
しかし、露出補正は簡単ではありますが、画面全体でしか明るさをコントロールできないので、暗い部分を明るくすると、必然的に明るい部分も明るくなります。
結果的に背景の描写が損なわれる場合もあるので、それを避けるためには「補助光」という手段を用います。
補助光は、被写体にだけ光を当てるので、背景の描写を保ったまま、被写体を明るくすることができます。
ただし、ストロボやレフ板などの追加機材が必要になるので、面倒ではあります。
露出補正:
- メリット=簡単
- デメリット=背景の描写が損なわれやすい
補助光:
- メリット=背景の描写を残すことができる
- デメリット=面倒(カメラ内臓のストロボならそうでもないですね)
以上が、逆光撮影の仕組みです。
逆光写真の素敵さの秘密
逆光写真はなぜ素敵に見えるのでしょうか?
最後にその秘密に迫ってみましょう。
逆光のキモは「輝度差」
順光は正面から光が当たるので、被写体にも背景にも均等に光が当たります。
つまり、画面全体がフラットです。
画面全体に、明るさの差があまりありません。
それに対して逆光は、後ろから光が当たるので、背景は明るいけど、被写体の正面は暗くなります。
つまり、ギャップです。
背景と被写体に、明るさのギャップが生じるのです。
背景が明るくて被写体が暗いというこのギャップが、被写体を浮かび上がらせる要因です。
ですから、このギャップを埋めすぎてしまうのは、せっかくの逆光の効果を削ぐことになります。
逆光写真のポイント
↑こちらの写真は、逆光をレフ板で明るくしていますが、背景との輝度差がなくなるくらいに当てているので、「逆光の効果」という意味では薄いです。
背景と顔は輝度的にはフラットに近いです。
これは逆光の効果を狙ったというよりも、直射光はキツイので、柔らかい光を当てる目的で逆光+レフ板にしているという例です。
↑では、こちらの写真。
むしろさっきより顔が明るいんじゃない?と思われるかもしれませんが、背景はそれにも増してもっと明るいです。
つまり、顔の明るさは背景に比べると相対的に暗いのです。
ですから、逆光写真として成立しています。
そうです。
逆光写真のキモは、明るさそのものではなく、明るさのギャップにあります。
逆光写真を撮るならば、明るさそのものではなく、背景と被写体の明るさのギャップに着目し、そのバランスを取ることが、最も重要なポイントになります。
まとめ
はい。
改めて、「写真は逆光」ですね。
逆光において被写体は、相対的に暗く写ります。
暗いからこそ逆に目を凝らして見たくなるのです。
人は見せられるものより隠されたものを見たくなります。
逆光写真は、そんな人間の心理が影響しているのかもしれません。
なにしろ逆光写真は、人間の情緒をくすぐります。
「見せる写真」なら順光ですが、「魅せる写真」なら逆光です。
「逆光は七難隠す」は、あながち間違いでもないでしょう。
逆光写真の真のコツ
さて、少しのコツで写真が1ランクも2ランクもアップする逆光写真。
今回なんだらかんだら説明しましたが、ハッキリ言って今どきのカメラは賢いので、ただ単に逆光で撮るだけでイイ感じに写ります、ハイ。
今回の内容は、ただ単に撮ってみたけどうまくいかなかった場合に試してみてください。
正直、逆光撮影は全然難しくありません。
ただ単に逆光になる位置に移動して撮るだけです。
もっとも大事なコツは、逆光で撮ろうと思いつくことです。(笑)
あらゆるシチュエーションにおいて、「あ、逆光で撮ろう」と、ただ単に思いつくこと。
そして実際にその位置に移動して撮ること。
それが、逆光撮影の最大のコツです。(笑)