カメラを始めて一眼レフやミラーレスなどのちょっといいカメラを買うと、もれなくレンズに興味が湧きます。
「写真はレンズで決まる」なんて、カールツァイスという有名なレンズ屋さんも言っていましたね。
さて、世の中にあるカメラ用レンズを、まず2種類に分けるとしたら、以下の2つです。
- 単焦点レンズ
- ズームレンズ
そして、ズームレンズというのは、最初にカメラを買ったときについてきたり、カメラ屋さんのオススメで買ったりして、だいたいみなさんの最初の1本目となるレンズです。
そして、それにも慣れて、「さて次のレンズは?」となった時に、必ず候補に挙がるのが、「単焦点レンズ」です。
- 写りがいい
- よくボケる
- 写真が上達する
といった特徴を、みなさんもよく耳にすることでしょう。
その論調は「いいぞ!ぜひ使え」みたいなものが多いですが、実際のところはどうでしょう?
今回は単焦点レンズの特徴を、改めてチェックしていきます。
単焦点レンズはもちろん、ズームとは違った特徴を備えていますが、それを「良い」と見るか「悪い」と見るかは、結局は使う人次第です。
単焦点レンズは何でもかんでも「イイ!」というわけではありません。
この記事で最終的にあなたに合っているかどうかが判断できますので、購入を迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
単焦点とズームの違い
まず、単焦点とズームの違い。
これはいろいろ言われますが、本来の違いはひとつだけです。
それはレンズの「焦点距離」が固定か可変かの違いです。
単焦点とズームの違いについては、
- 価格
- F値
- 大きさ・重さ
- 描写性能
などなど、いろいろ言われますが、本来の違いは、この1点だけです。
その他の違いは、あくまで「そういう傾向が見られる」という程度のものであって、確実な違いとは言い切れません。
- バカ高い単焦点レンズもありますし、安いズームもあります。
- デカくて重い単焦点もありますし、小さくて軽いズームもあります。
- 単焦点のオールドレンズより、最新のズームのほうが高性能だったりします。
ですから単焦点とズームの比較はまず、
- 焦点距離が固定=単焦点レンズ
- 焦点距離が可変=ズームレンズ
という、本来の違いから入りましょう。
焦点距離とは?
では「焦点距離」って何?という話ですが、焦点距離とは「写真に写る範囲」と理解しておけばよいでしょう。
焦点距離は「28mm」「50mm」「85mm」などと「mm(ミリ)」という単位で表され、数字が小さいほど広い範囲が写り、数字が大きいほど狭い範囲が写ります。
お手持ちのズームレンズのズームリングを回してみると、ファインダーの中で画面が広くなったり狭くなったりすると思います。
ズームリングは焦点距離が「可変」なので、そのように1本のレンズで写真に写る範囲を変更することができるのですね。
それに対して単焦点レンズは、そのように1本のレンズで写真に写る範囲を変更することができず、「固定」ということです。
単焦点とズームの撮り方の違い
写真に写る範囲が固定の「単焦点」と、写真に写る範囲が可変の「ズーム」。
この両者では、写真を撮るときにどのような違いが生まれるのでしょうか。
本来の写真の撮り方
そもそもの写真の撮り方というのは、
- 立ち位置を決める(被写体との距離を選択する)
- その立ち位置から、どの程度の範囲を切り取るのかによって、レンズの焦点距離を決める
という二段構えでした。
カメラマンの立ち位置によって、まず写真の見え方(=描写)が決まり、そこからどの程度の範囲を切り取るのかによって、レンズの焦点距離を選ぶという手順です。
しかしながら実際の撮り方は、以下のような傾向を呈します。
ズームレンズユーザーの撮り方
ズームレンズを使っている人の「実際の」撮り方。
それは立ち位置を動かず、今いるその場所からズームによって写る範囲を選択する、というものです。
ズームレンズユーザーのみなさん、いかがですか?
自らの意思で被写体との距離を選択し、その後にズームレンズの焦点距離をしかるべき数値にセットし、それから撮る。
そんな撮り方をしている人っています??
普通は、今いる立ち位置からズームリングをぐるぐる回してファインダーの中で被写体がちょうどいい大きさになるように調整して撮る、ですね。
つまり、ズームレンズユーザーの実際の撮り方は、
立ち位置を動かない。
というものです。
単焦点レンズユーザーの撮り方
では次に、単焦点レンズユーザーの「実際の」撮り方。
それは、今カメラについているレンズの焦点距離に合わせて立ち位置を動く、というものです。
単焦点レンズユーザーのみなさん、いかがですか?
基本的に今カメラについているレンズ、あるいは「使いたいレンズ」が先にあり、それに合わせて立ち位置を決めていませんか?
50mmなら50mm、35mmなら35mmという「焦点距離」が先にあり、それに合わせて自分が動いて写真に写る範囲を調整しているのです。
つまり、単焦点レンズユーザーの実際の撮り方は、
レンズに合わせて立ち位置を動く。
というものです。
「レンズに合わせて立ち位置を動く」がNGな点
「ホワッツ?レンズに合わせて立ち位置を動くことの何がいけないの?」
「自分の足で動くからこそ、単焦点を使うと写真が上達するんでしょ?」
ノンノン。
なんで足を動かすことと写真の上達が関係あるんですか??
よく考えたら意味不明です。
足を動かすことで足は鍛えられるかもしれませんが、写真の腕は鍛えられません。
写真の上達に関係するのは「自分の意思で立ち位置を選択すること」であり、「足を動かすこと」とは無関係です。
極端な話、自分の意思で立ち位置を選択するならば、移動の手段は飛行機でも車でも何だって構いません。(笑)
先ほどの単焦点レンズの実際の撮り方のマズい点は、その立ち位置を決めるのがカメラマンの意思ではなく、その時カメラについているレンズの焦点距離だという点です。
立ち位置決定の主導権が「あなたの意思」ではなく、「今カメラについているレンズの焦点距離」にあるのです。
「写真の内容」に合わせて「レンズを選択」するのではなく、「レンズの選択」に合わせて「写真の内容」を決定するのです。
レンズが「主」で、写真の内容は「従」です。
単焦点レンズユーザーが陥りやすいのは、実際に自分の足で動いて撮っているから、「撮っている気になる」点です。
「ズームユーザーとは違うゼ、ちゃんと自分の足で動いてるんだゼ」と、妙な優越感にひたっている場合ではありません。
やっていることはズームユーザーと五十歩百歩です。
むしろ、自分で立ち位置を選択したうえで、ズームの焦点距離をセットして撮っている人がいたら、ズームユーザーとはいえそっちのほうが本来の撮り方です。
単焦点レンズは、「ただ使えばいい」というものではないのです。
単焦点レンズの正しい使い方
じゃあ単焦点レンズは一体どういうふうに使えばいいんだyo?という話になりますが、それはもう適切なレンズ交換です。
- 立ち位置を選択
- 適切なレンズをセット
です。
そうです。
単焦点レンズは めんどくさいのです。
そもそも、速写が命のスナップ撮影などでは、レンズ交換しているヒマもないことすらあります。
複数のレンズを持ち歩かなくてはいけないので、荷物も増えます。
レンズ交換時にカメラ内にゴミが入る恐れもありますし、そもそもレンズを落っことすリスクもあります。
さらに上記のとおり、写真の上達という観点では単焦点を使う意味は全くありませんでした。
それでも単焦点を使いますか?
むしろズームのほうが、72mmとか64mmといった単焦点レンズには存在しない中途ハンパな画角が使えて便利なくらいです。
じゃあいったい単焦点レンズを使う意味ってなんだyo!?!?ってことになりますが、ここにきてようやく本題に入ります。(笑)
単焦点レンズを使う意味
何を隠そう筆者は単焦点レンズユーザーです。(笑)
なぜ単焦点を使うのか?
- めんどくさい
- 荷物が増える
- 交換時のゴミ混入や落下のリスク
といったネガティブな要素を乗り越え、それでもなお使うに至らしめるその原動力とはいったい何なのか!?
それは、写りがキレイだからです。
それだけです。(笑)
ボケもそうですし、収差の少なさもそうですし、レンズの構成枚数の少なさからくる光のクオリティの高さもそうです。
言ってみれば、あなたが単焦点を使うか使わないか、その選択の分かれ目はまず、
「写りがキレイと思えるか?」
であり、それからその価値が先ほど見た、
「幾多のデメリットを上回るか?」
ということです。
実にシンプルです。
あなたが単焦点レンズに見るべきは、まずその画質です。
その画質が、何としても欲しいのか、それともそれほどでもないのか。
単焦点を使う、使わないは結局、この1点に集約されます。
実際、単焦点レンズの画質に関する感想は、
「は?どう違うの!?全然わかんねーよ」
というものから、
「マジ感動…♡」
というものまで、極めて個人差の激しいものです。
だから、実際に使ってみないとわからないのです。
単焦点を使う・使わないを判断する方法
そして、それを知るために最適なのが、「50mmF1.4」(あるいは「50mmF1.8」)を実際に使ってみることです。
(もちろんこの50mmは、いわゆる35mm判換算です)
50mmF1.4(またはF1.8)は、
- 価格がこなれている
- 開放F値が小さい(ボケが大きい)
- 広角にも望遠にも偏らない、いわゆる「標準レンズ」である
つまり、単焦点を味わってみるには最適なのです。
そして、足で動くとか、写真の上達とかは考えなくてもいいので、単純に「画質」を見てください。
どうですか?イケてますか?
幾多のデメリットを引き受けてでも欲しいですか?
それとも全然ズームの画質で十分ですか?
これが、あなたが単焦点を使うか使わないかを判断する、シンプルな方法です。
まとめ
もちろん、今回お話した内容は、あくまで原理原則です。
そもそも描写(立ち位置の選択)にはこだわらない写真もあるでしょうし、速写重視の撮影もあるでしょうし、レンズを主にする撮影もあります。
写真の楽しみ方、優先順位は人それぞれですから。
今回お話したのは、あくまで「写真の内容」を最優先にする撮り方です。
なぜなら、写真の上達を主目的としている読者を想定しているからです。
「単焦点を使えばうまくなる」「自分の足で動けばうまくなる」と、なんとなく思っていた(思わされていた)なら、今回の記事で本当のところを理解していただければと思います。
写真に限らずですが、物事をやるときは「なんとなく」やるのではなく、「なぜそうなのか」を理解することが大事です。
写真の内容を重視する、つまり写真の上達が目的ならば、それに沿った方法でやる必要があります。
写真に関する情報は、本当にピンからキリまで存在しますので、鵜呑みにせず、しっかりと自分の目と頭で判断することが大切です。
そのためにも、実際にやってみることが必要です。
ズームか単焦点か。
それは実際に使ってみるしかありません。
記事をいくら読んでも、ネットの比較画像を穴が開くほど眺めても、自分で実際に使ってみないとわからないのです。
実際に使って、自分の目と頭とハートで判断するしかないのです。
その際の判断基準として、いろんなゴチャゴチャはすっ飛ばして、単純に「画質」を見てくださいという話です。
単焦点は、上手くなるために使うのではありません。
画質がキレイだから使うのです。
これがシンプルな真実です。
今回の記事があなたの単焦点・ズーム選択の、リアルな一助になれば幸いです。