キヤノンのコンパクトデジタルカメラ「PowerShot G7 X MarkⅡ」をしばらくヘビーに使ってみましたので、その画質と使用感をレビューしたいと思います。
このカメラは、現時点(2017年)最強のコンデジであると筆者が結論付けたカメラです。
その理由は以下に詳細に書きましたので、未読の方はコチラからどうぞ。
前回は、実使用前のスペック情報から結論を導き出したわけですが、今回は、購入後の実使用レポートです。
実際に使ってみると、購入前にはわからなかった要素も、いろいろと見えてきます。
それらをふまえた上で今回は、PowerShot G7 X MarkⅡの特徴と使い方を解説していきます。
(高級コンデジ全般の使い方についてはコチラ↓)
目次
キヤノン PowerShot G7 X MarkⅡ【画質編】
まずは画質から。
このカメラの画質に対する印象は、以下の3点に集約されます。
- よく写る
- キレイに写る
- よくボケる
もちろん、頭には全て「コンデジにしては」という前提はつきますが♪
1コずつ見ていきましょう。
よく写る!
よく写る。
うん、漠然としていてよくわかりませんね。(笑)
しかし、撮れた写真の第一印象はコレです。
「お~、よく写る!」
ハードウェアとしてのカメラは、さまざまな部品から構成されていますが、画質に直接影響するのは、その中でもレンズとセンサーです。
ですから、この「お~、よく写る!」という印象も、
- レンズの性能
- 大型の1型センサー
という、2つの物理的な要素によってもたらされる部分が、まずは大きいでしょう。
レンズ
このカメラのレンズは、非球面レンズ3枚とUDレンズ1枚を用いた光学設計。
それからEFレンズにも導入されているスーパースペクトラコーティング。
コンデジにしては贅沢なレンズです。
センサー
それから、大型の1.0型CMOSセンサーは、受光面積の広さにおいて小型のものより大きなアドバンテージがあります。(1/1.7型センサーと比較して約2.7倍)
受光面積が広いと、それだけ取り込む情報量が多くなり、結果的に画質が向上します。
まずは単純に、これらハードウェアのスペックの高さが、そのまんま画質にも反映されていると言っていいでしょう。
キレイに写る!
キレイに写る。
これも感覚的なものなので、なかなかわかりにくいですね。
DIGIC7の効果
これは、画像処理エンジンが「DIGIC 7」という最新のものにアップデートされた効果が大きいと思います。(旧型はDIGIC 6)
画像処理エンジンが、「人の感覚的な部分にまで踏み込んでいる」という印象なのです。
人が「好ましいと思う絵」に、画像処理エンジンによって仕上げられている。
そのような印象があります。
上記のリンクが如実に説明していますが、感覚的に上の写真のほうが「キレイ」「好感」という印象ではないでしょうか。(上がPowerShot G7 X MarkⅡ、下が一世代前)
防犯カメラの分野でも、高い画像判別技術を発揮しているキヤノンですが、絵の内容と人間の感覚のマッチングが、技術的にもかなり進んできているのでしょう。
「キレイに写る!」という印象は、人間のキレイと思う感覚をうまく取り入れた処理を施している、ということですね。
PowerShot G7 X MarkⅡの絵作り
まとめると、
- レンズやセンサーといった「ハードウェア」で客観的な「よく写る」を実現
- 画像処理エンジンという「ソフトウェア」で主観的な「キレイに写る」を実現
です。
硬軟両面から絵をまとめているわけですね。
よくボケる!
よくボケる。
これは、センサーサイズの大きさと、極めて明るいレンズがもたらす必然的な結果です。
センサーサイズは「1型」とコンデジにしては大きく、レンズの明るさも「F1.8〜F2.8」と極めて明るいです。
ボケの要因
ボケる、ボケないを決定する要因は、
- レンズの焦点距離→長いほどボケる
- レンズの明るさ(F値)→明るいほどボケる
- 撮影距離(ピント位置までの距離)→近いほどボケる
です。
3つの要因のうち2つまでがレンズによって決まりますね。
そして、センサーサイズの大きさは、「そのカメラで使うレンズの焦点距離を規定する」という意味で、間接的にボケ具合に影響を与えます。
センサーサイズとボケの関係
よく、「センサーサイズが大きいからボケやすい」という言い方をしますが、正確にはセンサーサイズが大きいからボケるわけではありません。
センサーサイズが大きくなることによって、必然的にレンズの焦点距離が長くなるから、ボケるのです。
たとえば、同じ45°くらい(いわゆる標準レンズ)の画角を写す場合の焦点距離はそれぞれ、
- 1型サイズだと18.5mm
- APS-Cサイズだと35mm
- フルサイズだと50mm
となります。
同じ画角を写すのに、センサーサイズが大きくなるほど焦点距離が長くなっています。
そしてレンズの焦点距離は「長いほどよくボケる」でしたね。
大きなセンサーサイズは必然的にレンズの焦点距離が長くなるので、結果的にボケやすい、という仕組みです。
キヤノン PowerShot G7 X MarkⅡ【使用編】
では、使用編にいきましょう。
このカメラは基本的に「コンデジ」なので、コンデジらしく「シャッターを押すだけ」という使い方が基本です。
その手順は、
- 背面の液晶画面に、撮る絵を映し出す
- シャッターを半押ししてピントと明るさ(露出)を固定する
- そのピント位置と明るさで良ければ、シャッターを全押しして撮影する(調整が必要なら、調整後にシャッターを切る)
というものです。
実にカンタンです。
フレーミングとピント合わせ
このカメラは、タッチフォーカス・タッチシャッターに対応しています。
ですから、最初にシャッターを半押ししたときに、ピント位置が気に入らなければ、液晶画面上で、直接指で「ココ」と指定ができます。
あるいは、シャッターボタンすら使わず、画面内でピントを合わせたい位置をタッチするだけで、いきなりシャッターを切ることもできます。(タッチシャッター)
これは、非常に便利な機能で、これによって根本的に写真の撮り方が変わります。
一眼レフのピント合わせとの比較
例えば一眼レフでスナップを撮る場合は、中央1点にフォーカスポイントを固定し、まずピントを合わせたい部分を画面の中央に持ってきて半押しでピント合わせをし、その後にカメラを振ってフレーミングし直して全押しという手順が一般的です。
「(中央で)ピント→フレーミング→シャッター」「(また中央で)ピント→フレーミング→シャッター」「(また中央に戻して)ピント→フレーミング→シャッター」です。
この方法に行き着くのは、一眼レフのようなボケの大きい写真が写るカメラでは、ピント位置をしっかりとコントロールしないと、いわゆる「ピンボケ写真」になってしまうからです。
雑にフォーカスをとっていると、後からすごく後悔します。
そんな後悔を繰り返した結果、上記の「中央1点式」に行き着くのです。
「中央1点式」のピント合わせ
まず一眼レフでは、カメラ任せのどこにピントが合うかわからない「オート」のフォーカスポイント指定ってのもありますが、これはギャンブル以外の何物でもありません。
それはもはやコントロールの放棄です。
それから、フレーミングを決めてからフォーカスポイントを指定するやり方もありますが、これは1カット毎にダイヤルやレバーでフォーカスポイントをそのカットで最適な場所に移動させなければいけません。
「さっきは右上、次は左下」なんて、まどろっこしすぎてスナップ撮影ではとても現実的ではありません。
結局、「機械的に最も精度が高い」&「無駄な操作不要」&「どっちに振っても偏りがない」ということで、「中央1点+再フレーミング」というやり方に落ち着いてしまうのです。
親指AF
そして一眼レフでは、「ピント合わせ」と「シャッター」の機能を別々のボタンに割り振る、「親指AF」なる撮り方もあります。
親指のボタンでピント合わせをして、人差し指の(シャッター)ボタンでシャッターを切るという方法です。
これによってシャッターボタンの「半押し」はAF機能から開放され、ピントを固定したままで次々にシャッターを切ることができます。
(半押しにAF機能が残っていると、シャッターを押すたびにピント位置が動いてしまう)
この方法だと、「ピント→フレーミング→シャッター」のあとは、「シャッター」「シャッター」「シャッター」です。
ピント合わせは最初の1回だけで済むので、非常に速写性に優れています。
しかしこの方法は、その最初の1回のピントが外れていたら、その後に続く全てのカットが全滅、というリスクがあります。
一眼レフにおいて「速写性」と「確実性」はトレードオフの関係であり、なかなかバランスが難しいわけです。
ところが!
「PowerShot G7 X MarkⅡ」では、なんとこの2つを両立しているのです。
PowerShot G7 X MarkⅡのピント合わせ
この「PowerShot G7 X MarkⅡ」も、明るいレンズと大型のセンサーを搭載しているので、しっかりピント合わせしないと結構ボケます。
コンデジとはいえ、このカメラで「ピント合わせ」は結構重要な作業です。
でもこのカメラでは、一眼レフみたいにピントのためにカメラを振ったり戻したりしなくていいのです。
最初にフレーミングを決めたら、もうそのままフレーミングは固定でOKす。
なぜなら画面内どこでも、指でタッチするだけでそこにピントが合うからです。
また、タッチしたフォーカスポイントは、一回指定したら再指定するまで、ずっとそのポイントに固定され続けます。
それによって、シャッター半押しで、再び同じフォーカスポイントのピントを取り直すことができます。
この点が、最初に決めたピントは取り直さない、親指AFなどとの違いです。
親指AFでは、最初のピント合わせに失敗したら、後に続く全てのカットが失敗写真になりますが、このカメラでは1シャッターごとにピントを取り直すので、そのリスクを回避できます。
つまり、1シャッターごとにピントを取って「確実性」を担保しながら、フレーミング固定でOKな「速写性」も実現しているわけです。
「フレーミング→ピント→シャッター」のあとは、「ピント→シャッター」「ピント→シャッター」「ピント→シャッター」です。
カメラを振ったり戻したりという、分断されるような作業がないので、ひとつのフレーミングに対してじっくりと向き合うことができます。
これはむしろ、「本来のあるべき写真の撮り方」と言えるのではないでしょうか。
ピントのためだけの無駄な動きをする必要がないのです。
親指AFと同じように、フレーミングとタイミングに集中でき、それでいて親指AFより確実性が高いのです。
フォーカスの精度やスピード
ただし、このカメラの問題点は、AFの挙動がイマイチなところでしょう。
狙ったポイントに一発でいかない、何度半押ししてもなかなかピントが合わない、ということはザラにあります。
タッチフォーカスという仕組み自体は素晴らしいですが、その精度については、まだまだこれから、といったところです。
露出合わせ
次は露出について。
このカメラは、露出補正ダイヤルが独立して存在します。
ふつう露出補正は「露出補正ボタンを押して→ダイヤルで数値調整」という2段階の手順を踏むことが多いですが、このカメラでは「ダイヤルで数値調整」の1段階で済みます。
一眼レフのような「じっくりカメラ」の場合は、露出の決定もマニュアルでじっくり考えたりもしますが、コンデジのような「パッ撮りカメラ」では、露出はほとんど「オート+露出補正」の一択です。
要はコンデジにおいて露出の調整は、「露出補正」の1点にかかっている、ということです。
そんな唯一のコントローラーを独立したクイックアクセス式にしたのは、キヤノンの面目躍如たるところでしょう。
そして、露出補正した明るさは、撮影前の液晶画面にも反映されます。(反映させない設定にもできます)
実際に撮れる「現物の絵」で明るさを調整できるので、非常に便利です。
ちなみにこのダイヤルは適度なクリック感があり、誤って動くことはまずないと思います。
仮に動いたとしても、撮る前の明るさは常に画面に映し出されているので、異常な明るさ・暗さにはすぐに気がつくはずです。
PowerShot G7 X MarkⅡとタッチパネルの関係
さて、タッチパネル。
非常に直感的でわかりやすい、大変便利な代物です。
タッチフォーカスなんかはこれまでのカメラの常識を覆す、大きなインパクトでもありますね。
しかし同時に、このPowerShot G7 X MarkⅡというカメラでは、タッチパネルこそが最大のクセ者です。
それはつまり、予期せず触れてしまって誤作動を起こす、ということです。
PowerShot G7 X MarkⅡのタッチパネル
コンデジって手に荷物を持ちながら撮ったり、歩きながら撮ったり、結構わちゃわちゃした状況でわちゃわちゃと撮ることも多いものです。
そんな時に予期せぬ誤タッチでさらに画面内にわちゃわちゃが繰り広げられた日にゃあ、それはもうとんでもないわちゃわちゃになります。
このカメラの場合は、「クイック設定」の液晶画面上にあるボタンが、右手親指の触れやすい位置にあり、かなり頻繁に意図せず触れてしまいます。
これに触れると、画面内に「設定画面」が展開され、そこからさらにわちゃわちゃしてると予期せぬ変更が加えられてしまいます。
実際筆者も、記録画像サイズがLからMに知らない間に変わっていたり、ISO感度やピクチャースタイルが勝手に変わっていたりということがありました。
全く同じ機能を持つ物理的な「クイック設定ボタン」が背面にちゃんとあるのに、なんで誤タッチを起こしやすいパネル上にさらに配置したのかは疑問です。
もちろん、画面上の触れやすい位置にあるボタンは、クイックアクセスを見越してのことだと思いますが、クイックアクセス可能ということはイコール、意図しなくても変更されやすいということです。
この「変更のしやすさ」と「誤変更のされにくさ」は、メーカーとしても非常にバランスがむずかしいところだと思います。
「キヤノンカメラ」と「ニコンカメラ」の遺伝的性格
昔フィルムカメラの時代、ニコンのカメラは裏蓋を開けるのに2段階の操作が必要で、誤って開けることが無いように作られていました。
しかしキヤノンは1段階ですぐに開く作りでした。
ですから、キヤノンでは何度かフィルムが装填されているのに裏蓋を開けてしまったことがあるけど、ニコンでは皆無、とベテランカメラマンも言っていました。
つまり、クイックアクセス志向はキヤノンの伝統と言っていいでしょう。
これがすなわち、「攻め」のキヤノンと「守り」のニコンです。
かつてレンズマウントを電子接点式に変更する際も、キヤノンは大胆に径を変え、既存ユーザーを置いていくような攻めの姿勢を見せましたが、ニコンは旧式のFマウントと互換にしました。
これは、どちらが良い悪いの話ではなく、もはや企業としての遺伝的性格の話です。
このキヤノンの「攻め」は、先ほどの露出補正ダイヤルを独立式にするという点では大いに功を奏しましたが、パネル上の「Q」ボタンについては、裏目に出た印象です。
「誤操作のされにくさ」は「操作のしやすさ」と同じくらい大事です。
攻めも大事だけど、守りも大事です。
せめてボタン表示を消すオプションはあってもいいと思いますね。
(このカメラの画面表示は「全て表示」か「全て非表示」の2択しかありません)
誤タッチ対処方法
というわけで、画面上の「Q」ボタンだけを消したい場合は、以下の方法で可能です。
- 背面右下の「MENU」ボタン
- →赤エリアの撮影設定の「2番タブ」
- →「クイック設定カスタマイズ」
- →「表示するメニュー項目」のチェックボックスを全て外す
これによって、画面上から「Q」ボタンの表示を消すことができます。
ただしその場合、背面の物理ボタンも効かなくなります。
つまりこれは、「クイック設定」という機能そのものを使えなくしてしまう、という対処方法なのです。
ですから筆者の場合はその代替手段として、背面右下の「MENU」ボタン内にある「マイメニュー」に、よく使うメニューを登録して使っています。(最大6コまでメニューを登録できる)
これで「MENU」ボタンを「クイック設定ボタン」として、疑似的に使うことができます。
実際に使ってみないとわからない要素って、どんなカメラにもあると思いますが、筆者の場合ココが最大のポイントでした。
(その次にAFのもたつき)
キヤノン PowerShot G7 X MarkⅡ【レビューまとめ】
さていろいろと書きましたが、このカメラは概ね素晴らしいと言っていいでしょう。
レビューをまとめると、
- 基本的にシャッターを押すだけで、素晴らしくキレイな絵が撮れる。
- タッチフォーカス・ダイヤル式露出補正などにより、スムーズに絵に集中できる。=とても撮りやすい。
- 背面液晶がチルト式なので、カメラポジションの幅が広い。
- ふつうのコンデジと違って撮影者側でコントロール可能な部分が多く、オートでは撮影者の意図を外れてしまう部分に対して、補正を効かすことができる。
期待される改善点としては、
- 誤作動を起こしにくい構造・配置。
- AFがもたつく。(意図したポイントにフォーカスを合わせるのに、非常に時間がかかる場合がある)
- 液晶画面に表示される要素を選べるようにして欲しい。(現状無駄な表示が多い)
- 若干重い。
といったところです。
まとめ
「ベストなカメラとは、いつも手元にあるカメラだ」
と、どこかの写真家が言っていたような気がしますが、そういう意味でこのカメラは、ベストになりうるカメラです。
- 常に持ち歩ける
- 簡単に撮れる
- キレイに写る
三拍子そろった特徴は、日常に密着した「日々のカメラ」として最適です。
写真は「その場にカメラ持っていなければ撮れない」という大前提があります。
そういう意味ではスマホが「最強のカメラ」と言われることもあります。
この「常に持っていられる」という要素は、実はカメラにとって画質やAF速度などより、よっぽど重要かもしれません。
そんな重要な特徴をもっとも体現するコンデジは、今後の進化がますます楽しみな存在でもあります。
今回はたまたまキヤノンの「PowerShot G7 X MarkⅡ」のレビューでしたが、いわゆる「高級コンデジ」というジャンルについては、ぜひみなさんにもチェックしてみていただきたいところであります。