唐突ながら、持ち歩き用のコンデジを買いました。
昔は旅行にも一眼レフを持ち歩いたものですが、最近は年のせいか、重さに対する耐性がめっきり失われました。
記事のいたるところで「軽さ軽さ」と連呼している印象が、みなさんにもあるかもしれません。(笑)
年とともに、画質に対するこだわりは薄れ、軽さに対するこだわりが強くなりました。
「写真は画質じゃなくて内容だ!そして内容のためには軽く扱える機材だ!」
そんな言い訳を用意して、君の住む部屋へと急ぐわけであります。(笑)
さて、前回コンデジを購入したのは、もうかれこれ15年くらい前です。
当時、フジのFine Pixなんたらという正方形っぽいカメラを買ったのを覚えていますが、それ以来コンデジ選びとはほとんど無縁のまま、今日まで過ごしてきました。
(ちなみに今使っているキヤノンのコンデジはもらいものです)
というわけで、最近のコンデジについては、まるっきり浦島太郎状態です。
そんな海の底から帰ってきた筆者が今回、まっさらな状態から何の偏見もなく、理屈だけで最強のコンデジを選んでみました。
今回はその最強コンデジに至る過程の、迫真のドキュメントです。(笑)
コンデジ選びのポイントも含めて解説していますので、これからコンデジを買おうという方は、ぜひ参考にしてみてください。
また、カメラ選びにうんうん迷っている人にも、参考になる内容だと思います。
目次
コンデジ機種の現状
コンデジ市場の規模はずいぶん縮小したといいますが、なんやらかんやら、結構な数の機種が市場に出回っています。
HPに載っている、主要メーカーの現行機種を数えてみます。(2017年7月現在)
- キヤノン=13機種
- ニコン=9機種
- ソニー=18機種
- パナソニック=8機種
- カシオ=18機種
などなど。
コンデジ市場の冷え込みのニュースが嘘のように、迷うのに十分な数の機種が用意されています。
この中から、自分にとってベストな機種を選定するのは、なかなか大変な作業であることが想像されます。
しかし、迷うのはなんで迷うのかと考えると、それは欲しい機能、必要な機能が絞れてないからですね。
逆に言うと、欲しい機能、必要な機能を絞り込んでいけば、自動的に機種は決まってきます。
機種選びとはすなわち、欲しいカメラ(機能・性能)を明確にすることとイコールです。まあ当たり前かもしれませんが。
そんなわけでまずは、欲しい機能、必要な機能を洗い出してみましょう。
コンデジにおいて望むべき機能とは
では今回のコンデジ選びにおいてピックアップした欲しい機能、必要な機能をまとめてみます。
コンパクト性
「コンパクト性」
まずはこれです。
コンデジの「コン」は、コンパクトの「コン」なわけですから、コンパクトでなければ、そもそもコンデジではないわけです。
というか、「コンパクト」だからコンデジを買おうと思うわけであり、コンパクトでないなら買わないわけです。(笑)
コンパクトさはコンデジの命です。
そして、「小さい」「携帯性に優れている」ということは、カメラにおいて かなり重要な性能 です。
小さいことによって、被写体に身構えさせないので、よりナチュラルな雰囲気が撮りやすくなります。
そして、街中や人ごみでも目立たないので撮りやすいです。
また、携帯性に優れているということは、いつでも持ち歩こうという気になり、結果的に使用の機会が増えます。
そして、撮影とは関係のない機材の運搬の部分で余計なエネルギーを使わなくて済みます。
「写り」がより重要な場合には一眼レフやミラーレスを使い、「コンパクト」がより重要な場合にはコンデジを使う。
そんな使い分けもできますね。
コンデジによっては、「コンデジ」というくくりの中にいながら、一眼レフみたいなナリで、ちっともコンパクトではないカメラもありますが、コンデジはやはり「いかにコンパクトか」を最重要ポイントにしたいわけであります。
画質
次に画質ですが、スマホではなく、わざわざ「単体カメラ」を買うからには、スマホを超える画質は欲しいわけです。
スマホと同じならスマホを使えばいいわけですから。
そして、デジカメにおいて画質に影響を及ぼすのは、
- センサー
- レンズ
- 画像処理エンジン
です。
画像処理エンジンについては、単純な比較がしづらいので、ここでは単純に数字で比較ができる、
- センサーサイズ
- レンズのF値
- レンズのズーム域
に着目しましょう。
具体的に言うと、
- センサーサイズ→1型以上(高画質のラインと言われています)
- レンズのF値→なるあか(なるべく明るく)
- レンズのズーム域→それなが(それなりに長く)
です。
F値の「なるあか」については異論はないと思いますが、焦点距離の「それなが」については、異論があると思います。
つまり、ズームではなく「単焦点」はどうなの?ということです。
「単焦点」か「ズーム」か
コンデジにおける「単焦点」(=高画質)。
それはどういう場合に選ばれるのかというと、「作品志向」あるいは「撮影自体を楽しむ」場合です。
「高画質」は言うまでもなく、作品に対するこだわりが要請する部分です。
そして「単焦点」は、「自ら動いて撮影する楽しみ」に関連します。
つまり、「単焦点・高画質」のコンデジは、言ってみれば「特化型」カメラのひとつなのです。
「ある特定の目的」のためのカメラです。
筆者の場合、それはライカのフィルムカメラがカバーする領域であり、コンデジに求めるのは、「どのような状況でも撮れる」という「オールマイティー性」のほうです。
コンデジを選ぶ場合、この「特化型」か「オールマイティー型」かという観点を持ち込むと、比較的スムーズに進行するでしょう。
使い勝手
さて、最後のポイントは「使い勝手」です。
「営業利益」という言葉があります。
それは、会社の本業での儲けを表しています。
そして「経常利益」という言葉もあります。
こちらは資産運用など「本業以外」の実績をプラスした数値です。
そして、投資家がチェックすべきは「トータルな利益」である経常利益のほうだと言われています。
つまり、我々はカメラに投資する「投資家」なわけですから、投資に見合ったリターンを期待する場合、本業の性能である「画質」だけでなく、トータルな性能である「使い勝手」も含めて見る必要があるということです。
そんな画質以外の「使い勝手」の部分とは、たとえば、
- Wi-Fi機能
- USB充電
- 可動式液晶画面
- タッチパネル
- ビューファインダー(EVF)
といったものです。
そして、この使い勝手の中でも特に重要視したいポイントは、撮影に直接関わってくる部分です。
たとえば、シーンモード(ポートレートモード、風景モードなど)やエフェクト(トイカメラ風、HDR風など)がどれだけあっても、それらは撮影の本質的な部分とはあんまり関係がありません。
そして、コンデジ選びに15年のブランクがある筆者が目を止めたポイントとはズバリ、液晶画面のチルト機能 と タッチフォーカス(タッチシャッター)です。
液晶画面のチルト機能とタッチフォーカスについて
「液晶画面のチルト機能」と「タッチフォーカス」。
15年前からやってきた浦島太郎が、もっとも注目したポイントがココです。
これは「カメラ」から「デジタルカメラ」へのハードウェアの進化における、最重要ポイントと言っていいでしょう。
なぜならこれらは、根本的に写真の「撮り方」を変更するもの だからです。
液晶画面のチルト機能
液晶画面のチルト機能によって、カメラポジションの上下の幅が、「約2倍」になります。
普通のアイレベルファインダーのカメラだと、「立った目の位置」から「しゃがんだ目の位置」。
これが一般的に選択できるカメラポジションの幅です。
(もちろん「寝そべる」という選択肢もありますが、そこまでやります? 笑)
それが、カメラの背面液晶が上下に振れることにより、「頭上に腕を伸ばした高さ」から「地面の高さ」まで使えるのです。
これは大いなる可能性の飛躍です。
カメラポジションの上下の幅が、約2倍になるということは、撮れる絵のバリエーションも、「約2倍」になるということです。
これは、カメラのデジタル化がもたらした、大きな躍進と言っていいでしょう。
ちなみに、液晶画面のチルトは一方向にしか動かない機種もあります。
機種選びの際は、どっちの方向にどれくらい動くのかが、重要なチェックポイントになるでしょう。
タッチフォーカス・タッチシャッター
そしてもうひとつのコンデジにおける重要な躍進が、「タッチフォーカス(タッチシャッター)」です。
一眼レフのスペックにおいて、オートフォーカスの「測距点の数」が話題になるのは、みなさんよくご存知のことと思います。
ファインダー内の何点でオートフォーカスが効くか、というその「点の数」ですね。
当然点の数が多いほど、画面内のどこにでもフォーカスを合わせることができるので便利です。
と、思いきや、本当にそんな画面内全域のフォーカスポイント使うの!?
という疑問を、実はみなさんお持ちだったのではないでしょうか。
なぜなら、そのフォーカスポイントを選択するのに、ダイヤルをぐるぐる回したり、レバーをこつこつクリックしたりと、ウソみたいな手間が必要だからです。
まあ、三脚に据えて撮影する場合なら便利かもしれませんが、もっとも多い撮影状況である手持ちのスナップ撮影においては、そんなまどろっこしい手間がかかっては、実際あまり使えないのではないでしょうか。
「ああ、ファインダー内の『ココ』って直接指定できたらいいのに!」
そう思っていた人も少なくないと思います。
それをまさに現実にしたのが、この「タッチフォーカス(タッチシャッター)」です。
これは、昔からのカメラファンにとっては、まさにドラえもんのどこでもドアが実現した かのような「夢の実現」でしょう。
「どこでもドア」ならぬ「どこでもフォーカス」です。
空想が現実のものとなったのです。
そしてもちろん、タッチでフォーカスだけでなくシャッターも切れるなら、こんなに便利なことはありません。
この「タッチフォーカス(タッチシャッター)」も、撮影の可能性を広げる、コンデジにおける大いなる躍進と言っていいでしょう。
現時点最強のコンデジ「PowerShot G7 X Mark II」
さて、今回のコンデジ選びにおける、必要条件が出揃いました。
- コンパクト
- 1型以上のセンサー
- 明るいレンズ
- それなりのズーム域
- チルト液晶(上下に可動)
- タッチフォーカス・タッチシャッター
です。
2017年7月現在、この条件全てを満たす機種は1機種 だけです。
それが、キヤノンの「PowerShot G7 X Mark II」です。
必要条件を絞り込むことによって、なんの迷いもなく自動的に買うべき機種が決まってしまいました。
カメラ選びは必要条件さえしっかり絞り込めれば、実にカンタンなものです。
「PowerShot G7 X Mark II」の特徴
それでは「PowerShot G7 X Mark II」の、今回の必要条件に対する当てはまり具合を確認してみましょう。
コンパクト
まあ、ギリギリ「コンパクト」と言っていいでしょう。
コンパクト性だけを追求すると、そのカメラは画質や性能がどんどんスマホに近づいていってしまいます。
いわゆる、量販店の店員さんに「やめとけ」と言われてしまうレベルのカメラです。
ですからコンパクト性も、画質・性能といったトータルのバランスから判断する必要があり、そういう意味でこのカメラはギリギリ「コンパクト」の範疇、と言っていいでしょう。
1型以上のセンサー
1型です。
明るいレンズ
F1.8~F2.8です。
ちょっと前ならコンデジでこの明るさは考えられませんでした。
単焦点ならいざ知らず、ズームですよ!
コンデジの中でもトップクラスの明るさです。
ズーム域
24mm~100mmです。
いわゆる「標準ズーム」と言われる、もっとも使用頻度の高いズーム域です。
テレ端も100mmと申し分ありません。
高倍率ズームについて
ちなみに、テレ端(望遠側の最大値)については、200mm、300mm、500mmというような、いわゆる「高倍率ズーム」を謳う機種もあります。
しかし、ハッキリ言って200mm以上の長焦点は、野鳥でも撮らない限り日常使用においてほぼ使わない領域です。
それらは文字通り「飛び道具」と言っていいでしょう。
200mmを超える高倍率ズームは、先ほど見た「特化型」か「オールマイティー型」かで言うと、かなり特化型なカメラと言えます。
長いに越したことはありませんが、そのために明るさや画質やコンパクト性が犠牲になったりするので、「標準域」で「明るい」レンズのほうが、トータルで見るとバランスはいいでしょう。
チルト液晶
上側180°、下側45°です。
ハイポジション、ローポジション、両方イケます。
ついでに自撮りもイケます。
タッチフォーカス・タッチシャッター
タッチフォーカス・タッチシャッター、両方に対応しています。
キヤノンというメーカーについて
今回のコンデジ選びにあたっては、最初はソニーのRX100シリーズがよさげという印象でした。
ソニーのRX100は、プロモーションというか、世間へのプレゼンテーションもうまいと感じます。
うまく世間内において「イケてるカメラ」という印象を形成しています。
それに比べてキヤノンは、むしろパッとしない印象です。
そして一眼レフではキヤノンを使っている筆者としては、コンデジでは他のメーカーを試してみたいという気持ちも、正直ありました。
しかし、条件を絞り、仔細な検討に入ると、結局残ったのはキヤノンです。
またしてもキヤノン!
はっきり言ってキヤノンというメーカーは、マーケティングが非常にうまいと感じます。
いま求められているカメラ、「これだろ?」というカメラをかなりの精度で上げてくる印象です。
今回のコンデジ選びにおいても、最終的にキヤノンの「PowerShot G7 X Mark II」に行き着いたわけですが、発見したときの第一印象は、まさに「それそれ、それだよ」ってな感じです。(笑)
なにしろキヤノンのマーケティングは、「キヤノンマーケティングジャパン株式会社」というそれそのもののネーミングの別会社がやっています。
マーケティングだけを切り離して純粋にやっているのです。
たとえばニコンなんかはまだ「技術者のこだわり」みたいな部分があるかと思いますが、キヤノンの場合はそういうものとは無縁です。
技術者のこだわりなどに曇らされることなく、完全に顧客目線で商品開発をやっています。
ちらっとキヤノンマーケティングジャパンのHPを見てみると「顧客主語」なんて言葉もありますし、図がそもそもキヤノン本体と顧客の間にどっかりと割り込んでいます。
メーカーと顧客が直接やりとりしていません!
ライカと国産メーカーの違いを端的に言うならば、
ユーザーにお伺いを立てて作るのが国産メーカー。
写真の神様にお伺いを立てて作るのがライカ。
— 上原京平 (@papa_came) 2017年5月20日
ユーザーへのお伺い専門の別会社を作ってしまう徹底ぶり。
まさにキヤノンは国産メーカーの 鑑 と言っていいでしょう。
それが結果的に「またしてもキヤノン」に結びついたわけです。
「実用的なカメラ」については、やはりキヤノンは強いなというのが、今回の最終的な印象です。
(そして「趣味」ならやっぱりライカかな。笑)
まとめ
というわけで、コンデジ選びの顛末をお届けしてまいりました。
今回の記事の趣旨は、もちろん「キヤノンのカメラがいいぞ」ということでは全然なく、カメラ選びにおける「必要条件の絞り込み」と、その有効性についてです。
例えばあなたがカメラ選びに迷うのはなぜですか?
それはやっぱり、情報があふれすぎていて、それに振り回されてしまうからじゃないでしょうか。
「なんかアレがいいらしいよ」とか「コレがやっぱりすごい!」という情報に、フラフラと引きずられてしまうわけですね。
しかし「印象」ではなく、「具体的な数値」「具体的な事実」を元に決めるならば、何にも振り回されることはありません。
「アレがいいらしい」「コレがすごいらしい」というあやふや情報ではなく、具体的な、たとえば、
- センサーサイズ
- F値
- 焦点距離
- 液晶の可動の有無
といった動かしようのない事実を元に決めるなら、なんの迷いも生じようがありません。
「そんなことは言っても、趣味だから好みも反映したい」
それはもちろん、好きなだけ反映させていただいて結構でしょう。
趣味は存分に反映させて、なんの問題もありません。
なぜなら自分の好みについては、自分でハッキリとわかっている部分なので、そこは別に迷うところではないからです。
結局、迷いの元は、他に頼ろうとする他力本願なところではないでしょうか。
他からの保証を得ようとするから、100者100様の意見の間をさまよい歩くことになるわけです。
ですから、「自分で決める」。
これが最終的な、カメラ選びのコツになるでしょう。
なんだか人生のコツみたいですが。(笑)
好みなら好みでいいし、好みがないなら、具体的な数値や具体的な事実で決める。
これならどう考えても間違えようがありません。
そう考えると、カメラ選びも人生も、もうどうしようもないくらいにカンタンなことですね。(笑)
【続編】
第二弾
第三弾