さて、写真はデジタルの時代になり、すっかりデジタルの手法も一般化しました。
そして、ネット時代、SNS時代の到来とともに、デジタルならではのスゴい写真が、ぞくぞくとネット上にアップされ、たくさんの「いいね!」を集めています。
そんなデジタル時代の「いいね!」写真を分析すると、ひとつの傾向が見えてきます。
今回はそんな傾向をひとまとめにして、デジタル時代における「スゴい写真の撮り方」をお伝えします。
「スゲ~、どうやって撮るんだ!?」と目を見張るような写真も、実は初心者のあなたにも撮れちゃいますョ♪
そして最後にもっとも根本的なコツについてもお伝えします。
photo:Ryan Polei
目次
デジタル時代の写真は「撮るもの」ではなく「作るもの」
まず最初に、このデジタル時代においては、写真は「撮るもの」ではなく、「作るもの」です。
「撮ったまんまの写真」は言わば「素材」です。
デジタル写真では「写真を撮ること」は ゴールではなくスタートです。
まずは「素材を揃えること」がスタートになります。
ここがフィルム写真との大きな違いです。
フィルム写真は「撮った」時点で終了です。そこがゴールです。
ですから、フィルム写真では撮影時にフィルターをかましたり段階露光を切ったり、いろいろやるわけです。
そしてラボに現像を出して、上がった写真を「選ぶ」と終了です。
しかし、デジタル写真は、上がった写真を「選ぶ」ところがスタートです。
- 撮る前にあれこれやるのが「フィルム写真」
- 撮った後にあれこれやるのが「デジタル写真」
と言えますね。
「いいね!」をもらうデジタル写真の特徴
さて、昨今の「いいね!」をもらうデジタル写真の特徴は、一言で言うと「インパクト」です。
現在のネットの閲覧のされ方、SNSの見られ方というのは、一言で言うと「パッと見」です。
「ネットサーフィン」という言葉があるように、ネット上には洪水のように情報があふれていて、そんな情報の大波小波をそれこそサーフィンをするように次々と乗りこなしていくのが、いわゆるのネット時代の閲覧の仕方です。
ここが写真集や写真展なんかように、じっくりと1枚ずつ味わうように見られるのとは違うところです。
そんな次々と押し寄せる大波小波に飲まれないで閲覧者の目に留まるためには、どうしても「インパクト」が必要になります。
じっくり見れば「なるほどいい写真」であっても、その他大勢の波に飲まれてしまっては、そもそも「見られること」すらありません。
逆に、内容云々よりも、「インパクト」さえあれば、ネット上、SNS上ではそれなりに目立つことが出来ます。
そして、単純に写真にインパクトをつけることは、センスでもテクニックでもない、ただの「作業」です。
電車の「レール」のように、その上にのっかってさえいれば、勝手に目的地についてしまうという、ただの「レール」です。
ですから、「スゲ~、どうやって撮るんだ!?」と目を丸くしているだけの人にも、そんな写真はわりとカンタンに撮れて(作れて)しまう、というわけです。
「インパクト」を構成する要素
では、今回の講座の基本的方針から確認していきましょう。
今回の目的は、写真にインパクトをもたせること、と確認できました。
そして、インパクトのために必要なのは、「普通と違うこと」つまり「極端さ」です。
ですから、今回の講座でやることは、写真においてどのように「極端さ」を出していくか、ということになります。
では、写真において「極端さ」は、どのように表現可能でしょうか。
要素に分解して考えてみましょう。
- レンズ
- 構図
- 被写体
- 色
- コントラスト
- シャープネス
- 情報量
ざっと挙げるとこんなところでしょうか。
そして次に、各々の要素に対してどういう操作をしたら極端さを表現できるかを、要素ごとに検討していきましょう。
インパクトのある写真【撮影編】
まずは撮影編から行きましょう。
「よい写真はよい素材から」
まず「撮影時」から、よい素材を揃えることが大切ですね。
レンズ
まずレンズの選択ですが、カメラのレンズは「標準レンズ」を中心に、
- より広い範囲が撮れる「広角レンズ」
- より狭い範囲が撮れる「望遠レンズ」
とバリエーションがあります。
そして、標準レンズがもっとも「普通」なレンズですから、「普通と違う」ためには、そこから 離れれば離れるほどいい わけです。
つまり、「超」広角レンズ や、「超」望遠レンズ です。
photo:orestART
photo:halfrain
あとは「マクロレンズ」などの、「特殊効果レンズ」も効果的ですね。
photo:Thomas Shahan
構図
次は構図について。
まず、構図というより撮り方ですが、「極端な」アングル、つまり、
- 極端なローアングル
- 極端なハイアングル
は効果的です。
photo:Sam
photo:CEBImagery.com
それから構図については、普通、写す要素は画面の「中ほど」に集めますね。
しかしその逆をいって、要素を極端に「端」に持ってくるのは効果的です。
普通、構図のセオリーとしては、「三分割構図」といって、タテヨコに画面を三分割したライン上に要素を配置したりしますが、それよりもさらに端に寄せてしまうのです。
photo:perrita laika
上の写真は水平線の位置がかなり下にありますが、この「水面」と「空」の極端な比率が、インパクトをもたらします。
また、「端の配置」をさらに押し進めて、もはや画面から切ってしまうのも効果的です。
photo:Crycks
そして、そういった「極端さ」と「安定感」を1つの画面内に取り込むと、さらに効果的だったりします。
photo:miquitos
上の写真は地面のラインをかなり低くし、空の割合を極端に大きく取ってインパクトを出していますが、鳥居の位置と赤い花火の位置はセオリーどおり画面の1/3です。
「極端さ」+「安定感」で、インパクトと見やすさを共存させています。
「構図だけは安定させる」という手段
また、構図においてだけは極端さを持たせないで、「普通に安定感を持たせる」というのも実は効果的だったりします。
あまりに何事においても「極端極端」すぎると、まとまりが無くなってしまうからです。
「安定した構図」という土台があるからこそ、その他の要素の極端さが引き立つ、ということもあります。
インパクトに偏りすぎてまとまりが無い場合は、構図によって見やすさを確保すると、まとまりがよくなったりします。
被写体
つぎに「被写体」です。
そもそも「何を撮るか」という話ですね。
これについては、とても簡単な方法があります。
それは「光源を画面内に入れる」ことです。
今まで印象に残った写真をよく思い返してみてください。
インパクトのある写真って、逆光だったり、街の灯だったり、何かしら「発光体」が画面内に入っていませんでしたか?
photo:Himanshu Malik
これがインパクトを生むのは、「光源」という極端な明るさを画面内に入れることによって、極端な輝度差 が画面内に作られるからですね。
そして、夕刻だとさらに、空のグラデーションによって、色によるインパクトも形成することができます。
まさに「マジックアワー」と呼ばれるゆえんですね。
上の写真なんてまさに「全部盛り」です。
また、絞りを開けて点光源をボカす、いわゆる「玉ボケ」なんかもよく使われる手法です。
photo:Michael Himbeault
まとめると被写体については、「輝度差」や「色差」を極端にすることによって、インパクトを出すことが出来ます。
photo:Ryan Polei
こちらは被写体と背景の「輝度差」、そして空の「色差」によって、インパクトが形成されています。
さらに「ビネット効果」による処理もなされていますね。
参考:【写真加工のコツ】撮った写真の見栄えを良くする、ごく簡単な方法
インパクトのある写真【画像処理編】
では次に撮影後の画像処理編にいきましょう。
ちなみに画像処理自体の「基本」についてはこちらの記事が詳しいので、あわせてご覧ください。
色
色についてはとにかく「鮮やかな色」です。
つまり「高彩度」ということです。
先ほどの「撮影編」で見た作例写真は、ほぼすべて「高彩度」と言えますね。
画像処理ソフトの「彩度」のスライダーを「おかしくない程度に」めいっぱい上げましょう。
アドビのソフトであれば、見た目上自然に仕上げてくれる「自然な彩度」というパラメーターもあります。
ただの「彩度」だと不自然に見える場合には、そちらを利用するとよいでしょう。
コントラスト
もちろんコントラストは「ハイコントラスト」です。
コントラストのスライダーを上げましょう。
コントラストについては「ハイライト」「シャドウ」や「白レベル」「黒レベル」といったパラメーターでも調整可能です。
シャープネス
シャープネスについても、もちろん「シャープな画像」です。
シャキッとシャープなハッキリとした画像のほうが、目に留まりやすいです。
かといってシャープネスも上げすぎると不自然な画像になりますので、不自然じゃない「行けるとこまで」にしておきましょう。
情報量
情報量というのは、暗部がツブれず、明部も飛ばず、どちらもしっかりとディテールまで描きこまれていることです。
デジタルフォトグラフィにおいてはすなわち、「HDR」ということです。
HDRとは
「HDR」とは、「High Dynamic Range」(ハイダイナミックレンジ)の略です。
ダイナミックレンジとは、写真内における、最小の明るさと、最大の明るさの幅です。
写真においては「ラチチュード」とも言いますね。
そして「ハイダイナミックレンジ」とは、「普通の」ダイナミックレンジよりも「広い」ダイナミックレンジということです。
そのままの意味ですね。
普通に写真を撮る場合、暗い部分に露出を合わせると明るい部分が飛び、明るい部分に露出を合わせると暗い部分がツブれます。
しかしHDRでは、暗い部分に露出を合わせた写真と、明るい部分に露出を合わせた写真を合成し、飛ばずツブれずの 情報量を最大限盛り込んだ写真 が作れるというわけです。
スマホのカメラにもその機能があるので、おなじみの方も多いでしょう。
この機能によって、1枚の写真に「普通じゃない」情報量を盛り込むことができます。
インパクトを出すためには活躍する機能です。
デジタルフォトグラフィにおける本当の要点
さて、デジタル時代における「スゴい写真の撮り方」と題して見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
賢明な読者諸氏におかれましてはもうお気づきのことと思いますが、今回の記事は、普通にTips的なまとめ記事であると同時に、デジタル写真に対する皮肉でもあります。
デジタル写真は「何でも」「どこまでも」できてしまうので、結果的に「やりすぎてしまう」ことが多くなります。
写真の本質から外れた、ただの「やりすぎ写真」。
今回の記事通りの手順をなぞると、そんな写真になってしまう可能性も、もちろんあります。
そして、初心者にも簡単に撮れる(作れる)は、全くその通りです。
スライダーを右に左に動かすだけですから。
実際、「いいね!」をもらうための写真として、今回の内容はそれなりに効果的でしょう。
この記事がお役に立つなら、ぜひ参考にして「いいね!」をたくさんもらってください。(笑)
写真と良心
さて話は変わりますが、「良心」ってなんでしょう。
「良い」「心」。
何が良くて、何が良くないのか。
それは各々の判断であり、「何」についてはここでは問いません。
しかし大事なのは、良いことも悪いことも選択できる状況の中で、「あえて」良い方を選択してしまうという、説明不能な「衝動」のほうではないでしょうか。
誰にほめられるというわけでもありません。罰則という強制力もありません。
また、それを選んだからといって1円にもならないし、むしろそれを選択すると「損」である場合もあるでしょう。
それでも「あえて」そっちを選択するという理解不能な衝動。
そんな自分の中からドライブしてくる名状しがたい「あえて」の部分にこそ、実は価値があるのではないでしょうか。
外的な状況に左右されない、自分だけのオリジナリティは、そんなところから生まれるのではないでしょうか。
デジタルによって飛躍的に自由度が増し、何でもできる状況の中で、「あえてそうしない」という選択もあります。
目の前に砂糖をまぶしたお菓子を並べられて、「自由にどうぞ」と言われても、あえて適量でやめるという「自由」もあります。
作品とオリジナリティ
あなたの写真。
それを「作品」と呼ぶならば、それはあなたの「良心」の結晶 に他なりません。
あなたの内側からドライブしてくる、「これが良い」という衝動。
「これ」が「何」であるかはどうでもいいのです。
それよりも、純粋に心の内側から湧き上がってきたという、その「純粋な部分」と、見る人の心の「純粋な部分」が響き合ってはじめて、作品を「作る」ことと「見る」ことは完結するのではないでしょうか。
作る人の心と、見る人の心の「共通項」である「純粋な部分」が、作品を媒介として伝わるからこそ、それが「作品」たり得る のではないでしょうか。
そういう意味で、「作品」とは良心の結晶 です。
そしてまた、「何」の部分がどうでもいいから、各々の作品に多様性が生まれるのです。
その多様性がすなわち「オリジナリティ」です。
何でもアリのデジタルフォトグラフィにおいてクローズアップされるべきは、プラグインの数でもパラメーターの豊富さでもなく、それらを司る「心」ではないでしょうか。
あれもどうぞこれもどうぞと言われて、ただ無節操に受け入れるだけならば、あなた自身はどこにいる?
写真はその誕生以来、技術面を除いてはなにも変わっていない。そして私には技術的なことは重要ではない。
はい、またしても出ました。アンリ・カルティエ=ブレッソンの言葉。
あなたがスライダーを右に左に動かすその判断は、何に基づいていますか?
写真がデジタルになり、選択肢が増えすぎた今だからこそ、「あえて」思い出しておきたいことがあります。
まとめ
さて、読んでいてなんかヘンな気分になったなら申し訳ありません。
普通にTips的まとめ記事を書いていて、「これでいいのか?」と良心がむくむくと頭をもたげてきたので、「あえて」ハンドルを切った次第です。
なんかまとまりのないヘンな感じの記事になってしまったことは重々承知ですが、デコボコながらもこれが私の「作品」です。
つまり、記事の要点を身をもって体現した次第です。(笑)
と、そんなふうに、作品づくりはカンタンです。
あなたの中から飛び出してくる「それ」が、勝手に行き先を教えてくれます。
本当に大事なものはすでにあなたの中にあります。
むしろ、余計な情報によって、その中身にフタがされているのです。
余計な情報は整理しましょう。
このブログも必要なければ読まなくてもいいでしょう。(嘘。笑)
答えはいつだって、あなた自身の中にあります。
そしていつだって、「飛び出したい」と疼いています。