デジカメになってから、露出計を使わない人が増えました。
それもそのはず、何しろ、撮った画面がその場ですぐ確認できるので、わざわざ露出計を使う必要がないのです。
撮った画面で白トビ・黒つぶれも確認出来ますし、ヒストグラムで露出の分布も確認出来ます。
また、フィルムの時代には「ポラ(ポラロイド)」と言って、その場ですぐに見られるインスタントフィルムでテスト撮影をして、その画像を参考に本番撮影に臨んだものですが、デジタルでは、本番のカメラがテスト撮影も兼ねています。
ポラを切らなくても、本番のカメラで何度でもテスト撮りができて、露出のチェックも容易です。
このような状況で、果たして露出計を使う意味があるのでしょうか。
あるとしたらどこにその意味があるのでしょうか。
今回はデジカメ撮影において露出計を使う意味について、コッソリお教えいたします。
目次
露出計ってどんなもの?
これです。(セコニック:デジタルマスター L-758D)
こちらは現代の最新機種で、いろいろな機能がゴマンとついていますが、要は明るさを測るための機械です。
写真というのは、被写体からはね返ってくる光をレンズで集めて記録するということなので、その光をどれくらいの量取り込むのかを決めることは、写真撮影においてとても重要なことなのです。
その、「光をどれくらいの量取り込むのか」を決めることを、「露出」と言いますが、写真の露出は、
- シャッタースピード
- 絞り
- ISO感度
を設定することによって決めます。
露出計とは、光を測った上で、設定したISO感度に対して最適なシャッタースピードと絞りを教えてくれる機械です。
露出計の2つの方式
露出計は光を測る測り方によって、2種類に分類されます。
「入射光式」と「反射光式」です。
そしてこの2つが一体になっている機種もあります。(上の「デジタルマスター L-758D」などもそうですね)
この二つの方式の違いは、ほとんど正反対の性格ですので、露出計について理解する際には、よくチェックしておくべきポイントです。
反射光式
まず反射光式から。
反射光式は、被写体に当たってはね返ってくる光を測定します。
カメラにも露出計は搭載されていますが、その方式も反射光式です。
しかし、同じ反射光式でも、カメラの露出計は、画面全体の明るさを測ることが多いのに対して、単体露出計では、別名「スポットメーター」とも言われるくらい、ごくごく狭い範囲を測るものが多いです。
なぜなら、カメラには無い機能を提供しないと、単体露出計を使う意味がないからです。
そしてその使い方は、被写体の測りたい部分をピンスポットで測るというものです。
ピンスポットで測ることによって、被写体の各部分の露出を知り、それをもとに全体の露出を組み立てるというものです。
主に風景写真などに用いられます。
反射光式のメリット
反射光式のメリットは、視界に入るものならどんなものでも測ることができるという点です。
数キロ離れた山並みでも、目の前の電柱でも、視界に入りさえすれば、どんなものでも測ることができます。
なぜなら視界に入るということは、そのモノからの反射光を目がキャッチしているということなので、物理的な距離は関係ないのです。
風景写真で用いられることが多いのには、遠いものも測れるという理由も大きいです。
反射光式のデメリット
デメリットは、測定値が被写体の反射率に左右されるということです。
同じ強さの光が当たっていても、反射率によってはね返ってくる光の量は変わります。
黒いものはあまりはね返さないし、白いものはたくさんはね返します。
そんな、被写体の反射率の違いを考慮に入れなければいけないところが、反射光式の難儀なところでもあります。
入射光式
入射光式は、被写体に当たる光を「直接」測定する方式です。
これはカメラには搭載されることのない方式なので、単体露出計ならではの方式と言えます。
そして入射光式のメリット・デメリットは、反射光式の真逆です。
入射光式のメリット
入射光式のメリットは、測定値が正確ということです。
反射光式は反射してくる光を測定する関係上、測定値が被写体の反射率に左右されますが、入射光式は光を「直接」測るので、常に正確な値を得ることができます。
写真は「被写体からはね返ってくる光をレンズで集めて記録すること」だと説明しましたが、入射光式で得た値で写真を撮ると、被写体の反射率を正確に反映した写真を撮ることができます。
例えば入射光式で測った光の強さが100だとしましょう。
被写体の反射率が80%(明るい色)であれば80の光がカメラに取り込まれ、5%(暗い色)であれば5の光がカメラに取り込まれます。
「元の光」を測っているからこそ、被写体の反射率を正確に反映することができるのです。
入射光式のデメリット
デメリットは、常に被写体の位置で測らなければならないということです。
被写体に当たる光を測定するので、当然と言えば当然ですが、移動できないような遠いところにあるものや近づけない物(遠くの山々や猛獣など)は、当然測ることができません。
デジカメで露出計を使う意味
さて、露出計は光を測って露出の値を教えてくれる機械ということでしたが、わざわざ別個にそんな機械を用意しなくても、カメラにも露出計が内蔵されていて、自動で露出を設定してくれるはずです。
しかし、カメラ内蔵の露出計は、先ほど見たように、「反射光式」です。
フレーム内に入る全ての画像の露出を測ることができる一方、その値は正確性を欠きます。
そんな時に、「入射光式」の単体露出計を使うと、正確な値を一発で得ることができるので、大変便利です。
入射光式は被写体の場所で測らなければいけない、という制約がありますが、それさえクリアできれば、デジカメにおいても使う意味は大いにあります。
デジカメで露出計を使うもっと深い意味
デジカメでオート露出を頼りに撮影していると、明るすぎたり暗すぎたりということがよく起こります。
それは、カメラの露出計が反射光式だから起こる、宿命ともいえるものです。
スナップ撮影なんかをしていると、バババッと夢中で撮った一連のシーンが、全部暗すぎたり明るすぎたりするとヘコみます。もう撮り直しもできないし。
事前に一枚撮って、それを頼りに調整すればいいですが、実際はそんなことうっかり忘れてしまうし、忘れててもある程度撮れてしまう状況でそれを敢えてするのは、なかなか大変なことです。
そこで露出計の登場です。
露出計を使うことによって、「撮影」と「露出」を、分けて考えることができるのです。
カメラ任せのオートは、「撮影」の中に「露出」すでに組み込まれていて、なかなか意識しにくいですが、露出計を使うことによって、「撮影」の中から「露出」の部分を取り出し、意識的に扱うことができるのです。
オートに慣れきって撮影していると、露出のことなんて考えない場合がほとんどです。
カメラが自動でやってくれるので、考える必要がないからです。
考えずに撮った結果、「あーなんかちょっと暗いなー」とか「ちょっと明るすぎるけど、まいっか」となんとなくやり過ごしてるのが現状ではないでしょうか。
しかし、露出計を使うと、ハッキリと露出のことについて意識を向けることができます。
今この明るさが、絞りがいくつでシャッタースピードがいくつでと、ハッキリと明確に意識することができます。
その結果、常に正確な露出で撮影することができるだけでなく、「撮影をコントロールする」という感覚を身につけることができます。
写真の上達のためには、撮影に関わる要素を把握し、それを「コントロール」することが必須です。
すなわち露出計は、写真の腕を上達させたいと考える人たちにとっては、ぜひとも使ってみるべきアイテムなのです。
そしてそれは、カメラが便利になればなるほど、なおさらです。
まとめ
技術の進歩は、写真の撮影を便利に、楽にしてくれます。
撮影に関わる面倒な設定や操作を、かなりの程度肩代わりしてやってくれます。
撮影自体が目的でなく、ただ「写ってればいい」くらいの一般の人なら、なるべく便利で楽なほうがいいでしょう。
しかし、本当に「写真を撮りたい」と思っている、撮影自体に目的がある人なら、撮影に関わる要素を把握し、コントロールする必要があります。
露出計はそんな人にとって必要なアイテムです。
最終的に露出計は使わない撮影スタイルに落ち着くにしても、一度は露出計を使った撮影スタイルを経験しておくことは、とても意義深いことになるでしょう。