写ルンですブームが相変わらず続いていますね。
売上はブーム以前の5倍になったそうですし、インスタの「#写ルンです」の投稿は40万件を超えました。
もはやブームではなく、写真のひとつの楽しみ方として定着してきた感があります。
フィルムユーザーの筆者としては、このまま売れ続けてフィルムの価格が安くなってくれると、さらにうれしいところです。(笑)
さて以前、写ルンですのカメラ的な仕組みについて、記事にしました。
今回は写ルンですって一体何がおもしろいのか、そしてどう使いこなすのかについて書いてみたいと思います。
(そもそも写ルンですって何?という方は、まずコチラからどうぞ)
「スマホやデジカメ」と「写ルンです」は、同じ「カメラ」とはいっても、その実質は月とスッポンくらい違います。
デジカメと同じ発想で使っていては、そのおもしろさを満喫することはできないでしょう。
そう、実に写ルンです使いこなしのコツは、テクニックではなく「考え方」です。
目次
「過去の」写ルンですと「現在の」写ルンですの違い
写ルンですって、出た当初と現在では、まったく意味の違う代物になっています。
まずはそこのところを整理しておきましょう。
出た当初の写ルンです
写ルンですが出た当時は、デジカメなど全くない時代です。
カメラと言えば全て、フィルムカメラです。
そんな時代に登場した写ルンですは、「ものすごく簡単に写真が撮れる」というのが、最大の価値でした。
- 安い
- コンパクト
- どこでも売ってる
- カメラの知識不要
- 面倒な操作不要
- 撮って現像に出すだけ
家族の中でカメラ担当といえば、だいたいがメカに強いお父さんだったわけですが、写ルンですによって、主婦や女子高生など、いままでカメラに全くなじみのなかった人でも簡単に写真が撮れる時代になりました。
現在の写ルンです
そして時代は下ってデジタル全盛の現在。
写真はかつてとは比較にならないほど、
- 簡単
- 高画質
- 低コスト
になりました。
そもそも、「身体の一部」ともいえるスマホにカメラが付いているので、写真はほとんど「メモ」くらいの感覚です。
そんな現代において写ルンですは、
- 不便
- 低画質
- 高コスト
という代物です。
それは出た当初の真逆のポジションです。
写ルンですの存在意義は、そのピークから20年ほど経過した現在、かつてと180°逆転しました。
写ルンですのおもしろさ
そんな、現代のカメラの真逆をいく写ルンです。
一体何がおもしろいのでしょうか?
そのおもしろさのエッセンスは、文字通り「真逆さ」にあります。
甘いものを食べたら辛いものが欲しくなるように、いったんある方向に振れると、逆を行きたくなるのが人情です。
カメラは「簡単・便利・高画質」と、甘い方向一直線でやってきたわけですが、そんな甘さに飽食した現代であるからこそ、辛いカメラが欲しくなるのです。
特にカメラにおいてその甘さしか知らない若い世代には、その辛さはかつて味わったことのない新鮮味でしょう。
では、写ルンですのそんな真逆要素、ピリ辛要素とはどんなものか、チェックしてみましょう。
ピリ辛要素その1:不便
まず写ルンですはフィルムカメラ(正確には「レンズ付きフィルム」)なので、撮ってすぐ画像が見れません。
画像を見るためには、「フィルムを現像する」という過程が必要なのです。
これはデジカメ世代にとっては、かなりピリ辛要素と言っていいでしょう。
筆者はフィルム世代だし、現在でもフィルムユーザーなので、撮ってすぐ見れないのは別に当たり前ですが、「撮る」と「見る」が、ほぼワンセットになっているデジカメ世代の「見れない」がどの程度ピリ辛かは、想像に難くありません。
はじめてフィルムカメラを使う人が、撮ってすぐ、画面も何もないカメラの背面を思わず見てしまうという滑稽なしぐさは、まさにパブロフの犬的反応でしょう。
「え?ホントに撮れてんの!?」
撮れてるとも撮れてないとも言わず、無言で画像を溜め込んでいくフィルムカメラは、デジカメ世代にとっては、文字通りスリラーです。
そして、27枚とか39枚とか、一定の枚数撮りきるまで画像が見れないという不便さ。
やっと画像を見れるのが、1ヶ月後や2ヶ月後になることもあるでしょう。
この宙ぶらりん期間の長さ。
その間のモヤモヤした気持ち。
そしてその宙ぶらりん期間を経て、やっとこさ画像にご対面する時のドキドキ。
甘々なデジタル世代にとっては、全てがシビれる要素です。
ピリ辛要素その2:低画質
いわゆる「高画質」とは一般的に、
- 高解像度
- 鮮明
- 発色の良さ
といったことになるかと思いますが、写ルンですはもちろん、これらとは真逆です。
- 低解像度
- 不鮮明
- ぼやけた発色
その理由は、以下の3点です。
- フィルムを使っている
- レンズがチープ
- 露出が固定
(詳しくは以下の記事をご参照ください)
その画質が「エモい」などと評されるのは、そんな写ルンですの、どこかぼんやりとしたハッキリしない部分が、様々な感情を生む「隙」として作用しているからでしょう。
画質は甘い。
むしろ甘々なわけですが、その甘さがまたピリっとくる要素です。
ピリ辛要素その3:高コスト
そして最後のピリ辛要素は「高コスト」です。
現在のスマホなんかで撮る写真は、実質タダです。
何枚撮ってもお金は全然かかりません。(電気代くらい?)
しかし、写ルンですの場合は、本体代+現像代+データorプリント代がかかります。
これを、1枚あたりの値段に換算すると(データ化の場合)、ざっくりいってだいたい1枚=60円くらいです。
1回シャッターを切るたびに、60円ずつチャリンチャリンと持っていかれるのです。
…これはかなり 激辛要素 です。
スマホやデジカメならナンボでも適当に撮れますが、写ルンですの場合は、適当だろうが失敗だろうが、容赦なくチャリンチャリンと1枚60円ずつ回収されます。
なおかつ、ちゃんと撮れてるかどうかもわからないフィルムカメラであり、27枚や39枚といったリミットもあります。
下手に消費してまた次の1本を買うなんて、かなりのハードルです。
1枚もムダにはできません。
「ほんとうにこの場面で使っていいのか??」という葛藤が常につきまといます。
「チッ」とシャッターを切ったときの、「あーやっちゃった」感。
そのピリッと利いた緊張感やドキドキ。
そんな何ともいえない複雑な感情は、デジカメでは味わえないものです。
写ルンですは「祭り」
これらをまとめると、デジカメ世代にとっては写ルンですはもはや「写真を撮る」というよりも「祭り」に近い出来事です。
「ハレとケ」でいうなら、圧倒的に「ハレ」の出来事です。
スマホでパシャパシャやるのが、日常的な「ケ」の出来事なら、写ルンですは「ハレ」です。
休日にディズニーランドで非日常を満喫するのと、同じようなノリです。
逆にトータル2,000円しないくらいの値段で、いつでもどこでも手軽にお祭り気分と高揚感を味わえるなら、むしろ安いといえるかもしれません。
写ルンですを使うコツ
さて、写ルンですは「祭り」であることが判明したところで、写ルンです使いこなしのコツを見ていきましょう。
それはやっぱり、祭りを楽しむコツと一緒です。
写ルンです使いこなしのコツ1:非日常において使う
まず、写ルンですは「祭り」なわけですから、それを使う状況も「祭り」、すなわち、非日常がふさわしいです。
それこそディズニーランドに行った時とか、デートの時。旅行やお出かけ、普段は行かない場所など、非日常において使うことによって、その非日常感がより高まります。
逆に日常において使う場合は、非日常的な視点において使うのがコツです。
日常の中に潜む非日常みたいな、ふと日常から浮遊する瞬間などを捉えてみると、その非日常感がより増長されると思います。
写ルンです使いこなしのコツ2:丁寧に撮るよりもノリ重視
祭りで大事なのは、その場の「ノリ」です。
しかめっ面して「露出が、光が、、」とやるよりも、ノリ重視で撮りましょう。
そもそも写ルンですは、露出もピントもコントロールできません。(笑)
デジカメに比べたら、ずいぶんテキトーなカメラであり、ずいぶん雑な写りです。
難しい顔して丁寧にとっても、あんまり期待に応えてくれません。(笑)
写ルンですの写真は、写りを鑑賞するために撮るのではなく、写っているノリを楽しむために撮ります。
祭りにふさわしく、ワッショイで撮りましょう。
写ルンです使いこなしのコツ3:楽しさをシェアしよう
晴れ着を着たら友達に見せたいように、写ルンですで写真を撮ったら友達に見せたいものです。
祭りはみんなでシェアすると、いっそう楽しくなるでしょう。
今の時代だとSNSにアップするというのが、その主な手段ですね。
そして、いいね!やコメントをたくさんもらって盛り上がりましょう。
写ルンですの写真を見ることは、祭りに参加することです。
たくさんの人に参加してもらって、大いに祭りを盛り上げましょう。
現像→データ化→SNSにアップする流れ
まるっきり初めてだと、撮った後「で、どうするの?」となるかもしれないので、現像からデータ化、SNSにアップする流れも書いておきます。
現像
まず、写ルンですは、カメラではなく「レンズ付きフィルム」です。
(なんでそう言っているのかについては、下記参照)
ですから、あの四角い物体は、あれ全体がそのままフィルムです。
現像に出す際は、フィルムの現像を受け付けているお店に持っていって、本体をまるごと渡します。
間違っても普通のカメラみたいに、フィルムを取り出そうとしてはいけません。
そもそもフィルムが取り出せる構造になってないし、取り出したらフィルムが感光して撮った写真がパーです。
ご注意ください。
データ化
現像時のメニューは4種類あります。
- 現像のみ(現像済みフィルムだけがもらえる)
- 現像+データ(現像済みフィルム+データ)
- 現像+プリント(現像済みフィルム+プリント各コマ1枚)
- 現像+データ+プリント(現像済みフィルム+データ+プリント各コマ1枚)
適宜選択しましょう。
ただし、SNSにアップするには、データ化が必須です。
SNSにアップ
データは主に、CD-Rの形で受け取ります。
なので、それをパソコンに取り込んで、SNSにアップします。
お店によっては、スマホにデータを転送するサービスもやっているみたいです。
スマホデータ転送サービス(カメラのキタムラ)
フィルムプリント・写ルンですプリント(コイデカメラ)
まとめ
さて、写ルンです。
その目的は「エモい画像」だけではないことが、ご理解いただけたかと思います。
そもそもフィルムライクな質感が欲しいだけなら、わざわざ写ルンですで撮る必要はありません。
デジタルで加工したほうが、精度高く調整もできます。
しかし、あえての「写ルンです」です。
写ルンですは画像を得るための「手段」ではなく、それ自体が目的の「祭り」です。
写ルンですの醍醐味とその使い方のコツをまとめると、
- 写ルンですの醍醐味=甘味のあとの辛味(からの「祭り」)
- 写ルンですの使い方のコツ=ワッショイ!(ノリで撮る)
ということになります。
ですから、写ルンですでシャッターを切るときに掛け声を掛けるなら、「ワッショイ!」が最適です。
お祭り気分を盛り上げ、貴重な1カットを消費するときに必要な「吹っ切れ感」も表現されていて、テンションが上がること必至です。
ぜひお試しください。(笑)
写ルンですの真の魅力
最後に安心材料をひとつ。
写ルンですの撮影において、失敗はあり得ません。
- レンズに指がかかってた
- 真っ暗で何も写ってない
- 近すぎてピントが合ってない
そんな写真も全て、成功なのです。
普通なら「失敗」としてすぐに削除してしまうような写真も、写ルンですなら、それはそれで「アリ」なのです。
なぜなら写ルンですは「祭り」だからです。
写真の出来不出来が問題ではないからです。
レンズに指がかかってて笑えた。(笑)
それが写ルンですの写真の魅力です。