「28mm」
この響きに、どのような印象をお持ちでしょうか。
写真やカメラをそれなりにやっていると、
- 地味
- 目立たない
- いまいち使う気がしない
- 微妙に使いづらい
- いや~そもそも気にしたことがないっス
こんな印象が思い浮かぶのではないでしょうか。
28mmと言えば昔は「広角の顔」とも言えるくらい、広角域におけるメジャーな焦点距離でした。
昔は標準ズームの広角端も「28-70mm」などと、28mmでしたし。
しかし現在では、標準ズームの広角端も24mmとなり、むしろ広角の顔は「24mm」という時代です。
キヤノンの一眼レフ用交換レンズでは、35mmと24mmには高級ラインの「Lレンズ」が存在しますが、28mmにはありません。飛ばされちゃってます。
35mmと24mmはそれぞれ、「準標準」「広角」として確固たる地位を築いている印象ですが、28mmは両者の間にあって、実に目立たない存在です。
今回はそんな28mmにスポットライトを当てます。
28mmは、地味で目立たない存在ではありますが、実に味わい深い焦点距離なのです。
目次
広角レンズにおける28mmのポジション
一般的にレンズのラインナップは、
- 広角
- 標準
- 望遠
というくくりになりますね。
そして、その中の「広角」における選択肢は、
- 28mm
- 24mm
- 20mm
- それ以下
と、だいたいそんな感じです。
昔は35mmも広角でしたが(まあ今でもそうですが 笑)、技術の発達にともない広角レンズの下降化が進んだ現在では、35mmはもはや「準標準」です。
どちらかと言えば50mmなどと同じ「標準レンズ」と同じくくりです。
というわけで改めて、「広角レンズ」における、28mmの立ち位置。
それはぶっちゃけて言うと、
「広角レンズなのに広角らしさが薄くて、あんまり使う気がしないレンズ」
ではないでしょうか。
どうせ広角を使うなら、もっと広角らしさがハッキリしている24mm以下を選びたくなる。
それが人情ではないでしょうか。
レンズ固定式カメラにおける28mm
28mmといえば、リコーのGRシリーズや、かつてのミノルタのTC-1のような、いわゆる「高級コンパクト」における焦点距離としてメジャーですね。
しかしその場合の28mmは「レンズ交換ができない単焦点レンズであるがゆえに、それ1つで何でも撮れなきゃいけない」という発想です。
「広すぎず、狭すぎず、オールマイティー」という観点に立つと、レンズは必然的に28mm~35mmに落ち着きます。
スマホのカメラもだいたいそんなもんですし、オールマイティーの権化とも言うべき「写ルンです」のレンズは32mmという、まさに28mmと35mmの中間です。
レンズ交換式カメラにおける28mm
しかし、豊富な交換レンズのラインナップを誇る一眼レフやミラーレスにおいて、あえて28mmを選ぶ必然性は果たしてあるでしょうか?
レンズ交換式カメラにおいては、「さて広角を買うか」となった場合、広角らしさが薄い28mmよりも、ハッキリ広角っぽい24mmのほうが選ばれやすいでしょう。
さらにはせっかく買うなら「大は小を兼ねる」の発想で、「写らないよりは写ったほうがいい」と、より画角が広い20mmやそれ以下のレンズが選ばれることもあるでしょう。
とにかく「広角を買おう」となった場合、最も広角らしくない28mmは「あんまり買う気がしない」レンズです。
そもそも広角レンズは、普通に考えたら「いかに広いか」が決め手であり存在意義なので、それはもう「下降志向」は当然です。
広角レンズの下への追求は「11mmだ!10mmだ!」と盛り上がり、14mmや12mmもずいぶん一般的になってきた現在、28mmの「パッとしない感」は、どんどん際立ってきています。
「時代に取り残された、なんとも冴えない焦点距離」
そんな認識が現時点における28mmの立ち位置ではないでしょうか。
広角における28mmの魅力とは
そんなパッとしない28mmの魅力とは、いったい何でしょう。
それは、現時点の特徴そのままに、それがそのまま魅力なのです。
日本人の感性によく合う28mm
28mmは目立たない、パッとしない。
それはすなわち、控え目で奥ゆかしいということです。
極端さを誇示しない穏やかなパースは、微妙で繊細な表現を愛する日本人の感性にもぴったりです。
と言っても、28mmみたいな狭い画角だと、せっかくの広角の特徴である「広さ」が生かせないじゃないか、という意見もあるでしょう。
しかし、入らない部分は潔く切り捨てるのです。
省略の美学。
これもまた、日本人の感性に一致します。
28mmは当然ながら、広さを求めるものではありません。
広角の中では最も画角が狭いわけですから。
「広く撮りたいからこそ広角を使うのに、狭い28mmは撮りにくいだろー」という発想ではなく、穏やかで品のある画角だからこそ撮れる絵を撮る。
これが28mmの正しい使い方です。
そういう意味で、28mmはオトナのレンズです。
決してわかりやすいレンズではありません。
20mmや16mmみたいな「ガツンと広角」「ドヤ!広角やで!」みたいな広角ではありません。
かといって、大口径の標準や望遠みたいな、ボケが効くわけでもありません。
「どないせえちゅうねん」という取っ掛かりのなさは、使い手を試すような難しさがあります。
しかし、だからこそ面白いのです。
28mmはオトナのレンズ
レンズ交換式カメラに手を染める人たちが染まる、レンズの楽しみと言えば、
- 大口径のボケ
- 超広角のパース
まずはこれです。
これらのレンズは、単純にわかりやすいです。
ああキレイ、ああスゴイ。
誰が見てもわかります。
しかし、28mmのような微妙な画角は、わかりにくいです。
「なにがスゴイの?」と。
ノンノン、28mmはスゴさを求めるレンズではありません。
奥ゆかしさと品のよさ。
違いが分かるオトナへの一歩として、28mmを捉え直してみましょう。
きっと新しい世界が開けることでしょう。
広角レンズ選びの新しい発想
実際、広角レンズにおいて、そこまで広い画角が必要でしょうか?
「撮らなきゃいけない写真」と「撮りたい写真」
28mmより下の広角。
これは「撮らなきゃいけないカット」においては、必要になる画角です。
好むと好まざるとに関わらず、「画面に入れなきゃいけない」という場面は、多々あります。
お仕事でクライアントに求められる場合や、状況写真として必ず入れなきゃいけない場合。
そういう場面では、広い画角を使う必要があります。
しかし、「撮りたいカット」なら、割と28mmでイケます。
是が非でも入れなきゃいけないという場面を除けば、意外と画角は28mmで十分です。
一般的な撮影状況において、そこまで広い画角が必要という場面は、そうそうありません。
というか、広ければ広いほど、普通の撮影は撮りにくくなります。
要素が入り込めば入り込むほど、それらをまとめ上げるのは大変になります。
結局超広角は、「ごく特殊な用途」という、出番の少ないレンズになってしまうのです。
改めて28mm
改めて28mm。
広角的な広さが欲しいけど、極端じゃない穏やかな画角。
十分に広さを感じさせながら、穏やかなパースで被写体のリアリティもちゃんと感じさせる。
実にオツなもんです。
28mmって一般的に、ただパッとしないだけのレンズと思われているかもしれません。
撮りやすさなら35mm、広角らしさなら24mm以下という一般的な認識の中にあって、28mmの中途ハンパ感は否めません。
しかし、その中途ハンパは、見方次第です。
28mmのネガティブは、見方を変えればポジティブです。
28mmは新しい見方によって、意外な面白さが発見できます。
まとめ
というわけで28mm推し感満載の今回の記事でした。
なにしろ好きなもので。(笑)
もちろん、「広角を買うならハッキリ広角のほうがいい」それはごもっともな意見です。
しかし、それらを存分に楽しみつつも、28mmならではの面白さもぜひ、思い出していただきたい。
って筆者は別に、全日本28mm協議会の回し者ではありませんが(笑)、28mmの面白さがあまり世間に伝わってないような印象もあり、その点をぜひお伝えしたかった次第です。
控えめで品のあるオトナの味わい。
あなたもぜひお試しあれ。(笑)